第61話 新たな生命

日々の戦いを制し、迎える朝は素晴らしい物だな。


隣で眠る志帆の身体をまさぐりながら幸せを感じていると、志帆が目を覚ます。


「高遠さん、これから暫く夜のお相手は出来なくなります」


俺は驚きでキョトンとしていたのだろう。


そんな俺に笑いながら志帆は言う。


「生理が来ないので綾子に相談したら、妊娠していると言われました。

高遠さんに授けてもらった命、必ず無事に産んでみせます!」


俺は志帆を抱き締めながら言う。


「ありがとう、俺が絶対に守るから!

元気な子供を産んでくれっ」


「暫く夜を共に過ごせないのは残念ですが、頑張りますね!」


「いや、産まれるまでも今のまま一緒に過ごそう。

行為をしなくても志帆と一緒にいたい」


お互いに抱き締め合いながら、暫く穏やかな時を過ごした。


志帆と一緒にダイニングに入ると、皆揃っている様だな。


俺から志帆が妊娠した事の報告と、今後の協力を皆に頼む。


元からの友人である亜季以外も、事情を知っているらしく、皆から祝福の言葉をもらう。


志帆は涙を流しながら、ありがとうと感謝の言葉を言っている。


俺はオムツなどを取り出したが、気が早いと制止されしまい直す。


彩香も、お姉ちゃんになるんだと嬉しそうにしているので、産まれてきたら一緒に遊んで欲しいと頼んでおいた。


今から楽しみにしている彩香の頭を撫でながら、綾子と友美、経験者の由香里に必要な物や準備しておくべき事を聞いてみる。


ベッドでの出産も可能だが、分娩台など専用の設備があった方が、母親の負担は軽くなるのだそうだ。


至急確保しに行かなければ!飛び出しそうになる俺に、まだ要らないと言う。


落ち着かないから、今出来ることを教えてくれと言うと、無いそうだ。


俺も子供がいたので経験者ではあるのだが、前の時の記憶など無いんだよな。


ずっと会っていないので子供達が何処にいるのかも分からない、無事なのだろうか?


すっかり忘れていたが、新たに子供が産まれるとなって、思い出してしまった。


俺はその頃、ねずみの国がある県に住んでいたが、まだそこにいたのかな?それなら以前見つけた、自衛隊の避難所にいるのだろうか?


今さら何も出来ないが、無事であることを祈ろう。


そんな気持ちしか浮かんでこない俺は、かなり薄情な人間なのかもしれないな。


でも、そんな薄情な俺でも、ここの皆は守りたい。


今は、この温かな感情を優先して、皆との生活を守っていこうと思う。


折角のお祝いムードだし、皆で花見にでも行こうかな?ネットで満開情報など見れないが、良さそうな所を探してみよう。


皆に明日、花見をしながらお祝いしたいと言うと、全員が賛成してくれた。


お弁当、何作る?と盛り上がり始めた女性陣に、場所を決めてくると言って外に出る。


この辺はまだ満開ではないので、南下しながら良さそうな場所を探してみよう。


索敵を使いマップを見てみると、結構な数のモンスターがいるな。


モンスターの強さを計れないかと魔力感知を取得してみる。


範囲は狭いが、近くにいるモンスターの反応が、魔力の大きさによって違うのが分かるな。


魔力量が強さに直結するかは分からないが、ある程度の判断材料にはなるだろう。


大きな魔力反応がある方に向かってみる。


象さんではありませんか!

なんかヤバいオーラを出してませんか?

空からなら安全だろうと思っていた俺に危機感知が反応する。


目視は出来ないが、危機感知に従い大きく上に避ける。


何かが下を通りすぎると同時に、風が吹き荒れる。


風魔法か?警戒を強めながら鑑定で象さんを調べてみる。


種族 アジアゾウモンスター

レベル 26

HP 1800/1800

MP 1180/1300

攻撃力 383

耐久力 412

俊敏性 312

魔法力 188

スキル:風魔法

レベル20を超え、風魔法を使えるようになったモンスター。


四体いるうちの一番強いやつのステータスだが、他の三体もレベルが15を超えている。


魔法を使えるのはこいつだけみたいだが、どうするかな?殺すか?殺そう、希少だとか関係ない。


こいつが更に強くなって、俺の家族に危害を加えないとは言いきれないからな。


今も問答無用で俺に攻撃してきた訳だし、攻撃は未だ継続している。


君の魔法力で俺に魔法勝負を挑むとは、無謀な事を。


空間切断で頭を切り落としました。


魔法力が違うのだよ、君とは。


死体を回収して、花見場所探しに戻る。


綺麗な場所を発見したので、周辺のモンスターを狩っておこう。


この場所をマップにマーキングして、もっと良い場所がないか夕方まで探し回った。


何ヵ所かマーキング出来たので家に転移で戻る。


夕食の時間は、皆で明日の花見が楽しみだとか、弁当のおかずは何が良いとか話しながら穏やかに過ぎていった。

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