罪と罰
あの夜から二日が経った。四月十六日の土曜日だ。昨日の無風部では誰も相談に来たりする人はおらず、みんな自由に過ごしていた。僕は読みかけの『白露』を一冊読んだり、俊徳と話をしたりしていた。山下先輩と叶原の件については突っ込みを入れてこないようで、安心した。あれを説明するのは面倒だし、説明したくもない。山下先輩は少なくとも、誰かに話してほしくはないだろうし。そんな金曜日を経て、僕は今、とある場所に向かっている。真夜中というほど夜遅くはないけれど、夕方と言えるほど早くはない時間。幾つかのものをリュックサックにしまって、街中を歩いている。
午前の間は悠くんと悠奈ちゃんに勉強を教えていた。午後は家で何もせずのんびりしていた。そして二人を寝かしつけ、僕は家を出て街中を歩いている。日課というか、習慣にしていることが僕にはある。毎週土曜日に僕はいつも、その場所に行く。その場所と形容するのは正確ではない。とある二つの場所に行くと言った方がいいだろう。
数十分ほど歩けば、第一の目的地には着いた。
植物状態。あるいは植物人間。もしくは遷延性意識障害。彼女、
植物状態の人に声が聞こえているのかは分からない。でも僕は週に一度ここに来て、一週間の話をする。僕は病床の近くに置かれている丸椅子の一つに腰かけた。リュックサックも床に置く。そして口を開こうとした時、ドアがガラリという音を立てて、開いた。僕は振り向く。僕の知り合いの一人だった。その人は僕に言った。
「久しぶりですね、克治君」
僕は返事を返す。
「一週間ぶりぐらいですよ、翼さん」
翼さんは静かに笑った。
「あら、そうでしたか。記憶が曖昧ですね」
彼女は僕の隣に丸椅子を持ってきて、腰を下ろした。今日もいつものようにレンズが外された伊達眼鏡を付けている。彼女は大きめの鞄を床に置いた。恐らくあの中には執筆用のパソコンが幾つか入っているんだろう。翼さんは言った。
「翡翠さんから聞きました。無風部に入ったんですって?」
「ええ、まあ。…………何で急に翡翠さんたちとの関係をあからさまにする様になったんですか?今までは話題にも出さなかったじゃないですか」
「今までも隠してるつもりはなかったんですけれど…………まあ、克治君が知ったなら、別に隠す必要もないかと思いまして」
翼さんが使ってくる敬語口調にはもうとっくに慣れてしまっている。止めてくれない事も知っている。なので僕はそれについては何も言わないことにした。
だが、本当にあの四人は互いを知っていたのか。だが、どういう関係だったのだろうか。僕はそれを聞いてみた。
「翼さん達は、どういう関係なんですか?」
「ふふ、知ったら驚きますよ?」
「まあ、繋がりがあった事にも驚きましたけど」
翼さんは眼鏡をはずして、鞄の中にしまった。眼鏡という物は、レンズがないとはいえそんな雑に入れていいものなんだろうか。
彼女は微笑を浮かべて言った。
「羽翼君が羽場高校の生徒だったことは知ってますよね」
「それは、まあ」
去年、雑談をしているときに話題に上がった。だが、こうやって話し始めるという事は、そういう事なんだろう。
「私たちも羽場高生だったんです」
「そうだったんですか」
次に翼さんはそれよりも衝撃的な事を口にした。
「そして、私たちはみんな、無風部に所属していたんです」
…………翡翠さんが言っていたことは事実だったのか。
「それは…………本当に数珠のように繋がっていますね」
僕が中学生の時から知り合いだった四人の大人が、全員無風部に所属していた。それが二人の口から出た。事実だろう。…………好川先生の言う通り、数珠のように続いていく部活なのかもしれない。だがそれにしても、赤羽と叶原が無風部か。
「今の、生徒の相談を聞くという活動内容はその時からあるんですか?」
「はい。…………その様子だと、始まりからずっと変わってないみたいですね」
「始まり?」
