第31話必殺の居合い
「いやこれ、本家の人間でも厳しいな」
構えを取った桜さんが愚痴をこぼす、人類最強の一族と噂の武田家を持ってしてもそんな感想か、いよいよ持って地球の危機かもしれないな。
「じゃあ、危ないと思ったら今度は避けてくださいね」
仁さんが嬉しそうに両手を前に突き出す。右手から雷撃、左手から火球が竜巻のように混ざり合って桜さんに向けて襲いかかる。ピッコロ大魔王みたい。
「ハァッ!!」
桜さんが気合と共に抜刀、仁さんの魔法に当たった瞬間動きが止まる。
だが今度は先ほどと違って斬り抜くことが出来なかった、ミシリと言う音が聞こえたが雷撃を纏った火球は仁さんの後ろ左側の林に打ち返された。
バキバキバキバキバキ!!グワシャ!
何本かの大木が薙ぎ倒され、地面を
「ふぅ、今のでどれくらいだい?」
「大型の魔獣くらいは消し飛ばせると思って撃ったんですけどね」
「ふふ、じゃあ魔獣くらいは私も倒せると思っていいね」
「ほんと、サクラさまには吃驚ですよ」
「でも、もう刀が限界だ、残念だけどこれでお終いだね」
言うやいなや桜さんの姿が消える。
と思ったら次の瞬間には仁さんの目の前、神速の居合い。
「ヒッ」
今度は仁さんの防御結界が砕けないで
後方に飛び避ける仁さんの首筋から軽く血が舞い散る、掠った。
パキン!
振り抜いた姿勢で止まった
「ちっ、折れちまった。この刀でも耐えられないのかい……こいつで持たないんじゃどうしようもないね」
桜さんが真っ二つに折れた
確かにこれ以上の
そう考えた後、二人に視線を戻せば先ほどまでの緊張感は霧散していた。
「はぁはぁ、朝から死ぬかと思った」
仁さんが息を荒くしながら自分の首を撫でる。
「ちょッ、サクラさま。今のもうちょっとで首切れるとこだったんですけど!」
「ちゃんと避けれたじゃないか」
「凄い殺気を感じたんですど」
「こんな婆さんに向かって、大型魔獣を倒せる威力で魔法を撃った奴が何言ってんだい!おあいこだよ」
「えぇ〜、私はちゃんと致命症にならないように撃ってますよ〜」
カチン
「仁、今度は首落とされても死なない魔法を考えておきな」
「そんな治癒魔法はないですよ〜」
桜さまが話はここまでと折れた刀を鞘にしまう、つまみ上げた折れた刀身も鞘の中にカランと落として私に押し付けてきた。
これ代金請求してもいいかな?億いくけど。
何にせよトライデントとしては貴重なデータが沢山取れたから、良しとするか。
同日ある教室にて。
恋愛にキッカケは必要だ、それが周りからはこのヘタレがと言われるような理由でも。
「さて、とうとう仁先生の連絡手段を手に入れたぞ、我々は!」
「くっ、長い道のりであった」
「そうか?」
放課後の教室に仁のクラスの女子が何人か集まり、妙な盛り上がりをしてらっしゃる、それほどに現代の女子高生にとってスマホの重要度、依存度は高い、誰が出るかわからない家の電話にかける勇気はない、かと言って直接学校で誘うには相互監視の他生徒の目が多い、お気軽に個人で誘うにはスマホは必須なのだ。
「それより、どう攻める?同棲までしてる金持ちのお嬢様ネーチャン(赤いスポーツカーの派手女)や愛人の
このグループのリーダー格の三国が話を切り出すと、桐生が呑気な声で応えた。
「あれ?愛人は多摩川って女生徒じゃなかったっけ」
「いや?仁先生のスマホで見たメールの文面から、本気度は図書館女の常滑の方が断然高い」
三国に同意するように唐津が頷く。
「確かに、あのあざとい自撮り画像には奴の本気を感じた、何だよあのエロさは!」
「仁先生には普通にスルーされてたけどな」
「ビッチ…」
常滑へのディスりが始まろうとするが三国が待ったをかける、時間は無駄に出来ない。
「で、お前らに聞くが。共闘じゃなくて抜け駆けはありか?」
「「「「「…………」」」」」
「おい!なんで目を逸らす」
誰もが三国と目を合わせない、この時点でクラス内で共闘の可能性は限りなく低くなった、淑女協定など所詮はファンタシーなのだ。
「だってね〜」
「好きな人は分け合えるモンでもないしね〜」
「ふっ、愚問だったな、時間を無駄にしたか」
三国がパンと両手を合わせると声を張った。
「ではこれより休戦協定を解除する、結果がどうなろうと恨みっこなしだからな」
「「「「「おう!」」」」」
恋愛は普通は先着順、真っ先にゴールした者が有利なのだ、すでに1歩も2歩も出遅れてる事に集まる前に気付け。
ポフッ
家に帰った三国が、ベッドの上であぐらをかきながら放り投げた自分のスマホを真剣な顔で見つめる。
「やっぱエロい自撮り送るか」
恋愛経験が浅いだけに簡単に迷走する女子高生であった。
一方の仁と言えばのんびりと風呂に入っていた、脱衣所ではひっきりなしに着信音が鳴っていた放課後からずっとである。
ピコンピコンピコンピコンピコン♪
「仁さん、なんかずっとスマホ鳴ってますよ〜」
何故か脱衣所に居る
「あぁ、今日私の生徒達にスマホを持ってる事を知られまして」
「あぁ〜、そりゃこうなるか、でも仁さんいつも電源入れてなかったよね」
「生徒達にスマホの電源はいつも入れておくようにと念入りに注意されたんですよ」
「あはは、若い子はがっつくなぁ〜、若い若い、けどお姉さんの方が立場的には有利なのよね」
最後の方は声が小さくて聞こえなかったが、実の言葉に仁が首を傾げる。
「着信拒否の設定してあげましょうか?」
「?、いや生徒達と連絡手段はあった方がいいので大丈夫ですよ、あ、でもこのチャクシン音って消せます?」
「ふふ、お任せあれ♪」
ニヤリと意地悪く笑う実に風呂場の仁は気付かない。
フェラーリのエンジン音が深夜の川中島古戦場公園の駐車場に響く。先客として1台のバイクが停まっており、バイクに寄りかかった女性が紫煙を吐き出した。
バタン
「何よこんな所に呼び出して、私仁さんのお世話で忙しいんだけど」
「何、羨ましい事言ってんのよ!それより武器屋のあんたがどうやって仁先生の家(武田家)に潜り込んだのよ!」
「えっ、普通にプロポーズしたから」
「ぷっ、プロポーズぅ!」
ガクリと膝をつく李 蓮花。
「お、押しかけ女房……日本の女はいつからそんなに積極的になったの?」
李 蓮花はポンコツ学年主任の顔を頭に浮かべ旋律を覚えた。しばらく蹲っていたが仁との幸せな未来のための最大の障害はコイツだったのかと認識して実を睨んだ。
「な、何よ」
「いいだろう、お前を最大のライバルと認めてやる、覚悟しておけ」
李 蓮花は一方的にそう言ってバイクに跨るとエンジンをかけた。後に残された実はポカンとした表情で去っていくバイクを見つめる。
「なんなのよアレ?」
仁の嫁の座に現在一番近そうな(物理的に)女が首を傾げる。
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