第5話 事例② 女王様の逆転人生
お花屋さんになりたかった。
今回の依頼人である佐藤敏夫さんの奥様は夢があったそうです。
けれども、その事だけで風俗店に勤務していると言う結論に導いてしまってもいいのでしょうか?
「と、とにかくわかりました。今回の調査結果を持ち帰り、妻と話しをしてみます」
「はい」
「太宰さん……同じ女性としての立場でお答え頂きたいのですが、夢を叶える為に――風俗店で、その……働くと言う事はあり得る事なんでしょうか?」
「……わかりません。価値観は人それぞれですから。それから……これは一個人の考えとして聞いて下さい。奥様が風俗店に勤務する事になり、現在も働いていると言う事実の裏には、そもそものきっかけ、継続した理由……ましてや結婚してからも継続していた……様々な要因があると思います。但し、夢を叶える為と言うのも要因の一つであると個人的には思います」
「…………なるほど。ありがとうございます。とにかく、妻にこの事実を突きつけます……」
◆◇◆◇◆◇◆◇
※以下の話は全て、実際に私が話を聞いた女性の人生です。
ある派遣型風俗店に勤務していた、源氏名――マリさん22歳は身長165cm体重60キロ――ややぽっちゃり体型だったそうです。そして、前職はSMクラブの女王様……実際にそう言う職業も存在するのです。
どうでもよい事ですが、SMクラブと言うのはお客様がプレイルームに入室するとまず「いらっしゃい。とりあえず土下座しなさい」と理不尽な罵倒と併せた往復ビンタから始まり……失礼致しました。この話があまりにも面白かったのでつい……。
話を戻しましょう。
そんなマニアックな風俗店も、折からの不況の波に飲まれ、来客も減少。マリさんも同じ風俗のデリバリーヘルスに転職をしました。
しかし、店舗のキャスト紹介のホームページでは修正を加えたとは言え、ぽっちゃり体型なマリさんはなかなか指名が入らず、仕事がゼロ……つまりお茶を引く事が増えていきました。
彼女は悩みました。
ダイエットも決心しましたが、すぐに痩せられる物ではありません。
そして、考えた結果――見た目駄目なら、プレイ内容で他の女の子と差別化を図り勝負しよう――
翌日、ネットショップで大量の大人のおもちゃを購入。どんな物かですか? そんなのは想像して下さい。
それからと言う物、出勤の際は貴重品などを入れるハンドバッグとは別に、後にマリさんの七つ道具と店舗内でも伝説になる、黒いバッグを持っていく様になりました。
「こんなのあるんだけど……使ってみる?」
そんなマリさんの問いかけに、多数の男性客の心と体を掴みました。
キャストの女の子のほぼ全員が大人のおもちゃNGである事、男性でさえも見た事がない、多種多様なアイテムにマリさんは指名を増やしました。
そして週三回、生理周期一週間の勤務を除くと平均月10日勤務で50万を稼ぎ、ランキングベスト3常連の人気嬢になりました。
最高では90分コースを一日5本。
90分の場合は基本25000円。
女性の取り分は13000円。リピーターなら本指名料2000円がそのまま。
つまり、13000✕5+2000円✕5――75000円を一日で稼いでいたのです。
そして、そんなマリさんも3年後……お客様であった男性の一人と結婚して、風俗店を卒業。貯めたお金と旦那様の経済力も相まって、現在は大阪の一戸建てで幸せに暮らしています。
もちろん、これは稀なケースではありますが、元風俗嬢である事を旦那様が容認し幸せに暮らしている方も世の中には存在しています。
私が風俗の女性を否定しないのは、色々な人生があるからなのです。
さあ、依頼人の佐藤様の今後はどうなるのでしょう。
報告まで、少し待ちましょう。
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