第19話 三帝騎士団
♢
共和国軍の窮地に駆けつけたのは、帝国騎士団だった。
帝国騎士団の一人は聖王国軍の頭上を、飛行魔法を使用して飛び越し、ラミアとナタリーの元へとやってきた。
「共和国総大将ラミア・デ・ルシル殿とお見受けする。私は帝国魔装騎士団の団長を務めさせて頂いておる者です。皇帝陛下の命により、これより帝国騎士団は共和国を援護します!」
魔装騎士団の団長が話終えた直後に帝国軍は、一斉に聖王国軍と王国軍に突撃をかける。
「――どうして、皇帝陛下が?」
「皇帝陛下の盟友であられる、ジン様から要請があったからです」
ラミアからの話を聞いたジンは、すぐに帝国に軍の派遣を要請した。
帝国の皇帝はジンの要請を快く引き受け、帝国の最大戦力の音に聞こえる三帝騎士団も出してくれるとの事だった。
ジンの名前を聞いたラミアの目に闘志の炎が戻り、ジンの名前は崩れたラミアを立ち上がらせる。
「ああ。妾はジン様から熱い寵愛を賜っているのでございますね」
完全復活したラミアの魔眼には闘志の炎ではなく、灼熱の恋をも焦がす愛の炎が宿る。
「総大将殿、その魔眼はさすがに堪えます」
「ああ、これは失礼なことを。妾の魔眼で魅了されんという事は、相当な実力者を帝国は援軍に回してくれたと受け取って構いませんの?」
「こう見えても三帝騎士団の内の一つ、帝国魔装騎士団の団長ですので実力者であると自負させて頂きます」
帝国重装騎士団長は元勇者パーティであるアルト・ウォルターと同等程度の実力を持っていると言われ、帝国魔装騎士団長は元勇者パーティのバウム・ドーラをも凌ぐ魔法使いと噂され、帝国近衛騎士団長は勇者に最も近い存在だと言われている。
「ふむ。グレン達はそのまま中央、ナタリー嬢以外の魔法使いも中央へ! エポナは左へ、ミーシャは右へそれぞれ兵士を連れて聖王国軍を挟み撃ちにしろ!」
ラミアの号令で共和国軍は一斉に動き出し、帝国魔装騎士団長は魔具を使用して、飛行の能力を発動して自陣へと戻った。
共和国と帝国の連合軍と聖王国と王国の連合軍がぶつかり合い、戦場の人数が一気に増えた事により、戦闘はより熾烈なものとなる。
左右に展開した帝国騎士団は、怒涛の勢いで王国軍をなぎ倒していく。
「強者がいる様だ」
中央で前方の王国軍を、少数の軍を率いて食い止めているグレンが小さく笑う。
「あの右側最前線の槍持ちとグレンさんならどっちが強いんですか?」
薙刀で王国兵を突き刺しながら、ホークはグレンに問いかけた。
「私に決まっている。人間に遅れは取らん、このまま敵を前方へ押し出す」
帝国近衛騎士団長の戦いぶりに感化されたグレン達、共和国中央軍の勢いが増す。
左右に兵を割いた為に、共和国中央軍は一番兵士の数が少ない。
しかし勢いを増したグレン達は聖王国軍を前方へと徐々に押し出していく。
――――――――――
「これが人間の力? 本当にあれは人間なの?」
左へと向かったエポナが目にしたのは、全身フルプレートの重装備の兵士が、巨大なスピアを振り回し王国兵を吹き飛ばしている光景だった。
スピアを振り回す重装備の兵士の、後ろに続いている一団も全身をフルプレートで覆っている。
重装備のため鈍足のはずなのに、その圧倒的な破壊力は遮る王国兵を
「負けてられないわね。このままあの重装備の一団と合流するわ!」
エポナは左足を軽く曲げて、右足を後方へ引き、レイピアを構えた。
「上級特異能力(ハイスキル)!
レイピアにまばゆい光が宿り、そのまま真一文字にエポナは王国兵に突撃して直線上にいた王国兵を全て突き飛ばす。
「この空いた一直線の道を全速力で駆けなさい!」
左側は帝国重装騎士団とエポナ達が合流して、その破壊力は益々増していく。
――――――――――
右側へ向かったミーシャ達は、武神を思わせる戦いぶりの帝国近衛騎士団長の存在によって早く合流する事が出来た。
「
槍で無双中の帝国近衛騎士団長がミーシャに話しかけるが、戦闘中に綺麗だなんて軽口を叩く人間にミーシャはムッとした顔をする。
「なんでしょうか? 今結構大変なんですけど」
「おっと、これは失敬」
帝国近衛騎士団長は槍の一振りで、ミーシャの前の王国軍を一掃する。
「これで僕のお願いを聞いてもらえるよね」
「ええ、どういうお願いでしょうか?」
「この戦いが終わったら僕とデートして欲しいんだけど、ダメかな?」
ミーシャは戦闘中であるのにも関わらず、帝国近衛騎士団長が何を言っているのかまったく理解できず少し固まってから声を出した。
「な、なにを! 今がどういう状況か分かっているのですか?」
帝国近衛騎士団長はキョトンとした顔で、
「こんな綺麗なお姉さんに、声をかけない方がどうかしているよ。なぁ、そう思うだろ?」
帝国近衛騎士団長は隣の騎士に同意を求める。
「団長……だから戦闘時はナンパしないでって……何度も言っているでしょうが!」
「えー、僕の側近のくせに情事が分かんない奴だなぁ。やっぱ童貞?」
「ど、童貞な訳ないでしょ! いい加減にして下さい!」
側近の慌てぶりに帝国近衛騎士団長はため息をつき、それはさておきとミーシャに向き直す。
「さっきのお願い、僕は本気だったんだけど、次が本当のお願い。
「どちらも使えますよ」
「やっぱり!
「もちろん構わないですが、ここの戦線から離れるのですか?」
帝国近衛騎士団長は手でピースサインを作る。
「ちゃっちゃと王国本陣をぶっ潰してくるよ。アルト・ウォルターがいても僕なら問題ないしね」
ミーシャは少し驚くが、さっきまでの戦いぶりを見ていたので、帝国近衛騎士団長の力を信じて補助魔法、迅雷風烈を使う。
「おおおお! これはすごいや!
素早さ超強化の補助魔法を受け、風よりも早く帝国近衛騎士団長は王国本陣へと駆けていった。
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