第14話 商売繁盛

 金を使ったから、昼からは営業。


 最近は、版画方式で作ったトランプがよく売れる。

 版画だと色の移りが今一だから、今シルクスクリーンの原理を思い出して試作中。


 異世界だとリーバシ辺りが定番だが、トランプから広めてしまった。


 マジックで使っていて、そのカードはなんだと聞かれて、使い方を説明した。

 先ずは、簡単な、ポーカーとかブラックジャック。


 まあポーカーと言っても手札五枚じゃなく、手札二枚のテキサスホールデム。

 場に、コミュニティカードを五枚。

 手札は見せないが、コミュニティカードは最初三枚から順に一枚ずつオープンしていく。


 手札二枚と、場にあるコミュニティカードを使い、プレイヤー全員が役を作る。

 ショーダウンで手札を見せて、強い役ができているプレーヤーが勝利。


 ディーラーが、ディーラーボタンというプレーヤーを決め。そこから時計回りにスモール・ブラインド、ビッグ・ブラインドと呼ばれるプレイヤーが続く。

 彼らは、手札ハンドを二枚配られた後に、必ずベットしなければならない。

 スモールは規定枚数の半分。ビッグは規定枚数。


 そして、他のプレーヤーが、ベットした場合、場のチップ額が揃わないとゲームは進行しないということ。

 その途中で、続行か降りるフォールドかを決める。むろんチップの上乗せレイズベットもできる。コールは同枚数のベット。チェックはパスだが、誰かがベットすれば使えない。


 最後、ショーダウンで一番強い手のプレーヤーが総取りとなる。

 10、J、Q、K、Aのストレートフラッシュがロイヤルストレートフラッシュと呼ばれ一番強い。ちなみに一番弱いのはハイカード。お互いに何も揃っていない場合は、手札の数字が多い方が勝ちになる。

 役では、ワンペアが、最弱。


 そしてまあ、ブラックジャックは足して二十一になれば良い。

 だが、2から9までは、そのままの数字。10、J、Q、Kはすべて10点。

 Aは1点でも11点のどちらでも可である。


 まあ最近、町の酒場で簡単なブラックジャックが大流行りらしい。

 むろん賭けありだ。


 

 順調な副業と、串焼き。

 マジックは、最近サイコロ積みダイス スタッキングが受けている。

 これは、練習すれば誰でもできる。

 ただ俺がやれば、積み上げから、ダイスの数字が揃うところまでやる。


 こういう単純で誰でもできそうなものが、以外と受けが良いようだ。

 ショーの最後に、コツを教えながら、客に積ませると、サイコロもカップも売れるというものだ。

「ふっふっふ」


「オネスティが悪い顔してる……」

 いまカール達は、薄いコップを作っている。

 足ふみ式の旋盤を造って、それで木を削っている。


 足で踏み板を踏むと、重りが付いたはずみ車が、回転を維持する。

 昔の足ふみミシンの構造を利用。


 この世界の職人が、苦労している加工を、一気に終わらせる。

 このカップもダイス用じゃなく、普段使いに欲しいとよく言われる。

 酒場や飲食店から、欲しいと注文が来る。


 そして、ニクラス達はすっかり居着いた。

 ありがたいことに、意外と、ニクラスは戦闘面では強い。

 たまに変になるけれど。


 身内贔屓が異様に強く、性格が、随分おかしいし。

 当社比で壊れていると思うけど。

 まあ、仲間思いという事で……

 村で暮らしていて、色々とあったのだろう。



 そうそう、あの武器屋で絡んできた奴達。

 あの日の夕方、家まで付いてこようとした。


 どうしようかと考えていたら、まず矢が飛んできて、手前に居た男。

 無精髭を生やして、変な嫌らしい顔をした奴。

 そう、ジャンナに股間を蹴られて、死にかかっていた一人。

 そいつの胸に、スコンと、突き刺さった。

 革の胸当てを着ていたようだが、容赦なく突き通った。


 そしてまあ、次々と……

 矢が、奴らを容赦なく撃ち抜く。


 犯人は、エステリ達が心配で見に来たニクラスとクレイグ。

 彼らが、こんなに矢が上手いとは知らなかった。


 とりあえず、彼らはあっさりと殺されて、いつもの様に山に埋められた。


 そう、彼らはあどけない笑顔で、躊躇無く淡々と人を殺す。

「奴らは盗賊と同じだよ。付け狙ってきた以上、身を守るには先に殺るしか無い。殺されてからじゃ、何もできないからね」

「そりゃそうだ」



「そういえば、ギルドで話を聞いたけれど、最近酒場という酒場でトランプが流行っているらしいよ」

「売り上げが良いからな。もう何セット作ったのかわからない」

 一セット、銀貨一枚。

 イメージ的には、三千円から五千円見当かな。

 安い宿の一泊分。


 金貨は十万くらいだけれど、銀貨百枚が金貨一枚だからよく分からないんだよね。

 でも、金貨で払ったりすると、泣きながら銀貨でおつりをくれる。


 物によっては、金貨一枚分で買うより、銀貨九十枚分の方が多かったりする。

 そう、結構雑。


 そして必ず湧いてくるが、マジックのリピーターは、目付きが怪しい。

 何とかして種を探そうという意欲がすごい。

「あいつ、トランプで負けが込んでいてさ、何とかしようと必死なんだ。この前はカードをすり替えて、袋にされていたぞ」

 気にして見ていたら、そっと教えてくれた。


 そして、そっちが気になり、出すときに金貨と銀貨を間違えた。

 金貨が消えて、出てきたときには銀貨。良くあるネタだ。それはそれで受けたけどね。


 最近やっと手がなじみ、棒の色を変えたり色々とし始めた。

 コップに、布を突っ込み、水が出たり、色が変わったり。


 ジャンナが横で串を焼いていて、お尻を触ると「ナニをすんのさ」そう言って剣が振られ、俺の首が胸まで落ちるとか。当然ジャンナに許可を得て、打ち合わせ済みだ。

 これは、意外と受けた。

 落ちた瞬間に、頭を両手で掴み、何もなかったように戻すのが肝だ。

 鎧がそもそもある世界。小道具を作るのは楽だった。


「さて、ある程度稼いだ。次に行くかぁ」

「そうね」

 あの売られた六人も、一応仲間になったために、また人数が増えた。

 ただ、一番上でも十歳。下は七歳のため、お手伝い兼お勉強をさせている。

 劇団でも作ろうかと思う、今日この頃だ……


「おお、ロミオ。あなたはなぜ口が大きいの?」

「それは、お前を食ってしまうからだぁ。ぬふふふっ」

 フージコちゅあん…… 何か違う……

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