第9話 貴志祐介と私

 さて、毎度ながら別の話題から入るが、私はホラーが大大大嫌いである。これはちゃんと理由を言える。母親がホラー好きで小さい頃にチャッキーやら13日の金曜日やら見たせいだ。おかげで私は人形がいまだになんとなく怖い。よくテレビで怖いのが苦手な人がお化け屋敷で「きゃー!」とか言っているがあんなの嘘だ。本当のホラー嫌いはな、あんなんじゃすまないんだ。本当に足がすくんで動けなくなるんだ。それでも友達に無理やり歩かされた暁には目を完全に瞑り、相手が嫌がるくらい腕を握りつぶし、何かを見た日にゃ大絶叫だ。「二度とあんたとお化け屋敷なんかはいらない」と怒られるのが本当のホラー嫌いなんだ!!


 だから私はミステリーは大丈夫なくせにホラーはとことん敬遠していた。ところが中学校の頃、「リング」という映画が大流行した。修学旅行の時に、ちょうどその放送がTVであり、みんなで見る羽目になった。そしたらどうしたことでしょう。大勢で見たせいか、あまり画面を見てなかったせいか、私は意外にもリングを最後まで見ることができた。「おっ」と思ったので、小説も面白いと聞いて読んだ。鈴木光司さんの「リング」「らせん」「エス」「タイド」「バースデイ」と読破できてしまったのだ。むしろ面白かった。(私はこれでミトコンドリアを覚えた)


 おっとこれは?もしや?もしかしたら?小説ならホラーがいけるんじゃないか。そう思ってしまったのだ。映画の予告でもちょっとホラー的なものが出るだけで怖がる私は克服のチャンスがあるんじゃないかと思って、友達に聞いてみた。


「なんかホラーでお勧めある?」


 そこで勧められたのが貴志祐介さんの「黒い家」だった。結論を申し上げましょう。私はホラーを克服できませんでした。


 めちゃくちゃ怖かったよ!!!だけど面白くて読む手が止まらないからまた厄介だった!!読んじゃったよ、結局最後まで泣きながら!!読み終わったのがまた夜中の2時とかで怖くて怖くてとてもじゃないけど寝れなくて、B’zの「Liar!Liar!」をイヤフォンで大音量で聞いたら、二段ベットの下にいる弟から蹴り上げられたのがまた怖くてもう!もう!!!


 あの恐ろしいまでの衝撃はいまだに覚えている。保険金と聞いただけでしばらくビクリとしていた。人の心がない人がもしかしたら近くにいるかもしれない恐怖を1週間はたっぷり引きずった。それ位怖くて、面白い、それが貴志祐介さんの「黒い家」だ。


 でだ。やっぱりホラーは今でも得意ではないけれど、前ほどではなくなった。なにせ黒い家より怖くないからだ。あれを読んだから少しはましになったのかと思うと感謝している。そして、圧倒的な筆力をもつ貴志祐介さん、お勧めです。トラウマ級よ。

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