第50話 姉妹
他人視点
私は 小舘和美 19歳 介護士をしている。
8つ上の姉がいて、姉は看護師として大きな病院に勤めている。
父は私が小学生の頃に、病気で亡くなった。
母は私達を育てるために夜遅くまで働き、高校生だった姉が、家事や私の世話をしてくれた。
姉は父の見舞いによく行っていて、その時に優しくしてくれた看護婦さんに憧れて看護師を目指した。
姉は高校卒業後、奨学金をもらい看護学校に入った。
私の世話もしながら国家試験も合格し、看護師になった。
私も中学生になり、家事も今まで以上に手伝おう。
そうすれば母や姉も、少しは生活にゆとりが出来るだろうと思っていた。
二人とも遊ぶ時間もなく、仕事や勉強をしていたが、私の前ではいつも笑顔でいてくれた。
そんな二人には幸せになって欲しかった。
しかし、今度は母が病気で倒れ、あっけなく亡くなってしまった。
母は、これから幸せになるはずだったのに!私は何もしてあげられなかった。
私は暫く落ち込んだ。
そんな私に、姉は毎日笑顔で「大丈夫だよ、私が和美を守って行くから」っていつも言ってくれた。
なんでそんな事、言えるんだろう?今までだって私の為に色々と犠牲にしてきたはずだ。
彼氏も作らず、青春と呼べる大切な時間を、私の為に使ってしまったはずだ。
姉に更に負担なんて掛けたくなかった。
私も頑張って笑顔で応えよう!姉に心配や負担を掛けない様に。
姉に負担は掛けたくなかったが、高校は出ないと駄目だよ!と言う姉に従い、高校は行かせてもらった。
少しでも学費の足しになればと、近くの老人ホームで介護のバイトをさせてもらった。
長い時間は働けなかったが、人手不足だから短時間でも助かると言ってもらえたし、とても遣り甲斐があった。
高校を卒業して、そのまま老人ホームに正規の介護職員として就職させてもらった。
これで姉に、私の生活の心配をさせずにすむ。
自分の幸せを第一に考えて欲しい。
友達と遊んだり、彼氏を作って将来の事を考えたり、今まで私の為に出来なかった事をしてもらいたい。
いつも元気な姉だが、最近は更に楽しそうに見える。
彼氏でも出来た?と聞くと、いないらしい。
でも気の合う友達が出来たらしく、楽しそうに話してくれる。
彼氏じゃないのは残念だが、友達が出来たのも嬉しそうなので良かった。
私まで嬉しくなる。
私も出来た事ないが、彼氏作ろう?お姉ちゃん、もう若くないよ?
言葉には出さないが心配してしまう。
そんな、やっとやって来た平穏は、簡単に崩れていった。
凶暴化した動物が暴れまわる事件が、あちこちで発生している。
この辺は山が近いので危ないと、都心に向けて避難していく人も多い。
山が近いのに雪があまり降らないのも、危険だと判断する理由になるそうだ。
職場の老人ホームから、職員の何人かが避難してしまい、残っている老人のケアが追い付かないので、暫く泊まり込みで対応してもらえないかと連絡があった。
ずっとお世話になっている職場だ。
老人達をほっとけないのもあり、承諾する事にした。
姉に連絡すると、姉も別の病院からヘルプで来て欲しいと言われているそうで、私が老人ホームに泊まり込むなら、行くことにすると言う。
最近よく聞く友達も、行くそうなので安心だと思っていた。
その後、老人ホーム内でモンスター騒ぎがあったり、それを倒した女性がステータスってのを獲得して強くなったり、変な男達がちょっかい掛けてきたり、物資調達に出掛けたり、親しい人達が亡くなったり、短い間に色々とあった。
でも一番の出来事は…
運命の人に出会ってしまった。
老人ホームの人達がモンスターに殺され混乱している私達に、以前からちょっかいを掛けてきていた男達が襲いに来たのだ。
亜季さんというステータスを持っている女性が対応していたが、銃を沢山向けられ駄目だ!と思った時に現れ、簡単に男達を追い払ってくれた。
それに老人ホームに避難していた子供達も、助けて保護してくれているらしい。
私達も合わせて彼の拠点に保護してもらい、彼は私達にもステータスを取らせてくれると言う。
更に他にも女性を助けて保護したりと優しい。
私は、紳士で強くて格好よく、素敵な男性に簡単に心奪われてしまった。
彼の協力で何人かステータスを獲得した。
亜季さんもそうだったが、ステータスを獲得した女性は綺麗になる。
見るからに綺麗で可愛くなるのだ!
私も綺麗になれたら、受け入れてもらえるかな?
周りの女性は、綺麗で可愛い人ばかりだ。
私なんか受け入れてもらえないと思う。
だけどステータスを獲得して綺麗になれたら?もしかして?
そう思ってしまいかけたが、ダメだ!
私は、母と姉が育ててくれた私を、そのまま受け入れてもらいたい!
今後綺麗にはなりたいけれど、最初は、初めては、このままの私で…
そう決めても勇気の持てなかった私は、先輩介護士の里見さんに一緒に行って欲しいとお願いした。
里見さんも、自分から行く勇気が出せなかったからと快諾してくれた。
私はその日、大好きな人に初めてを捧げた。
こんな私を受け入れてくれて、ありがとうございます!
その後はステータスも獲得させてもらい、自分をもっと磨いていく。
周りの女性はどんどん綺麗になっていくけど、私も頑張ります!
そんな幸せな生活をしていると、彼がなんと!姉を見付けて連れてきてくれると言う。
姉の生存を聞いたとき、私は号泣してしまった。
また姉に会える!何の恩返しも出来ていなかった姉に会えるのだ!
姉に再会して、またも号泣してしまったがこんな涙なら嫌じゃない。
今度こそ姉に幸せになってもらいたい。
こんな世界になってしまっても。
高遠さんなら、こんな世界でも私に幸せを感じさせてくれた彼なら。
きっと姉にも。
姉は、私も含んだハーレムを築いている高遠さんを良く思っていない?
私を助けてくれた事には感謝しているが、それとは話が別なのだそうだ。
お姉ちゃん、こんな世界で以前の様な考え方は意味ないよ?
しっかり説明していこう!高遠さんの素晴らしさを!
よし!頑張ろう!
私は姉の幸せの為に、気合いを入れ直した。
お姉ちゃん、まずはステータスを獲得しようね!
そうすれば、きっと、ね!
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