その言い方は少し引っかかる。まるで翼さんが無風部の始まりを知っているかのような言い方だったが…………。
「無風部は私たちの一つ上の先輩が始めた部活なんですよ」
「…………そんなとこに起源があったんですね」
翼さん達の先輩か。という事は叶原や赤羽の先輩でもある。それに、こんな厄介な、お人好しともいえる部活を作った人。相当な変人だろう。まあ、話を戻そう。
「それで、何を聞いたんですか?」
「早速、事件を解決したそうじゃないですか。添削してあげましょう」
「添削、ですか」
「所々は端折っても構いませんけれど、必要な部分だけは抜き出して話してみてください。君の推理がどれだけ手順の良いものかを確認します」
まあ、元から野島さんに話すつもりでここに来たわけだし。話す内容は大体頭の中で組み立ててある。話す相手が増えただけだ。何の問題もない。僕は野島さんの方を見た。…………とりあえず山下先輩の件だけ省いて話そう。
「僕は月曜日、退屈な説明を聞き終えて図書室に向かっていました」
それから僕は野島さんに話そうと思って頭の中に浮かべていた言葉を口にする。文章を用意をしていたおかげで、三十分程度で話し終えることが出来た。翼さんはその間、ずっと微笑を浮かべて聞いていた。そして立花先輩が僕を叩いた所まで話し終えた。僕は締めの言葉を言った。
「これが木曜日までに起こった出来事です」
「まあ、及第点ですね」
「及第点、ですか」
「はい。というよりも、欠けているんじゃないでしょうか」
こちらの隅々まで見透かしたような視線が僕を貫く。無意識のうちに背筋が伸びる。少し嫌な予感がするが続きを聞いてみよう。
「何のことですか?」
「私が思うに、山下さんが仕組んだ事があると思うんです」
やはりこの人には、隠し事が出来ないようだ。僕は正直に白状することにした。
「はい。この話には続きがあります」
僕がそう言うと、翼さんは嬉しそうにした。
「おや、私の推理も当たっていたようですね。では、続きを話してください。その上で判断します」
僕は考える。それについては話すつもりはなかったから、どうやって話すかどうかを考えなければならない。まあ、ざっくりと説明してしまえばいいか。
「立花先輩の犯行ですけれど、これを考えたのは山下先輩でした。印鑑の所に鍵を掛けておくという不自然。備品を見つけて欲しいという依頼から、犯人探しに目的がすり替わっていた事。山下先輩が長嶋さんと親しく、好川先生のルーティンも知っている可能性がある事。
部活棟、芸術棟、教育棟の全ての部活に入っておらず、運動部でもないという事から、演劇部である可能性が高い事。まあ、これは芸術棟の荷物の数と演奏を行っていた生徒の数との間に齟齬が無かったことなどから判断しました。
そしてそもそも、立花先輩があの扉の事を知る機会がなかったので、それを教えた存在がいる可能性。それらから僕は山下先輩が立花先輩に犯行方法を伝授した可能性があると考えました」
「…………動機は何だったんですか?」
「それは山下先輩が教えてくれました。小説家になりたかったそうなんですけれど、親に反対され、一度の挑戦しか許されなかった…………つまり何らかの賞を一発でとらなきゃ駄目と言われたそうです。
それで先輩は自分のアイディアを出す能力が十分なのかを確かめるために、実際に現実でもやってみたかったそうです。こうやって言葉にしてみると荒唐無稽ですけどね。それである時、無風部にいた名探偵みたいな人がいなくなったらしく、好機だと思い、叶原に扉の存在を教えられ、この犯行を思いついたそうです」
今度こそ、僕は締めの言葉を口にする。
「これが、木曜日にあったことです」
翼さんは僕がそう言ってからも暫く黙っていた。俯いて何かを考えているようだった。そして唐突に顔を上げて、言った。
「やはり、及第点です」
「…………どこが駄目だったんでしょうか」
