ウチの娘が最近おかしい

 最近、ウチの娘の海の様子がおかしい。

 私がそう思い始めるようになったのは、夏休みが明けてから一、二週間ほど経った週末のある日のことだった。


「ただいま~」

「お帰りなさい。今日はいつもより少し遅かったけど……そんなに楽しかった?」

「えっ!? あ、い、いや、別に普通、だけど……」


 その時点で、ん? と思った。

 これまでの海の場合、私が先程と同じことを言ったとしても、


『いや、別に。いつも通り』


 など、結構素っ気ない反応を返されることが多い。

 それについては年頃の娘なので、寂しさはあるけれど、これもまた子供の成長ということで特にうるさく言うつもりはなかったのだが。


「……えへへ、ばーか」


 さりげなく海の様子を観察していると、スマホをいじりながら、海が一人にやにやとして、なにごとか呟いている。家にいる時はだいたいスマホを操作していることが多いけれど、いつもは退屈そうな顔を浮かべていることがほとんどだったのに。


「海、なんだか楽しそうね。流行りのゲームかなにか?」

「ふぇっ!? ん、うん。まあ、そんなとこ……わ、私、部屋にいるからっ」


 何をしているのか知りたくて聞いてみるものの、私に見られているのに気づくと、海は逃げるようにして自分の部屋へと引っ込んでいってしまう。

 隣の部屋にいる息子の陸に聞いてみると、最近バタバタと物音が騒がしいらしく、また、普段絶対にやらないジャンルのゲームを借りにきて熱心にやっているらしい。

 新しく楽しいと思えるものが見つかったなら、ゲームでもなんでも、学業に支障がない範囲なら大いにやってくれて構わないのだが……これだけの変化となると、まず間違いなく、夏休み明けに何かあったことは明白だ。

 夕食時、私は娘にずばり問いただしてみる。


「ねえ、海」

「なに?」

「彼氏でも出来た?」

「!? っ、げほっ……」

「あ、もう、なにやってるの。ほら、布巾あるから、これでテーブル拭いて」

「ども……っていうか、お母さん、いきなり変なこと訊かないでよ。びっくりするじゃん」

「あらそう? ごめんなさいね」


 ……なんというベタな反応だろうか。海は飲んでいたお茶を盛大に吹いた。


「べ、別に彼氏なんかできてないって。告白はまあ、何度かされてるけど……みんないまいちピンとこない人ばっかで」

「じゃあ、今回の人はピンと来ちゃったんだ」

「だ、だからっ! そういうんじゃないって!」

「そう? あなた、ここ最近、金曜日は特に帰ってくる時間が遅いじゃない? だから、お母さんも心配しちゃって」

「それはごめん……えっと、新しい友達が出来たのは事実だけど、お母さんが心配するようなことはないから。そこは信用して」

「わかったわ。あなたがそう言うなら、お母さん信じる」

「うん。ありがとう、お母さん」


 あまり追及するのも海に悪いのでここまでにしておくが。

 うちの子をこんなに可愛い生き物にした『友達』とやらは、一体どんな子なのだろう。

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クラスで2番目に可愛い女の子と友だちになった【限定公開SS】 たかた/角川スニーカー文庫 @sneaker

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