続編② ジパングへの旅
義郎から受け取ったジパングの地図もとに二人は、大西洋を渡るため、ポルトガルの港町リスボンへと向かった。
リスボンの港では、ジパングとの貿易で栄えるポルトガル商人たちが行き交っていた。ヨハンとハンナは、彼らの中でも名高いフェルナンド・メンデス号の船長と交渉し、日本行きの船に乗せてもらうことにした。
フェルナンド・メンデス号は、最新の大型帆船で、大西洋と太平洋の荒波に耐えうる頑丈な造りだった。
ヨハンとハンナは、船に乗り込み、大海原への冒険が始まった。
◇◇◇
航海の途中、フェルナンド・メンデス号は新たな危機に見舞われた。船員たちの間で、壊血病が蔓延し始めたのだ。
壊血病は、長期の航海で新鮮な野菜や果物が不足することで発症する病気だった。歯茎から出血が止まらず、体中に紫斑ができ、歯が抜け落ちてしまう恐ろしい病だった。
次々と船員たちが倒れていき、船内は不安と恐怖に包まれた。
そんな中、ヨハンとハンナが立ち上がった。
ハンナは、壊血病が栄養の不足によって引き起こされることを知っていた。彼女は、船内の限られた食料の中から、わずかに残っていたレモンやライムを見つけ出した。
ハンナは、レモンやライムに豊富なビタミンCが含まれていることを船員たちに説明した。彼女は、患者たちにレモン汁を与え、壊血病の治療に努めた。
一方、ヨハンは患者たちの心のケアに努めた。彼は患者たちに寄り添い、恐怖と不安を和らげるように話しかけた。
船長のジョアンは、二人の献身的な働きを見て、彼らに全幅の信頼を寄せた。
ジョアンの決断と、ハンナの栄養学の知識、そしてヨハンの心のケアによって、壊血病の蔓延は食い止められた。回復した船員たちは、二人に心からの感謝を捧げた。
◇◇◇
フェルナンド・メンデス号は、東シナ海を抜け、ジパングの長崎港に到着した。
異国の地に降り立ったヨハンとハンナは、義郎から受け取った地図を頼りに、桃太郎の村へと向かった。
道中、彼らは日本の文化や風習の違いに戸惑いながらも、地図と道中で出会った人々から情報を集めていった。
そして、遂に彼らは、桃太郎の村の近くにある丘に到着した。ヨハンは村から持参した望遠鏡を取り出し、村の様子を観察した。
望遠鏡から見える村の光景は、ヨハンとハンナの想像をはるかに超える惨状だった。
村人たちは、鬼に監視されながら、重労働に従事させられていた。
男たちは、鬼の城壁を築くために、巨大な石を運ばされていた。彼らは疲労に耐えながら、重い石を背負い、築城現場まで運んでいく。
鬼の鞭が容赦なく振るわれ、怠ける者には容赦ない制裁が加えられていた。
女たちは、鬼の食料を確保するために、広大な畑で農作業をさせられていた。
朝から晩まで、一心不乱に土を耕し、種をまき、作物の世話をしていた。鬼の監視の目は厳しく、わずかな休憩も許されない。
子供たちもその例外ではなかった。
子供たちは、鬼の家畜の世話を強いられていた。大きな牛や馬の世話は、子供たちには過酷な労働だった。
時には、子供たちが家畜に蹴られたり、踏まれたりすることもあった。
村人たちの表情からは、喜びも希望も感じられない。彼らの顔は疲労と恐怖に覆われ、生気を失っていた。
鬼への恐怖心から、村人同士でも会話を交わすことを恐れているようだった。
村の中心には、鬼の居城が聳え立っていた。その城壁には、人間の骸骨が飾られ、村人たちに恐怖を植え付けていた。
◇◇◇
ヨハンとハンナは、ある一人の労働者に目を留めた。
他の村人たちが質素な服を着ているのに対し、その男はボロボロのピンク色の着物を羽織っていたのだ。
よく見ると、その男は義郎から聞いていた勇者、桃太郎の特徴とぴったり一致していた。
ハンナは驚いて言った。
「ヨハン、あの男性、ピンクの着物を着ているわ。まさか、桃太郎じゃないかしら?」
ヨハンも目を凝らした。
「そうだね。義郎から聞いていた桃太郎の服装の特徴と、あの男の服装が一致している。あれが桃太郎に違いない。」
しかし、二人が目にしたのは、義郎の話とは全く違う桃太郎の姿だった。
桃太郎は他の村人たちと同じように、過酷な労働を強いられていたのだ。彼は疲労に耐えながら、必死に巨石を運んでいた。
この発見は、ヨハンとハンナを驚かせた。義郎の話では、桃太郎は鬼の手先だったはずだが、実際には彼も鬼に支配され、苦しんでいたのだ。
ヨハンは言った。
「桃太郎は、私たちが思っていたような裏切り者ではなかったんだ。彼もまた、鬼の犠牲者なのだ。」
ハンナも頷いた。
「そうね。桃太郎を救うことも、私たちの使命に加えましょう。」
こうして、ヨハンとハンナは、村人たちだけでなく、桃太郎をも鬼の圧政から解放することを決意した。
二人は、この困難な戦いに挑むべく、丘を下り始めた。長く険しい戦いが予想されたが、彼らの心には希望の火が燃え続けていた。
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