第27話 ラブホテル

他人視点


私は 真宮志帆 26歳 警察官をしている。

父も警察官をしていて、母は警備会社で事務員をしている。

小学生の頃は引っ込み思案で、友達もあまり出来ず、軽いいじめにあっていた。

仲間外れや無視もいじめたよね?

中学に入り弱い自分を変えたくて、部活は柔道部に入部した。

そこまで才能は無かったが、高校でも柔道部を続けていた。

三年生になってすぐの頃、受け身に失敗して、腰に大怪我をおってしまった。

その後リハビリをして問題なく回復し、警察学校に入った。

そこでも柔道を続け、怪我の後遺症も特に見られなかった。

警察学校を卒業して警察官となり、23歳でサラリーマンの旦那と結婚した。

子供が好きな私と旦那は、すぐにでも子供が欲しかったが、中々授からない。

二年が経過した頃に、不妊検査を受けて愕然とした。

高校時の怪我は腰だけでなく、子宮にもダメージを与えていたらしいのだ。

腰の怪我は治療したが、子宮はなんの手当てもしていなかった為、子供を作る能力が損なわれてしまっている、との説明を受けた。

その後、旦那とは関係がギクシャクし、話し合いの結果離婚した。

仕方のない事だが、彼にとって私は、必要では無くなってしまったのだろう。

子供を授かり、家族を作りたかったのだと思う。

子供を産めない私は、一般的に見て欠陥品なのだろう。

その後は、仕事ばかりの生活だった。

ある日、母と出掛ける約束をしていたので、職場まで迎えに行った。

母を訪ねて行くと、可愛らしい女性と話していた。

警備会社なので、男しかいないと思っていたが、女性の警備員もいるらしい。

藤森亜季子さんという彼女は、私と同い年らしく話が弾んだ。

最近仕事ばかりで、遊ばない私を心配した母が、今日の外出に誘ってくれた。

楽しそうに話す私を見て、母は藤森さんも一緒にどうかと誘っている。

私も久々に楽しく話せたので、ぜひにと誘った。

快諾してくれた藤森さんも含め、三人で楽しく過ごした。

亜季とは、その後も連絡を取り合い、仲の良い関係を続けている。

そんな日常は、簡単に崩れていった。

凶暴化した動物が、あちこちで暴れる様になったのだ。

警察官である父と私は、休みなく仕事に入る。

ある日、課長に呼ばれ話を聞きに行くと、父が鎮圧中の動物に襲われ死亡したと言う。

動物の鎮圧はかなり危険で、多くの警察官が殉職している。

警察官に支給されている拳銃では、大した効果がないそうだ。

自衛隊は、多少効果のある武器を使用しているらしいが、それでも鎮圧出来ていないという。

そんな状況でも立ち向かった父を、とても誇らしく思う。

私は涙を流しながら、課長の報告を聞いていた。

こんな状況では、葬儀もまともに出来ないが、2、3日休めと言う言葉に甘え帰宅する。

母も気丈に振る舞っているが、ショックが大きいようだ。

2日後に呼び出しの無線が入る。

電話もまともに繋がらない状況のため、非番の人間に持たされているものだ。

聞くと警察署に避難してきた人達の中に、女性や子供もいるので、お世話をするのにも女性が必要らしい。

母にも一緒に来ないか、と誘ったが家にいたいそうだ。

心配だが、家から出なければ問題ないだろう。

警察署に着くと、色々な人が避難してきていた。

子供連れの家族や若い男女、チンピラみたいのまでいる。

周りを威嚇するのはやめて欲しい。

子供達が怯えてしまっている。

酷いようなら個室に閉じ込めよう。

警察署で寝泊まりする日々が、一週間程続いている。

電気も止まり、ネットも繋がらなくなった。

態度の酷い人達は、個室に入れたりしながら過ごしているが、警察官の数がどんどんと足りなくなっていく。

動物の鎮圧に向かったまま、戻って来なくなったり、怪我をして動けなくなった人も多い。

情報も上手く伝わって来なくなり、住民の安否も把握できない。

政府は何処かに人を集めている様だが、政府としての機能など、まともに働いていないだろう。

特にこんな人口のあまりいない地方には、支援を回している余裕はないのだと思う。

更に数日がたち、状況は悪くなる一方だ。

最近チンピラ達と一部の警察官が、仲良く話しているのを見かける。

私の事も、嫌らしい視線で見てくる。

こんな状況で、男性も色々と溜まるのかもしれないが、気持ち悪いのでやめてもらいたい。

若い女性も数人避難して来ているので、気を付けなければいけない。

そんなある日、夕食を食べていると、やけに眠くなってくる。

最近睡眠時間も少ないので、そのせいか?とも思ったが何かおかしい。

どんどんと眠気が強くなり、目を開けているのが辛くなってくる。

そんな私の前に、チンピラ達と数人の警察官が、嫌らしい笑みを浮かべてやってきた。

もう眠すぎて目を開けていられない、そこで私の意識は途切れた。

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