「こちらこそ、ルーネさん!」

 色々あったのだが。


 俺は人生初めてパーティーてのに入った。


 愉快なメンバーを紹介しよう。


 パーティーメンバーは知りあいばかりだ。


 リーダーであるリューリア、主人公さま。


 スカーレット・レッドナイト嘘緊張体質。


 それと──


「よろしくね、リドリーさん」


「こちらこそ、ルーネさん!」


──太ももムチムチの露出だ。


 ルーネ・ドラゴンジュール。


 ミニスカみたいな服装はすごくふといももがむちむち言っていそうであり、上半身のいっそ華奢なほど細い体型と比べればピラミッド構造だ。あと賓乳だ。すごい……どっしりしてる。


 髪は金髪で長い三つ編み、あと耳が長い。


 そりゃそうだ。


 ギルヴァンでの有名人だ。


 竜の巫女、ドラゴンジュール家のエルフ。


 その名前を聞けばギルヴァンでも屈指の、魔法の巫女さまとして思い浮かぶような人物だ。だが名高い『迫撃法兵ユニット』は持ち合わせていないようだ。


「ルーネ!」と主人公リューリアの声。


「はーい。リドリーさん、また後でね」


「同じパーティーだよ……ルーネさん」


 ルーネは、リューリアのもとに小走り。


 ルーネとリューリアは少し話していた。


 リューリアと目があったすごい睨みだ。


……厄介なことになっちまったじゃあないの。


 リューリアのパーティーは臨時の俺が入るというなら四人編成。だが、実際にはスカーレットと俺、リューリアとルーネの二人組に分かれている。


 ツーマンセルなんて高尚じゃあねぇ。


 仲違いしちまっているんだ。


 俺とリューリアが、だ。


 俺はリューリア好きだ。


 リューリアはギルヴァンの主人公だしな。


 ただリューリアは……違うだろうなァ。


 俺は、リューリアのパーティーメンバーであるスカーレットと懇意にした。つまりはパーティーメンバーであるスカーレットを引き抜きしようとしているのも同然だ。


 実際、俺のとこにスカーレットがいる。


 リューリアが不機嫌なのはもっともだ。


 しかし……仲良くしていないと困るのだ。


 俺は冗談抜きで弱小能力値なんだからな。


 強い奴に見捨てられると死んじゃうのだ。


 俺は不機嫌な様子のリューリアを見た。


 主人公リューリアのパーティーにくっついているなら、危険性は大きく下がると甘く考えていた。


 しかし……ギルヴァンとは違うなやっぱり。


 珍しいパーティーメンバーだ。


 俺がギルヴァンを始めた頃ならできない。


 リューリアのパーティーメンバー、スカーレット、ルーネを加入させるには難しい状況を解く必要があるのだ。……スカーレットなんてデバフしかないしな。


「村に従士が多いね、リドリー」


 と、俺の隣のスカーレットが近づいてくる。


 最近、スカーレットが妙に猫っぽい。


 スカーレットに尻尾があれば巻きついてきそうだ。


「あぁ、そうだな。騎士団と言っても構成員はみんな征伐騎士てわけじゃない。騎士の何倍も従士がいる。村に配置するのは従士にして、坑道へ騎士を集めているんだろうな」


「リドリーて妙に詳しいよね」


「そうか? スカーレットは従士相応の立場だったか。騎士団にも詳しいんだろうな」


「ちょっと詳しいかな」


 と、スカーレットは、むふー、と自慢気だ。


「スカーレット。ルーネてどんな女の子なんだ?」


 村にいる従士は五〇人か。


 騎士が二〇人ほどなのでそんなもんだ。


「ルーネ?」


「随分と良い娘じゃないか。俺がリューリアさんの不幸を買っているのを庇ってもらってる」


「良い娘だよ」


「ルーネてどんな感じなんだ、普段」


「よくは知らないかな。ご飯はいっぱい食べてるよ」


「そりゃそうだろうな」


 と、ルーネの栄養満点な太ももを思いだす。


 その時だ。


 俺の心のマリアナ姫がささやいた。


「リドリーくん。このパーティーは何かおかしい」


 マリアナ姫、おかしいですか?


