第29話 保護

ラブホテルの屋上に、転移でやってきた。

気配感知で確認すると、中に一人と外に二人の反応がある。

三人の女性が囚われているはずでは?

二人が逃げ出したのか?

上から外を見てみると、二人の女性が歩いている。

男達がいない間に逃げ出したのだろう。

あんな無防備に歩いていたのでは、すぐにモンスターに殺されてしまうだろう。

保護するために飛び降りる。

「すみません、外にはモンスターがいるので危ないですよ」

女性達が、驚いた様子で振り返る。

「驚かせてしまって申し訳ありません、外は危険なので、声を掛けさせてもらいました」

「私達は死ぬつもりなので、気にしないで下さい」

死ぬ?なんで?

「ちょっと待って下さい!

危ないですよ!え?死ぬなら危なくないのか?

いや、でも、待って下さい!」

テンパって何を言ってるのか、自分でも分からない。

ステータスを獲得してから、久々にテンパっている。

状況が分からない。

「いや、分かりました。

いえ、分からないのですが、ちょっとどういう状況か説明をしてもらえますか?」

俺のあまりにもな焦り様に、可笑しくなったのか、硬い表情だった女性が、微かに表情を緩めて言う。

「簡単に説明すると、監禁されて犯されて妊娠して絶望して死ぬって事だよ」

本当に簡単に説明された。

「今は監禁されてないですよね?なら死ななくても、良いのではないですか?」

「妊娠しちゃったからね、こんな世の中じゃ、病院にも行けないし、産めるわけないでしょ?それに犯された相手の子供を産みたくないしね」

「産む産まないは、なんとか手助け出来ると思いますので、取り敢えず、落ち着いて話をしませんか?」

「お医者さんなの?」

「違いますが、なんとか出来ます」

「騙して、私達に何かしようと思ってるなら、殺すよ?監禁してた奴らも、みんな殺してきたんだからね」

「何もしませんから、安全な場所に移動して、落ち着いて話しましょう」

「もう何も怖くないから、着いていっても良いよ、明美も良いでしょ?」

「沙季が良いなら良いよ」

「良かった、それなら移動しましょう」

「待って、この中にもう一人いるから、一緒に連れて行って」

忘れてた!

「分かりました、では中の人の所に行きましょう」

「着いてきて」

二人の女性に連れられ、ラブホテルに入っていく。

平時ならたまらん状況だね!

案内された先には、二つの死体と、その前に座り込んでいる女性が一人。

「志帆」

沙季が声を掛けると、驚いた様子で女性が視線を向ける。

沙季と明美を確認すると、ふらふらと立ち上がり、二人を抱き締める。

「二人とも戻ってきてくれたんだ、死んじゃったと思ったよぉ」

そう言って号泣している。

「このお兄さんに、説得されちゃった。

妊娠を、どうにか出来るって言うから、取り敢えず信じて、話を聞いてみようと思ってね。

死ぬかどうかは、その結果次第かな」

「なんでも良いよぉ。

とにかく死なないでよぉ」

喜びからか、なんか幼児化してないか?

落ち着くまで、待とう。

志帆の反応に、二人も泣きながら抱き返し、俺は一人たたずむ。

早く落ち着いてくれ。

その後、なんとか三人とも落ち着き、やっと話が進む。

「お見苦しい所をお見せして、申し訳ありません。

二人を助けて頂き、ありがとうございました」

志帆が、謝罪とお礼を言ってくる。

「気にしないで下さい。

私は高遠雅人と言います。

偶然二人を見かけて、危険なので声を掛けさせて頂きました。

何か、力になれるかもしれませんので、お話を聞かせて下さい」

「分かりました、ここでは何ですので、奥の広い部屋で話しましょう」

歩く彼女達を、改めて見てみると、どこかしら怪我をしているようだ。

「皆さん怪我されてますか?」

「大した怪我ではないので、問題ありません」

「でも、治療しておきましょう。

エリアヒール」

三人に光の中級魔法、エリアヒールをかける。

三人は、自分達の身体が、光だしたことに驚いている。

魔法だと説明をして、ステータスを獲得していることも話す。

感謝の言葉をくれたが、驚きの方が強かったようだ。

その後、移動した部屋は広く、大きなベッドと、三人掛けのソファが、机を挟んで二つ、向かい合う様に置いてある。

女性三人が並んで座り、俺は一人で真ん中に座る。

皆が座ったところで、三人が自己紹介をしてくれた。

中に残っていた女性が

真宮志帆 26歳

胸は少し大きめで、凛々しい感じの綺麗な女性だ(さっきは幼児化していたが)。

外にいた内の一人が

相川沙季 25歳

胸はそこそこで、ショートカットの似合う女性だ。

もう一人が

須藤明美 25歳

主張の激しいお胸様をお持ちの、素朴な感じの女性だ。

辛い環境であったはずだが、落ち着いてからは、表情も穏やかで、強い女性達だと感心した。

大体の状況は分かっていたが、改めて話を聞き、沙季と明美はたぶん妊娠している。

志帆は妊娠出来ない身体らしく、今回は逆に助かったそうだ。

妊娠している二人は、子供を産みたくないそうなので、以前発見したスキルで何とかしようと思う。

話を聞き終わって、どうするか考える。

妊娠に関しては、どうとでも出来るだろう。

心の傷は大きいだろうが、正常な思考も出来ていると思う。

拠点に連れて行っても、皆と上手くやれるなではないか。

一度、拠点の女性たちに相談してみよう。

拠点に聞きに行く前に、他の女性達と暮らす気があるか、確認する。

女性だけの拠点があるなら、ぜひ参加したいと言う。

女性だけではなく、俺もいると言ったが、助けてくれた俺は良いそうだ。

彼女らの希望は確認したので、由香里達に相談してみよう。

志帆達には少し、この部屋で過ごしていてもらおう、扉の外に鉄骨を置いておけば、侵入の心配はないだろう。

戻るまで、扉の外に出れない事を伝え、食事は男達の貯め込んだ物を運び込んでおく。

男達の死体を、離れた所に転移で飛ばしておいた。

そして、ホームセンターへ転移で戻った。

ホームセンターで、三人の女性を保護したことを伝えると、すぐに連れてくるように言われた。

境遇に同情している部分もあるだろうが、仲間が増えるのが嬉しいそうだ。

日を置く予定だったが、今日の歓迎会を一緒にやってしまおう、と言うのですぐにラブホへ戻る。

拠点のメンバーに事情を説明したが、全員歓迎すると言っていた事を伝える。

戻って来るのが、早すぎると驚いていたが、三人ともすぐに移動出来る言うので、またまた俺にくっついてもらう。

癖になりそう。

女性に密着して囲まれるって、最高だよね。

もたもたしてると怒られそうなので、拠点に転移した。

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