第48話 病院
他人視点
私は 城津綾子 27歳 県境にある病院で医師をしている。
住んでいるのは、県境を越えた南の県になる。
子供の頃は、周囲から可愛いと言われ、アイドルになる!とか思っていたっけ。
中学2年の頃、父が病気になり、2年の闘病の末亡くなった。
父と一緒に、懸命に治療にあたってくれた医師には感謝した。
父の保険金もあり、母と二人で生きていくのにお金の苦労はしなかった。
しかし、高校2年になって、今度は母が病気で倒れた。
母の病気も、現在の医療では完治は難しく、延命させるしか出来ないと言われた。
私は母の治療をするべく、医者を目指した。
一年間必死に勉強し、医学部に合格。
その後も勉学に打ち込み、あと一年で医者になれるというときに、母は亡くなった。
その後、気力は無くなったが、他にする事もなく、勉強を続け医師になった。
母を治すという目標を失い、惰性で医師を続けていたが、部署移動でやってきた同い年の看護師との出会いで、少しずつ前を向いて生きていける様になった。
その看護師の友美は私と同じく、病気で両親を亡くしたが、妹を育てるために頑張っていた。
友美は妹の学費や生活費など、カツカツの生活らしいが、明るくいつも前向きだった。
そんな友美に、毎日元気に頑張ってるけど、何か目標があるの?と聞いてみた。
「目標?和美を立派に育てたいとか?
でもあまり考えた事ないかな。
毎日を大切な人と楽しく生きられればそれで良いんだよね。
まあ強いて言えば、和美に幸せになって欲しいとか?
そんなのは目標って言わない?」
どうだろうか?妹の幸せが目標か。
私もお母さんに、幸せになって欲しかった。
だから病気を治すために、医者になりたかった。
お母さんは会いに行く度に、私の心配をしていた。
勉強ばかりで、笑わなくなった私を心配していた。
そんな顔をさせたかった訳ではないのに。
楽しそうに、幸せそうに笑っていて欲しかったのに。
私があの時に気付けていれば、母が望む楽しく幸せな時間を、もう少し与えられたのかもしれない。
ごめんねお母さん、気付いてあげられなくて、ごめんね最後まで心配かけて。
手遅れだけど、もう心配かけないから。
それからは余計な事は考えない様にした。
それでも考えてしまった時は、友美に相談して、能天気な意見に何度も救われた。
そんな変化を少しずつ楽しく思えてきた頃に、警察から不思議な要請がきた。
事故で大怪我をしたらしい患者を連れて行くので検査をして欲しいと言うのだ。
大怪我をしている、ではなく、したらしい?大怪我してるの?してないの?どっちよ!
患者?を迎え入れると、全身の服を血で染めた男性が入ってきた。
ちょっと!そんなに出血していたら死ぬよ?なんで平然と歩かせてるのよ!?
警察官に詰め寄ると、怪我が見当たらないのだと言う。
じゃあ、この血は何処から出たのよ?
この人の血じゃないの?
とにかく!検査をしなくちゃ。
服の血も検査して誰の血なのかも調べないと。
検査の結果を見て、余計に分からなくなった。
服の血は本人の物だった。
渇き具合から見ても、事故の時に出た血だろう。
軽く致死量の出血だ。
なんで何処にも怪我がないの?
検査結果を聞きにきた彼に聞いても、自分でも分からないと言う。
検査結果に何の異常も見られないので、彼は帰宅していった。
なんて不思議な人だろう。
暫く彼の事が忘れられなかった。
その後、世界は変わってしまった。
動物が凶暴化して人を襲いだしたのだ。
他県の系列病院から負傷者が多く、人手が足りないので人員を貸して欲しいと要請があり、私と友美が行くことになった。
初め友美は妹が心配だからと断ろうとしたが、妹さんが働く老人ホームで人手が足りなく、暫く泊まり込むと連絡があったらしく、結局行くこととなった。
他県の病院に着いてからは大変だった。
最初は怪我人の多さに苦労して、その後は避難指示が出て、病院スタッフや動ける患者がどんどん避難していってしまう。
動けない患者を残して。
私や友美、その他にも数人のスタッフが残ってくれたが、病院にも動物が襲ってくる様になった。
入口を塞ぎ入れなくしているが、数が日々増えてくる。
このままでは入口が破られてしまう。
必死に考えて、病院にある毒性の薬物を使ってみることにした。
遺体保管室にある遺体に毒物を塗り込み、二階から入口前に落とす。
群がる動物達。
暫くすると遺体を食べた動物が!毒の影響で死んでいく。
何度も繰り返していると
ステータスを獲得しました
そんな声が聞こえた。
その後も繰り返し、何人かがステータスなるものを獲得した。
アニメ好きだという男性がステータスの確認方法を発見し、皆で少しずつ強化していった。
動物の事もモンスターと呼ぶことになった。
重要な事らしい。
ステータスを得た人は力が強くなり、モンスターを倒せるようになった。
ステータスを得た男性は物資の調達に出てくれて、なんとか生存出来ている。
暫くそんな生活が続いたが、残っていた患者が満足な治療を行えず亡くなっていく。
最後の動けない患者を看取ったあと、皆で移動しようという話になった。
皆、都心の人が多い所に行くべきだと言うが、友美は妹のいる地元に戻ると言い張る。
話は纏まらず、どうするか?という時に彼がやってきた。
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