第30話怪獣大決戦
真っ二つに折れた
「いや~、本当に凄かったなぁ、化物同士の戦いは迫力が違う」
最初に桜さんに刀の調達を頼まれた時、魔法をぶった斬ると説明されて
「結構行けそうな気がするんだよね、その代わりとびっきりの刀を用意しな」
桜さんにそう言われて天下五剣の一つ
朝の爽やかな空気を台無しにする気配を纏って仁さんと桜さんが向かい合う。桜さんによれば毎朝のボケ防止の運動らしい。
いつもは木刀での試合形式だが、今朝はちょっと事情が違う。
「仁、今日は魔法を使って戦ってもらう、代わりにあたしも真剣を使わせてもらうがね」
桜さんから軽く刀の説明がなされる、その言葉に少し動揺を見せる仁さんだが、ちょっと考えてから小さく頷いた。
「まぁ、サクラさんなら大丈夫かぁ」
あ、いいんだ。軽いなぁ、この前も東堂のお嬢ちゃんとも遊んでたしな、けどそれを見て桜さんが興味を持ったんだからしょうがないか。
「じゃあ、行くよ!」
ボウゥ!
仁さんがいきなり右手から火球を宙に浮かせると、躊躇なく桜さんに向けて打ち出した。
ちょっ!少しは戸惑う素ぶりを見せたらどうかな、それだけの信頼関係が二人にはあるんだろうけど、見てるこっちはヒヤヒヤするってーの!
「ほう」
迫り来る火球を前に嬉しそうに抜刀の構え、えっ、もう抜いてる!見えなかったんだけど!!
真っ二つに斬られた火球が桜さんの後ろで消滅する、本当に斬れたんだ!
「今のでどれくらいだい?」
「そうですね、猪くらいは狩れると思いますよ」
「じゃあ、今度は私を仕留められるくらいの力で頼もうかね」
「えぇ、危なくないですか?」
仁さんが遠慮がちに桜さんの頼みを断ろうとする。いや猪狩れる威力でも人は殺せるんじゃないかな?
「こんな程度斬れて当たり前だろ、それじゃこの刀を用意した意味がないんだよ」
桜さんの言葉にポンと手を叩く仁さん。
「あぁ、そう言う事ですか、刀の試し斬りがしたいんですね、でも魔法を斬る発想が凄いですね、プラーナじゃ剣士でも魔法は避けるか流すかのどっちかですからね」
「へぇ、流す奴は居るんだ」
自分の考えが正しいと証明され嬉しそうに笑みを浮かべる桜さん。だが仁さんの次の言葉で目の色をを変える。
「まぁ、私は流された事も避けられた事もないですけどね」
「……じゃあ、ちょっとは本気出してもらおうかね」
ダンッと音がしたかと思えば桜さんが仁さんの前に現れる、おぉ!
そして見えない速度の抜刀が仁さんに襲いかかる。
バギギンッ
「おわぁ!びっくりした結界が砕かれた」
仁さんの周りの空気が氷みたいに砕けてキラキラと朝日を反射する、えっ、あの仁さんの防御結界を一撃で、あれってモース硬度15はあったのよ!
「いいね、今のは結構本気で打ち込んだんだけど避けられたね」
納刀した桜さんが愚痴る、3m後方に避けた仁さんの顔つきが変わる。
私には仁さんがどうやって避けたのかも見えないんだけど、後で撮った画像をスローで見ようと決めた。でないとこの勝負は驚くばかりで解析が出来ない。
「結界が砕かれたのは初めてです、ちょっと聞きますけど、この星のご老人って皆んなサクラさまみたいに強かったりします?」
「私は田舎もんだからよう知らんが、都会に行けば私くらいのは何人か居るかもしれないね」
「……怖い星だなぁ」
いや、桜さんみたいのなんか世界中でも3人もいないから!この嘘つき老人め、えっ、居ないよね?
「最近の若いもんは、剣術とかやんないからね、本家には何人か私を負かすお人もいるにはいるが」
「「怖い星だなぁ!」」
仁さんと声が被った、以心伝心、私達お似合いのカップルね。
「まぁ、遠慮はいらないから仁も普通に戦いな」
「では」
ゴシャッ!
仁さんが前に出した手のひらを下に向ける、それだけで桜さんの立っている大地がベコリと陥没する。
「ぐっ、重力魔法か」
ズッ
桜さんが今度は空に向かってゆっくりと抜刀する、密度を増した大岩みたいな空気が逆袈裟に真っ二つに斬られる様を幻視した気がする。
重力魔法を斬られると仁さんが声を上げる。
「流石、サクラさま!この前の鉄の虫はこれで足が折れたのに!」
仁さんもあの威力の魔法をご老人に向けて放つとは容赦ないな、それにしても魔法って詠唱とかないのね、漫画とは違うわぁ。
「次、行きます!」
パンッと両手を合わせるとバチバチと仁さんの身体に放電による火花が発生する、今度は雷撃系か?
合わせた両手を桜さんに向けて突き出す。指先からプラズマ化した雷がバリバリと音を立てる。
バチィーーーーーーーーーーッ!!
「くうっ、こ、これは」ブンッ
スパーーーーーーンッ!
電撃を受け止めた
「す、凄い!私の雷撃が斬られるなんて、なんと言う凄まじい剣技!」
なんか凄く嬉しそうな声なんですけど、もしかして仁さんも戦闘狂?
本当に怪獣大決戦だなコレ。
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