第5話 終わりゆく日常
目が覚めたのでTVをつけてみるが反応しない。
どうやら電気は、いまだに復旧していないらしい。
天気は良いようで、部屋の中は十分に明るい。
情報を調べるため、スマホを手に取り調べていく。
近場の事故で検索しても、特に見当たらない。
SNSを開いてみると、大変な事になっているようだ。
昨日見たニュースの様に、あちこちで動物が凶暴化して暴れまくっている、との投稿が溢れていた。
山や森などの近くに被害が多いようで、鹿や熊なども凶暴化しているらしい。
都市部でも少数ながら、カラスやネズミが凶暴化してる事件が数件あるらしい。
警察の公式ページには、外出しないようにとの注意喚起と、すでに外出中の人は近くの避難所に退避するように、との指示が書かれている。
スマホで、政府の緊急会見の動画を見る事が出来た。
どうやら日本各地で動物の凶暴化が起こっていて、自衛隊や警察による鎮圧が間に合っていない現状であり、アメリカ軍への救助要請や、他国への支援の要請など色々と手を打っているとの事だ。
また現在分かっているだけでも、数万人の死傷者が出ていて、今後さらに増加が見込まれると話していた。
ここまでの情報で、大変な事が起きているのは理解したが、ではどうするか?ということだ。
家から出るな、と言われてもいつまで?その間の食料はどうしろと言うのか。
独り暮らしのおっさんの家には、食料などあまりない。
数日たてば、完全に食料が底をついてしまう。
一度買い出しに行くしかないが、車がなくなってしまったため、買える量が限られるな。
それでも行かない選択肢は選べないので、近場へ買い物に行くため、着替えをしてから家を出る。
俺の家から一番近いのはドラッグストアーだ。
最近のドラッグストアーは、弁当やパンはもちろん、その他の食材も取り揃えが豊富だ。
カップ麺や缶詰など、保存が効くものも売っている。
歩いて持ち帰ることを考えると、少しでも近いここで良いだろう。
ドラッグストアーに着いて、自分の迂闊さに気が付いた。
店が開いていないのだ。
考えてみれば、外出が止められているのだから店員も家を出ない。
それならば店も開かない。
どうしよう、と思っていると店の裏側から、荷物を台車にのせて押している男が出てきた。
「すみません、お店の方ですよね?
今日はお店を開かないのですか?
外出するなとの話もあったのですが、食料が底をつきそうで、何とか購入させて頂けませんか?」
出てきた男に、丁寧に頼んでみる。
男は少し視線を揺らした後に
「今日は店を開けられません。
私も急いでいるので、申し訳ありませんが失礼します!」
と言って車に雑に荷物を放り込んで、去って行ってしまった。
少し考えて、食料品をメインで扱うスーパーまで、行ってみることにする。
ドラッグストアーは、食料品を売っているとはいえ、賞味期限の短い物は店全体のほんの一部だ。
店を開けないで期限が切れてしまっても、処分することになる商品はそこまで多くないので、損失もあまり多くないとの判断から、店休にしたのだろう。
でも食料品メインのスーパーは、期限のあまり長くない商品も多いので、もしかしたら損失を考えて営業しているのでは?と思ったのだ。
ドラッグストアーから、徒歩30分程かけてたどり着いたスーパーは、嬉しいことに予想が当たり、営業していた。
持てる量が限られているので、嵩張るカップ麺はやめて無洗米・乾麺・缶詰・レトルト食品・水等を中心に購入。
カートいっぱいになってしまい、重くて持てないのでは?と思ったが片手に大袋4つずつ、苦労することなく持ち帰ることが出来た。
やはり身体の調子がよく、性能が上がっている気がする。
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