 少しギクシャクしているのそうだ。


 だが原因は俺だろう。


 それか、スカーレットの緊張体質で、打ち解けるのが遅いのかもしれない。でも、最初のうちはそういうもんだ。


 ゆっくりと仲良くなればいい。


「リドリーくん!」


 と、マリアナ姫に、喝!、された。


「リューリアちゃんのパーティーをよく観察して! でないと従士団との間で取り持つのは誰になるか注意しないと痛いめにあうよ!」


 そんなバカな。


 と、マリアナ姫といえど疑ってしまう。


 主人公リューリアなんだぞ。


 スカーレットから話も聞いた。


 リューリアてのは熱血社交的好青年だ。



「学園のガキが……」


 従士らの怒りの気が満ちていた。


 なんでこうなるのさ、もう!!


 俺はリューリアと従士らの間に滑りこむ。


 スカーレットの話じゃあリューリアて社交的で人の輪を大切にするムードメイカーじゃないのか!?


 リューリアが従士を挑発してたぞ!!


「リューリアさん、謝ってください!」


 と、俺は懇願した。


「退け、リドリー。学生だからと言えども、従士への侮辱は許せん」


「失せろリドリー。私が始めたことだ、お前の手を借りずとも自分でやれる!」


「リドリー聞いていただろう。このガキが俺たちに向かって、村で安楽する怠け者で恥知らずだと吐いたんだぞ」


「ご存じ、ご存じ、承知のうえです。その上で寛容な御心を持っていただきたいと無茶を言わせてください従士さま」


 鞘の先端が床を叩いた。


 荒れた場が、鎮まった。


 やったのは四人の征伐騎士の一人だ。


「全員揃ったので会議を始める!」


 と、俺は見渡した。


 俺の家なのに嫌な感じだ。


 腹の内側から緊張してむずる。


 集まっているのは勇者一行、従士一行。


 村の勇者隊と四人の騎士がオブザーバー。


 あと、おまけでグリフォンの姫さまもだ。


 グリフォンのレギーナさまは外で待機だ。


──で!


 俺の家で、階級の高い征伐騎士四人とレギーナさまの威光で、俺ことリドリー・バルカが音頭をとるまではいいが……。


「現状を整理します。坑道から現れた魔物による被害者は、山菜とりの女性二名、狩りをしていた男性一名だ。幸い、死者はいない」


 だが、と、俺は参加者を見た。


 従士に学生に村の小娘たちだ。


「村長は魔物が村の脅威だと叫んでる。俺もそう思う。臆病な村長だが間違いは言っていない。そこで魔物のモグラ叩きには、魔人の標本を搬送次第、征伐騎士が坑道へ増波される予定だ」


 そして、と、俺は話を続けた。


「我々は村の防御を高める。具体的には、防護柵の設置、防衛に不向きな森林の伐採、あとは地形の測量もだ。尾根を切れとは言われていないが、壕を増やし、縄張りを張って村に魔物が取り付きがたくする。要するにみんなで陣地作りだ」


「なぜ従士がかりだされる?」


「村長曰く、魔物の脅威の芽を残されては困る、残すようなら魔人の搬送を拒否すると言った。つまり魔物退治をしないと魔人は渡さないてことだ」


「そっちの連中は?」


「村の勇者隊は、村長からのお目付け役。大人は魔人の標本作りと仕事で忙しいからな。で、こっちの学生諸君は、学園側を蚊帳の外にしない配慮だ。俺がいるのは知らん」


 反応はあんまりよろしくない。


 まあ村人に命令されたら立つ瀬がない。


 従士さまだからな。


 俺は四騎士にうかがいを立てた。


 今、貴族で最高階位は四騎士だ。


 四騎士のリーダーだろう、うなずいた。


 いや全然わからんが任された感じかな。


「はい! はい! みなさん!」


 俺はみんなの注目をかき集める。


 空気感は最悪、超仲が悪いな!!


 主人公リューリアは、俺にも、従士にも、イライラしている雰囲気だ。少し焦っているのかもしれん。


 リューリアのパーティーと従士は別だな。


「さて、まずは雑草刈りから始めようか」


 みんなが嫌そうな目で心が一つになった。


 窓の外では、レギーナさまが遊んでいた。


 最近、村の勇者隊に加入した、豪華絢爛な鎧を着た人間がもてあそばれている。


 その後ろは雑草というには凶悪な雑木林だ。

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