第49話 新たな仲間

拠点の改造も、ひとまず区切りが付いたので、生存者のいる病院へ行こう。

転移で病院の屋上に到着する。

人数は減ってないので、外には出てないようだな。

さて、どうやって接触しようか。

正面から普通に行くか?今のご時世、普通に正面から行くのは普通じゃないよな。

でも悪さをしようって訳でもないんだし、いいのか?正面からで。

行ってみるか。

少し離れた場所に転移して、歩いて近付いて行く。

見張りの男が気が付いて声を掛けてくる。

「君、一人なのか?よく無事でいられたな」

「離れた所に拠点がありまして、普段はそこで生活してます。

今日はこの辺に探索に来たのですが、人の気配がありましたので、情報交換でも出来ればと思い寄らせていただきました」

「探索って一人でか?ステータス持ちか?」

「はい、ステータスを獲得出来たので一人でもなんとか探索出来てます」

「出来るからって危ないだろ?取り敢えず中に入れ」

「いいのですか?ありがとうございます!」

「問題ないよ、うちにはステータス持ちが沢山いるから、もし問題を起こすようでも制圧出来るからな」

「問題なんて起こしません。

では、お邪魔させて頂きます」

問題なく入れたな。

見張りの一人に案内されて、大勢が集まっている部屋に案内される。

この部家は暖房が効いている。

大きな病院は発電設備もあるんだな。

感心していると

「あなたは確か、高遠さん?でしたか?」

「先生知ってる人?」

城津先生が声をかけ、それに隣の女性も反応する。

「はい、以前検査したことがありまして、結果が少し変だったので覚えていました」

「その節はお世話になりました。

その時は少し離れた病院でしたが、なぜ此方に?」

「ここは同じ系列の病院なんですが、あの後、怪我人が多くヘルプで呼ばれて来ました。

その後は、とても戻れる様な状況ではありませんでしたので」

「そうだったのですね。

でもお世話になった方が、無事で良かったです」

「高遠さんは一人ですか?ここまでどうやって?見たところ怪我もなく綺麗な様ですけど」

「地元に拠点があります。

私はステータス持ちなので、今日はこの辺の探索に来ていたんです。

そうしたら人の気配を感知しましたので、情報収集の為に寄らせて頂きました」

「地元?あっちの病院の方ですか?一人でここまで探索?遠すぎませんか?」

「そうですね、検査を受けた病院のそばです。

意外となんとかなる距離ですよ?」

「分かりました。

情報収集とは、どんな事が知りたいのですか?

我々も情報を知る術をなくしてしまっていますので、お応え出来るかどうか」

「ここ以外の生存者の情報とかありますか?」

「以前は市役所や小学校に避難している方がいたのですが、早い段階で都心に移動して行きまして、周辺では今はここだけかと思います」

「そうなのですね。

皆さんは都心に移動されないのですか?」

「ここには移動が難しい患者さんもいましたので…」

見捨てられなかったと。

ここに残っている人は、優しい人ばかりなんだろう。

「ここにはステータスをお持ちの方が多くいると聞きましたが、何か武器をお持ちなんですか?」

「武器は無かったのですが、薬品を使って動物の駆除をしていたら、何人かが取得出来ました。

その後はホームセンター等で、武器の変わりになりそうな物を集めましたが」

薬品を使って倒しても、ステータスの獲得が出来ると、いい情報だな。

子供達のレベルアップに使えるかもしれない。

「ありがとうございました。

貴重な情報を頂けて助かりました。

困っていることや、足りない物資はありますか?

情報のお礼に、手助け出来ることがあれば」

「お気持ちだけで、先日最後の動けなかった患者さんが亡くなりまして、私達も移動しようかと話をしていた所なんです。

なので物資が今以上にあっても運べないですからね」

「そうだったのですね。

何処に向かうか決められているんですか?」

「それが少し意見が別れてしまっていて。

殆どの人は都心に向かいたいそうですが、数名地元に戻りたいと言う者もいて、ここで別れるかどうするかと話していたんです」

「地元に戻りたい方は、そちらに拠点があるのですか?」

「ない、ですね。

私も戻りたいと思っていたのですが、高遠さんのお話では生き残っている人は殆ど居ないんですよね?」

「私の拠点は12人が暮らしていますが、県内に他の人は居ないと思います」

「そうですか、友美どうする?」

「あの、拠点の中に和美は、妹の小舘和美は居ませんか?老人ホームで介護士をしていたんです!」

「和美さんなら拠点で暮らしてますね」

「本当ですか?!和美は無事なんですか?」

「老人ホームで保護しましたので、たぶん間違いないかと」

「綾子、私は地元に戻るね!

高遠さん私も一緒に連れていってもらえませんか?

お願いします!」

「私は構いませんが、良いんですか?」

城津先生に尋ねる。

「いつ死んでもおかしくない世界ですからね。

各自好きにしようって皆思っています。

友美の意思を尊重しますよ。

あと、私も連れていって下さい。

親友の友美以外は知人もいなくなってしまいましたし、友美とはこれからも一緒にいたいんです」

「分かりました。

いつ頃をお考えですか?

拠点のメンバーに話をして、準備をしておきます」

「可能ならすぐにでも!」

友美さんが答えた。

「高遠さん、無理を言って申し訳ありません。

友美がこんな状態なので、出来る限り早めでお願い出来ますか?」

「少しだけ待って下さい」

念話で亜季に確認してもらう。

全員が受け入れても良いとの事だ。

和美は泣いて喜んでいるそうだ。

「大丈夫です。

すぐにでも移動するので準備をお願いします」

「はい!すぐにしてきます!」

「私も急ぎますね」

二人とも支度をしに出ていった。

残った人々から、二人をよろしく!と声を掛けられる。

本当に皆いい人達だな。

彼らにも手助け出来ることがないか尋ねたが、自分達はステータス持ちも多いので心配ないと言われる。

「分かりました、皆さんも気を付けて移動して下さい」

「はい、ありがとうございます」

話が終わったところで、二人が荷物を持って戻ってきた。

「他に荷物はないんですか?」

「あまり持っていくと大変になるので」

「気が付かず、すみません。

アイテムボックスがあるので、そこに入れて運びましょう。

荷物は何処ですか?収納したらそのまま移動するので、皆さんとのお別れも済ませて下さい」

別れの挨拶も終わり、部屋で荷物を全て収納する。

特殊な移動に必要だからと、二人にくっついてもらう。

半信半疑ながらも、くっついてくれた二人を連れて、拠点に転移した。

拠点に着くと、皆が出迎えのために待機していた。

二人をくっつけて転移してきた姿を見て

「高遠さん、そこはぶれないんだね」

と溜め息をついている。

だって必要だから、と言う前に

「お姉ちゃん!」

「和美!」

感動の再会だ。

俺はその間に、二人のプレハブ小屋の設置を済ます。

その後、食堂に場所を移し、自己紹介とルールの説明なども終え、歓迎会を開催。

いやいや!今日きた二人に俺の相手をするのは順番だよ!とかの説明、要らなくない?

二人からジト目で見られて

「高遠さん、そんな人だったんですね」

「和美!お姉ちゃんが守ってあげるからね!」

とかひどくない?皆が強制されたことないとか、皆、好きで自発的にやってるとか説明してくれて、なんとか納得はしてくれた様だ。

なんか城津先生がじっと俺を見てくる。

なに?怒られるの?

身構えていたが、怒られる事はなく、視線は外れた。

よかった。

その後、歓迎会も終わり部屋に戻ってきた。

今日は和美の番だが、友美と寝ると言っていたので来ないだろう。

たまには一人も良いかもな。

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