第12話

そうよね~びっくりするわよね~。だって私だって驚いたもの、(笑)。

目の下にそれはそれはくっきりはっきりクマが、真っ黒くできている。

ひっさしぶりにこんなひどいクマにお会いしたわぁ~。

お久しぶりね、あなた、なんつって。

実は昨日の夜、今日の事を考えたら頭が冴えわたり、目がギンギンだったの。

そりゃ出来るってもんよね~。

でも、このままでは清潔感どころか、好感度なんて夢のまた夢。

子供達にとっては、目の下がげっそりしているホラーな私とご対面♡でまさしく悪夢よねぇ~。


「あ、あたため?い、いや、ひ、冷やしますか?」

ジュリアは顔を青ざめておろおろしている。

「ジュリア、私を誰だと思っているの。大丈夫よぉ~。こういう時の為にメイクってものがあるのよ。不都合なものを隠し、自分に自信を与えてくれる!そう、それがメイク!」

私はそういうと、リキッドファンデーションを目の下に塗っていく。三角ゾーンにもトントントンと塗っていく。

次にパウダーファンデーションでトントントン。

次にコンシーラーをスッと目頭から斜めに引く。乾かして、トントントンと叩き、外側はスッスッと伸ばしていく。

最後はパウダーファンデーションとファンデーションを塗り、完璧に隠す。


「王女様!さすがです!」

ジュリアは目を輝かせて、興奮して手を叩いている。

「当たり前じゃない~。」

私はその後順調にメイクをしていった。


そして現在。私達はまず院長の応接室に案内されていた。

「ヴィオレッタ王女様、テオンハルト王子様、本日はようこそお越しくださいました。」

院長は両手を広げ笑顔で私達を歓迎してくれ、私達は握手を交わす。

「忙しい中、今日は時間を作ってくれてありがとう。今日は、子供たちが日頃ここでどのように過ごしているか、知りたくて来たの。何か、困っている事はない?資金は足りてる?」

「お陰様で。十分すぎるほどでございます。」

院長は頭を下げると、自身の机に向かい、一冊のノートを取り出した。


院長の名は、シリウス・ノートン。元貴族学園の校長だ。

真面目で実直な性格。その人柄を見込んで、ヴィオレッタちゃん本人が直接シリウスに孤児院の院長を打診した。

丁度、貴族学園の校長を定年退職する時だったので、シリウスは快く引き受けてくれた。


「そう?それなら良かったわ。」

私は院長からもらった帳簿を見ながら確認していく。特に不審な点はなさそうだった。

ホッと安心して帳簿を閉じる。


良かったわよぉ~。院長が不正を働いて・・・なんていうあるあるな展開にならなくて~。ちょー面倒くさい事になるところだったわ~。ヴィオレッタちゃーん、貴方人を見る目があるのねぇ~。


「姉上、僕も見ていいですか?」

私の隣に座っているテオちゃんは、身を乗り出して帳簿を覗きこむ。

「もちろん。」

私は快くテオちゃんに帳簿を手渡し、出してもらっていた紅茶を飲む。

「素晴らしい運営ですね。どこにも無駄がない。」

テオちゃんは院長に帳簿を返し、感心していた。

「恐縮でございます。頂いたお金はすべて子供達が何不自由なく暮らす為に、使わせて頂いています。」

院長は恭しく一礼した。

「そのようですね。」

テオちゃんは静かに紅茶を口にする。

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