クラスで2番目に可愛い女の子と友だちになった【限定公開SS】
たかた/角川スニーカー文庫
クラスのNo.2の様子が最近おかしい
最近クラスメイトの朝凪海の様子がおかしい。
私、新田新奈がそう感じたのは、2学期に入り、文化祭も近づいてきた10月のこと。
表向きには、そう変わらないように見える。容姿はもちろん、誰にでも人当たりがよく、気配りも出来て、かといって自ら目立ちにいくようなことはなく、ウチのクラスのアイドルである夕ちん――天海夕の隣で陰に徹している。所謂No.2というやつだ。
入学当初は、正直、あまりいい印象を抱いてはいなかった。
普通に話していても、ふと、どこかで目が笑っていなかったり、退屈そうな顔で全然違うところを見ていたり……とにかく、そういうところで彼女のことはなんとなく苦手にしていた。誰とでも分け隔てなく優しい夕ちんと違って、朝凪とは仲良くできないかも、と。
しかし、ここ最近、その印象が変わりつつあって。
「……ぷっ」
ある日の朝のHRのこと、かすかに吹き出すような朝凪の笑い声が聞こえてきた。
多分スマホで何かをやっているのだろうが、今までそんな不真面目なことを学校でやっているところを見たことがなかったから、彼女の油断した姿は、私にとってそれなりに新鮮な姿だった。
ちょっとだけ気になった私は、先生がこちらを見ていない隙をついて、自分の席のすぐ前にいる朝凪の肩をつっついてみることにした。
なにやってんの? なんか面白そうなヤツなら私にも教えてよ――私的にはそういう軽いノリでコソコソ話をしようと思っていたのだが。
――びくんっ‼
「! おわっ――⁉」
彼女の肩に指が触れた瞬間、すっかりと油断しきっていたのか、朝凪の体が軽く飛び上がったのだ。その拍子にガタンガタンと彼女の机や椅子が派手に床を鳴らすから、私もついそんな声が出てしまう。
当然、教室中の視線が、朝凪のほうへと向いて。
「あ、すいません。急に新田さんに後ろから脇腹をくすぐられちゃったからびっくりしちゃって」
「は? いや、私はただ肩をちょっとさわって……いぎっ」
「だ よ ね? 新奈?」
「うぎっ……は、はい。すいませんでした」
有無を言わさぬ彼女の迫力で、私はそれ以上何も言えなくなった。あと、ついでに手の甲を思い切りつねられていて、それがめっちゃ痛い。
今までスマートな立ち振る舞いばかりだったのに、ここまで強引な手を使う子だったとは意外だった。そして、さらに。
「ねえ、新奈」
HR後、つねられて真っ赤になった手の甲を冷やそうとお手洗いへ行くと、私のあとをついてきたのか、朝凪が後ろから声をかけてきた。
「な、なに?」
「……その、さっきはごめん。私も久々にテンパっちゃって、加減できなくてさ」
「いや、加減の前につねんなし……ところで、朝凪にしては珍しいけど、さっきコソコソなんかやってたよね? なにしてたん?」
「! えっと、それは、その……」
私の問いに、彼女はなぜか頬をみるみると赤く染めてからぼそりと呟く。
「ひ、ひみつ……」
しおらしい彼女を見て、少しは仲良くできそうかも、この時の私はひそかに思った。
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