第9話 正体
一也が椎野桔平を警察に引き渡した後、暗い路地に戻った。彼の胸中には、ずっと秘めてきた真実があった。実は、佐藤一也という名は仮の姿であり、本名は明智真一だった。
幼い頃から名家の一員として育てられた真一は、正義感が強く、警察官になることを志した。しかし、彼の一族が関わっていた複雑な権力争いと裏社会の暗部に触れるにつれ、真一は自らの手で正義を貫くことを決意し、佐藤一也として新たな身分を得たのだった。
真一は、桔平の言葉を思い返し、裏カジノがただの入り口に過ぎないことに気づいた。真の敵はもっと深く、広範囲に及んでいるに違いない。彼は情報を得るために、再び紀子に接触することを決意した。
カフェで紀子と再会した真一は、彼の正体を明かした。
「紀子、俺は本当は明智真一という名で、佐藤一也は偽名だ」
紀子は驚きながらも、冷静さを取り戻し、「それで、これからどうするつもり?」と問いかけた。
「桔平が言っていた通り、裏カジノはただの入り口だ。もっと大きな組織が背後にいる。彼らを暴くためには、さらに深く潜入する必要がある」
真一の決意は固かった。
紀子の協力を得て、真一は一色組の更なる情報を集め始めた。やがて、彼らの真の目的が明らかになってきた。それは、栗橋を中心とした巨大な麻薬取引と、それに関連する裏カジノのネットワークだった。
真一は、組織の中枢に迫るため、一色組の幹部会議に潜入する計画を立てた。彼は再び変装し、組織の内部に入り込むことに成功した。
幹部会議が始まると、真一は緊張感を隠しながらも、冷静に状況を見守った。やがて、会議室に現れたのは、組長であり、栗橋全体を牛耳る一色の配下だった。
「我々の計画は順調だ。東鷲宮も栗橋も、すべて我々の手中にある」
組長の冷酷な声が響いた。
真一は、彼の言葉を胸に刻みながら、次の一手を考えた。この闇を完全に消し去るために、彼は全力を尽くす覚悟だった。
闇は深く、戦いは続く。しかし、明智真一としての真の姿を取り戻した彼は、決して諦めることはなかった。正義のために、彼はどこまでも戦うのだった。
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