第10話 古河の暗影

 一也、いや明智真一は、次の手がかりを追って古河の街に向かった。ここには、一色組の更なる拠点があり、重要な情報が隠されていると情報を得ていた。古河には、ガーデンテラスという名の高級レストランがあり、そこが一色組の幹部たちの秘密会議の場となっていると噂されていた。


 真一は、ガーデンテラスに潜入するため、夜の帳が降りるのを待った。レストランは豪華な内装と美しい庭園で知られており、特に夜間はその美しさが際立っていた。しかし、彼の目的はその美しさではなく、隠された真実だった。


 ガーデンテラスの庭園を見下ろす位置にある高台には、ウラジミールという名の冷酷なスナイパーが待機していた。彼は一色組に雇われ、重要な会議がある夜には常に目を光らせていた。ウラジミールはルーマニア出身で、その正確な射撃技術と無慈悲な性格から、ヤクザたちに恐れられていた。


 真一がガーデンテラスに近づくと、ウラジミールの鋭い視線が彼に注がれていることに気づいた。しかし、真一もまた、幾多の危険を乗り越えてきたベテランであり、冷静さを失わなかった。彼はウラジミールの視線を感じながらも、慎重に動きを続けた。


 ガーデンテラスの内部では、一色組の幹部たちが会議を開いていた。その中には、組の重鎮である浅野がいた。彼は『さすらい刑事』などに出ていた、三浦洋一みうらよういちに似ており、パーキンソン病を患っており、その症状に苦しんでいたが、未だに組の中で大きな影響力を持っていた。


 浅野は、ガーデンテラスの一室で、幹部たちとともに今後の計画を話し合っていた。彼の病状は悪化していたが、それでも彼の存在は組にとって重要だった。真一は、この会議を録音し、証拠を掴むために慎重に近づいた。


 真一は、隠しマイクを使って会議の内容を録音しながら、浅野の発言に耳を傾けた。浅野は、ルーマニアのウラジミールとの取引について話し始めた。彼らは、ルーマニアから密輸された麻薬を古河で取引し、その利益を裏カジノで洗浄する計画を立てていた。

「この取引が成功すれば、我々の勢力はさらに拡大するだろう」

 浅野はそう語りながら、苦しそうに顔をしかめた。


 その瞬間、真一の録音機が小さな音を立ててしまった。浅野はその音に気づき、警戒の目を向けた。

「誰かいるのか?」浅野は鋭く問いかけた。

 真一は息を潜めながら、窓から外に逃げ出した。彼の正体がばれる前に、この場を離れる必要があった。

 真一は、ガーデンテラスからの脱出に成功したが、彼の背後にはウラジミールの影が迫っていた。スナイパーとしての訓練を受けたウラジミールは、真一を逃すわけにはいかなかった。

 真一は、古河の狭い路地を駆け抜け、なんとかウラジミールの射線から逃れた。しかし、この事件は終わりの始まりに過ぎなかった。彼は手に入れた証拠をもとに、一色組の本拠地を暴くため、さらなる戦いに挑む決意を固めた。

「正義のために、俺はどこまでも戦う」

 真一の決意は揺るぎないものだった。

 これからも、彼の戦いは続く。闇を暴き、真の平和を取り戻すために。

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