第11話

孤児院訪問当日。天気、快晴。

メイクよし!気分よし!笑顔よし!

馬車から降りて孤児院の門構えに横一列で並んだ私達は、一心に目の前の建物を見つめる。

孤児院の建物は、紺と白を基調にしたシンプルで、窓の多いいおしゃれな建物だった。

「テオちゃん、フィー、ジュリア。準備はいい?」

私はそれぞれにアイコンタクトを送る。皆、それに応えるように頷き返す。

「じゃ、行くわよ!」

いざ決戦じゃー!

気分は、戦に向かう戦士だった。


さかのぼること五時間前。


「さ、今日は気合入れていくわよぉ~。」

起き上がった私は、背伸びをして気合を入れる。

今日の訪問で、これから私が何をすべきなのか、何となく見えてくる気がする。

だから、まずは子供達に怖がられず、親しみを持ってもらいたい。せっかく笑顔の練習もしたしね。

キャー王女様ー!なんつって抱き着いて来てほしいわけ。

だから、今日は好感度爆上げメイクよぉ~。


朝食を済ませた私は、手早くお風呂に入りさっぱり清潔に整える。

清潔感って言うのは、人から好感を持ってもらうには重要な要素だと思うの。

そしていつも以上にしっかりとスキンケアを施し、鏡の前に座る。

今日は、ピーチカラーのアイシャドウを使って洗練された美しさの中に潜むふんわりとした優しさや愛らしさを表現しようと思うの~。絶対子供達も気に入ってくれるわぁ~。


・・・。

「キャー!!」

私は鏡で自分の顔を見て悲鳴を上げた。

「ヴィオレッタ様?」

私の悲鳴を聞いたジュリアが心配そうに部屋に入ってくる。

・・・。

「キャー!!」

バサッ!持っていたタオルを落とし、ジュリアも悲鳴を上げた。

「ク、クマが・・・。ヴィオレッタ様の美しいお顔にク、クマが。」

ジュリアは両手で自分の顔を包み、この世の終わり、とでもいう様な凄まじい顔で動揺を隠せないでいた。

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