「最後の所ですね。山下さんを犯人と指摘する時の論理だて。ここが少し無理矢理ですね。事実、克治君も心配だったでしょう」
「…………まあ、可能性は低いと思っていました」
翼さんは頷いた。僕自身もその言葉が正しいと感じていた。あの時の僕の推理は、確定していたものがなかった。全てが仮定で、仮定の中でも可能性が低い部類のもの。山下先輩が犯人ではなかった可能性の方が高かったとも言える。勿論、好川先生の情報やいじめっ子が学校に来ないという事などを加味したとき、山下先輩がいたほうがやりやすいというのは確かなんだろうけれど、それでもあれは不安定だった。そこでマイナスを喰らっているのだろう。では、それらの可能性を引き上げる方法でもあったのだろうか。
「まあ、絶対山下先輩が犯人だという方法はありませんが、可能性を上げることは可能です。それこそ芸術棟の荷物を全部覚えていたなんて神業じみた芸当を必要とせずに」
「そんなことが出来るんですか?」
「似たような発想自体は克治君もしていたはずですよ。犯行が夜に行われていたと確定する前、そして好川先生のルーティンの事を知る前、克治君は一度も考えませんでしたか?」
大体、家庭科室を見た後ぐらいか。その時僕が考えていた事?すぐには思い当たらない。
「実際は不可能ですがルーティンが存在しなかったと仮定して考えましょう。そうしたとき犯人は隣の部屋の扉が開いた音を頼りに、犯行を行うはずです。そうした時、犯人が危惧すること。それらを考えませんでしたか?」
…………考えた。
「…………心理的な、不可能」
「その通りです。私の時と変わっていなければ春休みには司書さんがいます。そして、もしかしたら誰かが通りかかるかもしれない。克治君の言から、化学室の金切り音は相当大きいんでしょう。そんな状況下の中、犯人はその音を鳴らすことを忌避する可能性が高い。そう考えたはずです」
確かに考えた。だけれどそれは、夜に犯行を行ったと知ってからは考えなかった。人の目など考える必要がないんだから。それが山下先輩が犯人であることに繋がるのか?少し考えてみよう。…………そういう事か。実際に行われた犯行の中に、昼間に行われたものがある。それは、当初僕が考えた化学室での心理的不可能と同様の理由から否定できるものだった。それが行われたという事は。
「…………確かに、及第点までしか届いていませんでしたね」
「では、訂正をしてください。もう一度、推理を」
「立花先輩があの扉に入ったのは、昼間です。山下先輩が犯人じゃなかった場合は、席を外した隙に邪魔な物を退かして、先輩が違和感を抱かないように物を直して、その上であの中に入らないといけません。音は鳴るし、時間もかかる。その間に山下先輩が帰ってくるかもしれない。しかし、それも山下先輩も犯人なら、それらの心配をする必要がない。生徒会室の鍵を閉めてもらって、のんびり扉の中に入って、山下先輩に物品を整理してもらえばいい。
心理的に不可能に近い事を行ったという事は、それを可能にしたものがある。それが山下先輩が犯人である根拠になりうる…………という事ですか?」
翼さんは僕の推理を静かに聞いていた。僕が最後の言葉を言った時、翼さんは頷いた。…………確かにそうだ。僕が一昨日話した、可能性の低いピースの寄せ集めよりもずっとまともな推理だった。僕の推理を及第点と評するのも、妥当だと言えるだろう。
「まあ、探偵としての活動は始まったばかりです。これから修正していけばいいですよ」
「探偵にはなりませんよ、僕は無風部の部員として活動していくんです」
「高校時代の部活動が将来に繋がることもあります。翡翠さんは無風部だったから、警察になりましたし。克治君がそれと同じように、探偵になる可能性もゼロではありません」
可能性はゼロじゃない。でも限りなく低い可能性に思いを馳せる必要はない。どうせ二年後には決断しないといけない時が来る。その時まで待っていればいいのだから。
