第21話 ステータス獲得者

他人視点


老人ホームを出てから、1日と少しがたった。

今の私は相手にもよるが、モンスターを一体倒すのに20分くらいかかる。

貰った刀は、とても切れ味が良いのだが、モンスターが硬すぎる。

少しずつ傷を付けて、出血による死亡を狙うしかない。

一人で行動している時に、二体以上と遭遇した時は、逃走している。

今回は、同行者が逃げ切れるか不安なので、慎重に気配感知で調べながら進んでいる。

基本は回避したり、やり過ごしたりするため、時間がかかる。

その代わり同行者がいるおかげで、見張り番を交代で出来るし、荷物も別けて持てる。

そうして進んで行くと、目の前には大型のショッピングセンターがある。

今回の目的地はここだ。

人が来なくなってから暫くたつためか、建物の中にモンスターは少ない。

モンスターの動きに注意しつつ、食料を中心に物資をリュックに詰める。

私が一番力があるので多く持とうとしたが、戦闘が必要な時に動きやすい様にと、皆と同じ量にした。

近寄って来てしまったモンスターだけ倒しつつ、物資の回収を終える。

皆が待つ老人ホームへ戻ろう。

それなりの収穫のあった私達は、警戒しながらも帰路を急いだ。

荷物が増えたため少し移動速度が落ちたが、もう少しで到着する。

物資調達に出たメンバーに怪我はなく、今回の探索は大成功だろう。

老人ホームが視界に入る頃、異変に気が付いた。

建物内にモンスターの気配があるのだ。

「皆がモンスターに襲われてる!

急ぐから付いてきて」

メンバーのペースに合わせながらも、焦っていたのだろう。

人の気配が、すでに無いことに気が付かなかった。

入口から中に入り、近いモンスターから倒していく。

放置すると他のメンバーが危ないからだ。

私を先頭にして纏まって進んで行く。

普段この時間なら、皆で集まっている談話室に着いたが、誰もいない。

あちこちに血が飛び散っている。

ここで気配感知に、人の反応が無いのに気が付く。

何で誰もいないの?ベッドで寝たきりのおばあちゃんの部屋に向かう。

気配感知で分かっていたが、そこには荒らされた部屋と、血まみれのベッドがあるだけたった。

「皆どこかに避難してると思う。

探しに行くから付いてきて!」

「こんなに血があるのに、生きてる人なんているわけ無いよ!」

「分からないでしょ?

誰か助けを待ってるかもしれないでしょ?!」

「みんな死んじゃったんだよ」

「どうしよう」

この光景にみんな動揺している。

建物の中にいたモンスター2体は倒したので、取り敢えず安全ではある。

しかし血の匂いが充満したここでは、頭が冷静でいられないので移動しよう。

普段使っている休憩場所に、皆を連れて移動する。

物資回収するエリア毎に、独自の休憩場所を決めているのだが、今回は駅近くの商店街にした。

雑居ビルの二階にある喫茶店に、皆を連れて入る。

誰も言葉を発しようとしない。

なんとなく分かっているが、言葉にする事で現実として認めるのが怖いのだ。

お母さん、どうか無事でいて欲しい。

これからどうしよう。

三人にも意見を聞かなければいけない。

話し合った結果、共通の意見として、四人で行動する事と、拠点を移動する事が決まった。

次の拠点を探さなければならないが、一度老人ホームに、荷物を取りに戻らせてもらった。

母の荷物を、少しでも持っていきたかったのだ。

母と過ごした部屋は、特に荒らされてはいなかった為、何を持っていくか悩む。

全部持っていきたいが、拠点探しの邪魔になってしまう。

どうにか出来ないか考えて、アイテムボックスを取得する事を閃く。

子供達が、物を収納出来るスキルだと言っていた気がする。

今回の探索中に、レベルが1上がっていたので、一つスキルが取れる。

少し悩んだがスキル取得は保留にした。

気のせいかも知れないが、最近モンスターが更に硬くなった様に思える。

もしモンスターが私達と同じ様に、成長できるのだとしたら、スキル選択が生死に関わるかもしれない。

持っていけない荷物は、落ち着いたら取りに来よう。

母が使っていた手袋とマフラーを鞄にしまい、三人と合流する。

向かう大まかな方面だけ決めて、さて出発というタイミングで、こちらに近付いてくる人の気配を察知する。

三人には中で待ってもらい、一人で外に出ていく。

「大変な事になってますね、皆さん大丈夫ですか?」

警察官の格好をした男が聞いてくる。

「問題ありません、こんな状況で忙しいので帰って頂けますか?」

「何かお手伝いしましょう」

「いえ結構です」

そこでチンピラみたいな男が話に割り込む。

「おい!めんどくせぇよ、ちょっと痛め付けてやれば大人しくなる!みんな顔以外を狙って撃て!」

まずい!複数から撃たれたら、流石に避けきれない。

痛みを覚悟したその時、発砲音と同時に目の前に人が降ってきた。

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