第16話 鍛冶師の町。デルヘースト

「村の人達にはずっと助けて貰ったの…… でも…… あの子達がいなくなって、その…… 聞いちゃったの。子供達をどうしたのかと……」

「それで、やられたのか?」

 そう聞くが、彼女は横に首を振る。


「んーんん。生意気なことを言うな。俺達だって大変なんだって、殴られただけ。あの…… 体…… やられたのはその後。薬を持って、一番村でよくしてくれたおじさん。私は……」

 そう言って彼女は涙をこぼし、それでもゆっくりと話してくれる。


「あの人は、私のお母さんとお父さんの幼馴染みで…… お母さんのことが好きだったみたい。だけど戦争で…… お父さんが死んで…… 苦労していた私たちに、食べる物をくれた。でも、ある日。今思えばおかしかったけれど、お母さんは川へ落ちて死んじゃったの。その後も食べ物をくれていた。同じような子達を集めて、畑を作り、私が育て始めたときも助けてくれた。だけど、いきなり。薬を塗っていて、おまえも母親に似て、美人になったとか言って襲われて。その時に、言っていたの。母は逃げて川に落ちたと……」

 思わず彼女を抱き、背中をポンポンと優しく叩き、なだめる。


 話をしている荷馬車の裏で、やばそうなら止めようとしていた、ジャンナとアネット。話を聞いて号泣をしていた……


 泣いていたのを気が付いていたから、後で話を聞き、やばそうってなんだよと聞くと、口直しにオネスティを襲うかもしれないじゃんと言っていた。

「バカだろ、おまえら……」

「だってぇー」

 そう言って、甘えてくる。



 その頃。メーヴィス王国、王城。

「オネスティは、結局見つからなかったのか?」

「はい」

「そうか……」

 今部屋では、家族会議が行われていた。

 オネスティを探すのに、これ以上兵を使うと、帝国兵との軋轢が発生する。

 小競り合いでも起これば、大騒ぎだ。


 王様。つまり父親である、コンラーディン=メーヴィス十三世。

 宰相と共に、物事の表面でしか物が見られない。よく言えば素直。


 宰相であるクリストハルト=ヴィーガント。

 オネスティから見ると、その判断大丈夫かというレベルで物事を決めてしまう。

 つまり、二人のぼけが、この国をこの状態に追い込んだ。

 その条約を、十歳の時に見せられてオネスティが切れた。


 それが、王や貴族が馬鹿だと言って、グレた原因。


 妃である、マルレーヌ=アルシェ。

 ぽわぽわして、その場しのぎで適当に流れに乗る。公爵家のお嬢さん。


 妃の息子。第一王子ロイド。非力で根性無し。オネスティ目線での意見だが。つまり当社比。

 第一王女クリスティーネ。自主性無し。妃にそっくり。同じく当社比の意見。


 側室。オネスティのママン。マリアーヌ=カーティス。実家は武の名門。実は怖い。笑顔でブスリと突き刺すタイプ。

 第二王子ウェズリー。実は、抜け出すときにもサポートをしていた。帝国を倒すため何とかすると言う言葉を聞いている。当然、ママンには、ばれる。ヘッドロックからのハラパン二発で吐かされ、ママンはオネスティがやっていることを知っている。


「あの子も、もう成人。わたくしの息子です。簡単に死やしませんわ」

 あっけらかんと言ってのけるが、王の心配はそこでは無かった……


「いや、あやつが何かをしでかして、帝国と事を構えることになればわが国は……」

「それこそ、問題になる前にきっちりと埋めるでしょう。オネスティですもの…… ほっほっほ」

 口元を扇子で隠しているが、目は笑っていない。

 当然配下は、オネスティにくっ付いている。


「まあ、そういう事でクリストハルト。兵は引き上げていいわ」

 宰相に命令をする。口には出さないが、王国内にはもう居ないしね。

「うふふ」

 少しやっていることが耳に入ることで、ご満悦。

 国境の境。町を治める代官が、吊るされたことを聞いて喜んでいた。


「オネスティは、元気ですか?」

「ええ。物見から連絡が来たわ。手勢を増やしている最中のようね」

 そう聞いて、単純に驚く。

 いるのは帝国側。手勢を増やせば目立ってしまう。


「そうですか」

 だが、ウェズリーは、その言葉を聞いて安堵する。あいつのことだ、何か手を打つだろうと。まとまって動かなければ良い、何かあった時に一所にまとまれば。位に考えていた。


「あなたも付いて行く? 行くなら場所を教えるわ」

 そう言って、嬉しそうな目を向けてくる母親。

「母上。それはちょっと…… 今城内を掌握中ですし」

 そう。オネスティが去った後、やれることを見つけて動いていた。

 貴族達もいい加減、現状が良くないと分かっているため、話には乗ってくる。

「そうね。各自やれることをしないと、この国は駄目よね」

 そう言いながら、マリアーヌはひらひらと扇子を舞い踊らせる。

 まるで、その姿は敦盛を舞う。信長のようだったとか……



「よっしゃー。此処が、鍛冶師の町デルヘーストかぁ」

 ニクラス達も、来たことがなかった様で嬉しそうだ。

 この町は、メインの街道から山側にはいる僻地だ。

 ただここに来れば、武器や防具は安く買える。―― と思っていた。


 オネスティは、此処で工作機械を造りたかった。

 そして、まともな荷馬車に簡易な小屋。エトセトラ。

 むろん、皆の武器や防具も、此処で買えば運賃分は安いはず。


 夢は広がる……


「小売? 駄目に決まってんだろうがぁ」

 そう言われるまでは……

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