「それはそれとして、いい話を聞けました。無風部は克治君にいい影響をもたらすと思いますよ」
「確かに、そうかもしれませんね」
「頑張ってくださいね。私は出版社に行くので、そろそろ」
翼さんは忙しい。今、小説界を席巻しているのは翼さんだ。最も売れている小説家と言ってもいい。ここへの見舞いも、彼女のスケジュールをきつくしている一因でもあるのだろうけれど、それでも翼さんは野島さんの見舞いに来てくれる。僕の事ではないとはいえ、嬉しい事だ。
翼さんは鞄を持ち、立ち上がる。そして僕の方を向いて、思い出したかのように言った。
「そう言えば、引き取ったという二人の子供は元気ですか?」
悠くんと悠奈ちゃんの事か。外には出ないとはいえ、元気に過ごしてはいる。鞄から伊達眼鏡を取り出して付けている翼さんに返答した。
「はい、元気に過ごしてますよ」
「それは良かったです」
翼さんは笑って、「ではまた、近いうちに会いましょう」と言った。そうしてこの病室から去っていこうとする翼さんの背中を見て、僕は一つ、この事件の中で解決していないことがある事に気が付いた。その謎に関しては、解くことが出来ていない。僕はその質問を翼さんの背に投げかけた。
「翼さん、結局のところあの扉は何だったんですか?」
あの小さな扉を叶原が見つけたのが学生時代だった場合、翼さん達もあの扉の存在を知っていたはずだ。翡翠さんが僕の立花先輩の所までの説明だけで、叶原のクソ野郎と言ったという事は、翡翠さんもあの扉について知っている可能性が高い。それなら、翼さんもあれを知っていたとしてもおかしくはない。
あれは何なんだ。僕はあの狭い部屋の中で壁を触った。あの壁は凸凹していた。でも自然に存在している土の壁というわけではない。そして、壁の質感というわけでもない。壁のほかに、というよりかはあの壁の向こうに更に隠されている何かがあった。老朽化して、一部が崩れた壁の向こうに何かがあった。その何かを、僕は知れていない。俊徳は体が大きいのであそこには入らなかった。結局、あの扉の真実は何も分かっていないんだ。
それを僕は知れていない。なぜか、知りたいと思った。
『君はとことん名探偵気質だな』
そんな言葉が浮かんだ。今だけはそれを認めてもいいと思った。翼さんは振り返って、僕の目を見て、言った。
「すみません、あの扉は私も何なのか分からなかったんです」
「そうですか」
「ただ」
翼さんはその情報に一つ付け加えた。
「あれは、あの学校が作られた時にはなかったそうです」
「そうなんですか」
叶原、赤羽、翡翠さん、翼さん。この四人がいても分からなかったのか。それはもう、羽場高校の歴史を学ぶ必要がある。そこまでしようとは思わないけれど…………。
翼さんは続けて、言った。
「まあ、今日はここに来て正解でした」
「何でですか?」
「というより、一人でここに来るのは止めておいた方がいいです。君はきっと、一人でここにいたら自責の念に駆られる。それはあなたに悪影響です。ないとは思いますが、君とは言え自らを殺すことにもなりかねない。私は、人がそういう結末に陥るのを望んでいませんから」
翼さんは病室から出ていった。今度から、誰かと一緒に来た方がいいのだろうか。俊徳や三田川や…………霧遙先輩は、関係ないか。まあ、それはそれとして。
…………あの扉は何だったんだろうか。立花先輩の処遇が決まり、落ち着いた時に聞いてみよう。あの狭い部屋の中で、あなたは何を見たのか、と。
僕は野島さんの方を向いて、話しかけた。
「野島さん、これが羽場高校で僕が最初に体験したことです。きっと僕は、卒業する時色々な事を決断している。でもその時に後悔はない。そう信じてます。…………また来週来ます」
