第10話 川村元気と私

 好きな作家は色々いるが、その中の一人に川村元気さんがいる。川村元気さんはどれも読みやすくて、文章の厚みはないかもしれないが平易で読みやすく感動する作品が多い。すらすら読めるのが川村元気さんのいいところだと思う。


 そして、話しはまた変わるが、私が大学時代、BUMP OF CHICKENの「K」という曲を聞いた時、この曲は私の曲だ!!!と思った。私の名前が「K」から始まる事と、中学校は美術部に所属していた絵を描くのが好きな人間だったからだ。知らない方は歌詞だけでも見て欲しい。いまだに聞いて感動する。その曲を聞いて私は思った。「私はいつか、黒い保護猫を飼って名前をナイトってつけてかわいがるんだ!」と心に決めた。ペンネームの由来でもある。


 ところがだ。昔は一人暮らしで保護猫を飼うのってできなかったのだ。大体家族に募集がかかる。友人にも「一人暮らしが断られるってことは猫は一人で飼うのに向いてないってことじゃないかな」と言われ、半分諦めながらそれでもペット可物件に住んで、なんと20年。運命の出会いは突然訪れるものだ。その時私は、猫の勉強だけは色々していて、ペットショップであまり買わない方がいいんだろうなぁとかスコティッシュフォールドは骨の異常がある子だから止めたほうがいいんだろうなとか色々知っていたくせに、運命はペットショップの茶トラのスコティッシュフォールドだった。


 ペットショップにも猫カフェにも何度も入ったことがある。ところがある日、ウィンドウショッピングを兼ねて、散歩をしている時に、ペットショップのお姉さんが声をかけてきた。


「今なら子猫を抱っこできますよ」


 私は当然入った。そこで会ったのがうちの子ナイト君だ。初めて会った時、ナイト君は私の膝にちょこんと座り、そのまま暴れもせずすやすや寝てしまったのだ。初めての体験だった。ここ宇宙空間かな、と思うほどの多幸感にくらくらした。そんな私の状態を見たお姉さんはすかさず


「この子本当にいい子ですよ」


「いや、でも私一人暮らしで、その、飼える自信とかなくて」


「初めてなのに飼う自信がある人の方が私は怖いですよ。飼って初めて自信ができるものです」


 何という説得力!!!でも黒猫じゃないし、ペットショップだし、スコティッシュフォールドの折れ耳だし~!!!!


「いったん考えさせてください!」


 といって店を飛び出すようにでた。その夜、タバコを一箱も吸った。命だ。大切な命を私はどこまで大切にできる?ほら、私、喫煙者だし。いや、できるだけ副流煙とか吸わせないけど!一人暮らしで何かあったらどうする?友達の中で頼れる人は?近くの動物病院の評判は?などと一日考えた。


 次の日、私は家を掃除し、スペースを作り、家中の写真を撮ってまたそのペットショップへと行くこととなった。写真を見せて「こんなうちですけど、この子幸せになれますかね!?」なんて聞いたりして、一通りの道具を揃えて、私は猫を連れ帰った。それから3年経ちました。ナイト君は今日も大変かわいいです。


 話がまた大幅にそれましたが、私は猫を飼ってから読むと決めていた小説があるのです。それが、川村元気さんの「世界から猫が消えたなら」なのです。


 猫を飼ってしばらくして落ち着いた頃、満を持して買って読みましたよ~。もうナイトが本のしおりにじゃれつくというご褒美をいただきながら。結果大号泣!!そこには猫を飼って味わった感情のすべてがありました。もう猫のいいところだけでなくてね、最初の飼い主のお母さんを忘れてるなんて猫らしい場面もちゃんとあって、それでも愛しくてたまらない猫の姿がそこにありました。いやー、川村元気さん、天才!と思ったものです。


 思い出を閉じ込めるのは音楽の方が得意かもしれませんが、色々決めて読むと本だって思い出を閉じ込めるものになります。私はこの小説をこの先何度読んでも、ナイトを初めて知った日のことを思い出すと思います。もし未読の方は「そういう感じで読んだ人がいるんだなぁ」と思いながら読んだら面白いかもですよ。「四月になれば彼女は」もお勧めです~!

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