第69話 違った決断

他人視点


「隊長、かなりの物資が得られたのは良いのですが、本当にこのまま戻るのですか?

避難民にまで行き渡らせると、この量でも一月持ちませんよ?」


「そうだな…

皆にも意見を聞きたい。

選択肢は大きく分けて二つ。

一つは指示通り物資を持ち帰って、基地周りのモンスターを減らし、また次の物資回収に出るだな。

もうは一つは、基地には戻らずに我々だけで拠点を作り、そこで生活していく。

基地から他にも連れ出すなど、細かい事はあるが大まかにはこの二択だ。

率直な意見を聞きたい」


「女房も連れていけるなら、新しい拠点を作るのに賛成です」


「私も自分が生き残る事を優先していきたいです」

「私も基地で頑張っている人達だけでも連れて行けるのなら賛成したいです」


「確かにやる気のある人手ならあった方が良いかと」

「分かった。

全員が新たに拠点を作る事に賛成と言うことだな。

基地内でも意見の対立があってな、避難民を減らすべき!と言う者と、反抗的な者以外は全て保護を続けるべき!と主張する者だな。

後者は理想論だけで、どう養っていくのか具体策は皆無だ。

私は理想論を掲げて全滅するくらいなら、協力出来る者達だけで生きていきたいと思っている。

協力出来る人間の選定も済ませてある。

ここにいる36名と合わせても100名にいかないだろうが、新たな拠点を作っていこうと思う。

諸君も協力してくれ!」


「「「「「了解!」」」」」



別視点


「物資回収部隊と連絡が取れなくなりました」


「何だと!全滅したと言うのか?高レベル者も多くいたんだぞ?!」


「不明です、確認のしようがありません」


「食料の備蓄はどのくらいだ?

あとどのくらい持つ?」


「節約しても一月も持たないでしょう。

覚醒者の隊員12名と避難民から希望者40数名で、モンスターの間引きとモンスター肉の確保に出ようと思います」


「避難民を連れていくだと?

死なせる気か?駄目だ!」


「覚醒者をこれ以上失っては成り立ちませんよ?

無駄に肉壁にする気はありませんが、運搬要因は必要です。

他に方法がありますか?

時間はありませんよ?」


「…分かった、許可する。

いつから行う予定だ?」


「準備は出来ています。

今日の午後から出る予定です」


「早いな、もう準備出来ているのか?

分かった、死者は出さないよう十分注意してくれ」


「承知致しました」


午後から隊員12名と女性45名が武装して出ていく。

中心に子供3名を隠しながら。


運搬要因がなぜ女性ばかりなのか?

誰も気に止める余裕を持っていなかった。


その後、その部隊は戻って来なかった。



元視点


基地から西へ一時間程の場所で俺達は合流した。


「よく無事に脱出してくれたな!

武器も随分待って来てるじゃないか!」


「皆、思考能力が低下してるのか、モンスター討伐に女性ばかり連れて行くのに、誰も疑問を持ってなかったですよ。

子供達も気付かれませんでしたし」


「今回は感謝だな!

早速移動しようか?休憩が必要かな?」


「子供もいるので、少し休憩させて下さい。

それと行く場所は決まっているのですか?」


「ああ、決まっている。

休憩しながら説明しよう」


これから向かうのは首都の北部にある農業高校だ。

以前調べた時に無人であったのは確認している。


農業高校だけあって農業に必要なものは揃っていそうだったので、今後の生活に役立つだろう。


そこで何とか生産を成功させていかなければならない。

まずは無事に到着しなくてはな。


私達は基地の者達とは違った決断をした。

正しかったのかは今は分からないが、この決断に乗ってくれた皆のためにも、最善を尽くしていこう。

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