僕は椅子を片付けて、リュックサックを背負ってから病院を後にした。僕は今から、ここから少し離れたところにある、二つ目の目的地に向かう。翼さんの自責の念に駆られるという心配は、こちらにも適用されるのかもしれないけれど、今から人を呼びつけるというのは非常識だ。とりあえず、今日は僕一人で行くことにしよう。僕はちょうどよく来たタクシーを止めて、乗り込む。僕は運転手に目的地を告げた。
「
タクシーは夜の街から、自然に囲まれた暗い闇に向かって走り出した。
街灯も少なく、人通りもほとんどない。そんな北黒霊園の前で僕は降車した。タクシーは元来た道に向かって走っていった。僕は北黒霊園に入る。沢山の墓石が並んでいるが、暗くてよく見えない。だがすぐに夜目が利くようになってくるだろう。だけれどそれを待つ必要はない。野島さんの病室と同じく、大量にある墓の中にある目的の場所はすでに覚えている。十秒も歩けばそこには辿り着いた。
その墓石に刻まれた文字だけは、この暗闇の中でもよく見えた。
初路家之墓。中学二年の時の僕の結果だった女性。
僕は初路の理由にはなれなかったし、初路は僕の結果にはならなかった。僕が無力だったが故の、正しい結末だったのだけれど、それでもあれは残酷だ。ただ、否定したくても出来ない。あれへの肯定は二年前に終えてしまっているからだ。二年前というよりかは、一年と数か月前。中学二年の時の十二月二十五日に初路は死んだんだ。死因は何度も聞かされたし、自分で理解した。僕がもう少しましだったら、初路は生きていたかもしれない。彼女と出会ってからの僕の行動が、塵のように積もって…………いや、何もかも積もらなかったからこそのあの結末なのだろうけれど。
罪滅ぼしというわけではない。言い訳というわけでもない。僕はただ、彼女の生を無意味なものにしたくなかった。せめて僕一人だけだとしても、初路の死後、彼女の事を覚えている人間がいれば、初路景の人生は残酷ではあっても、無意味ではないものになるはずだからだ。
花を供えて、線香を焚く。数秒間合掌をして、僕はそこから立ち上がる。長話をしたりはしない。初路はきっと、僕との会話を望んでいないだろうから。
明るく、陽気で、人の前に立って、誰かの幸せを望んで、自分の未来にだって何の恐怖も抱いていなくて、他の誰よりも生を楽しんでいる人間。そんな振りをしていた彼女の事を僕は忘れない。彼女の生き方は最悪だったけれど、彼女の生き急ぎ方は偽りではあるけれども太陽のように眩しかった。
ここにいると、初路の墓を見ていると、僕の前にはあの日の情景が浮かんでくる。
あの日は俊徳と野田さんもいた。忘れもしない。左から順に僕、初路、野田さん、俊徳の順に並んでいた。電車が来た。そうと分かった時に線路に落ちる人影があった。僕は身を乗り出して、手を伸ばす。彼女はその手を掴もうとはしない。彼女の顔には最後まで笑顔が浮かんでいて。直接引っ張り出そうと、線路に飛び出そうとした僕を俊徳が取り押さえた。四秒か、五秒の間だった。次の瞬間には、勢いのまま吹き飛ばされた四肢の一部や、血飛沫がそこに残った。僕が後ろを見ると、手を押さえて逃げ出した男がいて…………。
忘れない。初路の事を忘れるなんてことはありはしない。初路景という人間が生きたと知っている人間は、ここ数十年はいなくなる事はない。
君の分まで生きるなんて言葉は口にしない。僕はただ、自分の人生を生きる。君が生きていたという事実が組み込まれた自分の人生を、生き続ける。
ただ一言、僕は口にした。
「君と同じ結果に至る人間は作らないし、作らせない」
幻覚はまだ見えている。というより幻聴か。彼女の最後の言葉が僕の耳をしばらく支配していた。家に帰った頃には、消えているだろう。
『生きなよ。誰かの理由になって』
僕は誰かの生きる理由になれているだろうか。無風部として活動を行う中で、いずれそれに出会うのだろうか。僕はそんな未来に思いを馳せた。
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