第28話 闘う事で仲良くなるなんて迷信ですよ
日本の歴史において最長の約400年間の長きにわたって存在した平安時代(794〜1185)。
400年、えっ、そんなに長く続いていたの、一番長かったので江戸時代だと思ってたわ!それ作者も思い込んでいましたけど江戸時代(1603〜1868)って265年でその次の3位は室町時代(1336〜1573)の237年、縄文?弥生?知らんがなそんな昔の。やっぱ織田・秀吉・家康のキャラが濃すぎるせいで平安って微妙なのかも。
けどそんな断トツに長かった平安時代だけに有名人も数多くいるのも事実だ、桓武天皇が平安京(京都)に都を移し、鎌倉幕府が成立するまで、33人もの天皇が存在し天皇家をルーツに持つ西の平家、東の源氏なんて名門勢力が出来て、平将門さんなんて末に怨霊にまでなっちゃう有名人までもいた。
まぁ、最後は平家の
ああ、清少納言(枕草子)や紫式部も平安時代(990〜1000年代)ですね、源氏物語はちゃんと読んだ事ないけど。
仏教も盛んな時期で坊さんでは最澄(比叡山)や空海(高野山・密教)、末期には西行法師がホムンクルス(人造人間)を作ったなどと怪しげな話もある、反魂の術で作ったはいいが、何が気に入らなかったのか高野山の奥に捨てちゃったらしいので高野山に行けば運良く出会えるかもしれないぞ。
いかんいかん、つい話がそれたがこの平安時代で一番オタク心をくすぐるのはなんと言っても陰陽師、安倍晴明だろう。呪術廻戦とか人気あるしね。あれ?呪術って陰陽道の1種でいいんだよね。
その活躍は数多くの物語にもなっており、その力はまるで仁のような魔法使いのようだ。
仁はこの安倍晴明が、プラーナに転移して東の国を作ったのではないかと図書館で今昔物語集を読んだ際に想像した、根拠はない、ただの感だ。
そのせいでこの世界の魔法は後世に伝わらなかったのではないかと考えると、この世界に魔法の概念がない事の説明になりはしないだろうか。
話は現代に戻る、陰陽師安倍晴明の土御門家の系譜をもつ東堂家、その時期当主とされている東堂理香子は今、武田家所有の裏山でなぜか仁と闘う事になっていた。
「くっ、近・貼・尖・蘇婆訶」
シュババババ
式を込めた紙吹雪が仁の防御結界に吸い寄せらせるように次々と貼り付く、その張り付いた紙吹雪が針のように伸びて内側に向けて突き刺さる、仁の結界をすり抜けての攻撃に、仁は笑みを浮かべて水属性の魔法を結界内で竜巻のように纏わせる。
「へえ〜っ、これは面白い」
「なっ!これでも届きもしないの!」
驚く理香子に、仁が諭す様に口を開く。
「いや、式神でしたっけ?聖霊系の魔法はプラーナでも東の国出身の人間くらいしか使いませんから、吃驚しましたよ」
「全然、吃驚してるようには見えないんだけど」
「聖霊魔法はプラーナで使われる物理魔法に比べると威力はどうしても弱いですから」
ちなみに仁の元いた世界のプラーナでは自分自身の魔力で自然物質に干渉して威力を出す方法が王道とされており、聖霊から間接的に力を引き出すのは発動時間や威力が劣るのであまり使われてない。精神干渉系の魔法では聖霊魔法を使う者もいる、仁が唐津に使用した記憶操作も聖霊魔法の一種だ。
逆に東の国では聖霊魔法が主流でそれなりの魔法師も存在している。
無駄に爽やかな顔でサラッとディスって来る、やっぱあいつ大嫌いだ。
「うぐぐ」
まるで授業を受けてるみたいだわ、東堂家時期当主のこの私が子供扱いとは。
人1人を殺すのでさえここまで難しいのにあいつは生身で簡単に都市壊滅レベルの魔法を使えるのよね、なによこの力の差は、格差社会を恨むわ。
「じゃあ、これならどうよ!」
8枚の札を投げると、前に突き出した掌を素早く動かして空中に文字を描く。
「開門、休門、生門、傷門、杜門、景門、驚門、死門、八門遁甲ォ!」
8枚の札が仁を中心に時計回りに光ながらグルグルと回る。
「ほぉ、これは危なそうですね」
「貼・閉・雷・蘇婆訶!」
理香子の詠唱で8枚の札から一斉に雷鳴が轟く、死角の無い8方向からの同時攻撃、理香子の持つ技の中では最大の殺傷力を誇る大技だ。
「けど、雷撃は私も得意なんですよ」
仁がパチンと指を鳴らすと先ほどまで中で水が渦巻いていた結界が帯電したようにバチバチと輝く。
パチン
小さな音を立てて理香子の雷撃が消滅した、沈黙が訪れる。
「お見事です、プラーナでも私以外の者なら当たったかもしれませんよ」
「私の八門遁甲がそのレベル!」
余裕綽々の爽やか笑顔がなんともムカつくが、これ以上は気持ちだけじゃ埋められない実力差がある、理香子は歯を食いしばって悔しがる。
「そこまで!」
立会人の桜が終了の合図を告げる。
「どうだい、東堂としては納得いったかい」
「これだけの力の差を見せつけられては、もう何も言えませんよ」
「いえいえ、東堂さんの魔法もとても興味深いものでしたよ」
「ケッ」
桜さんの家に戻ると武器商人トライデントの鹿島
「うーーーーっ、うぅ〜」
怪物男が実の猿ぐつわを優しく解く。大体なんで武器商人が桜さんの家にいるのよ。
「ひどいです桜さん、私も東堂家の陰陽術見てみたかったです〜、しかも仁さんとの魔法戦なんてプレミアムカードを見逃しました!」
「一応、東堂家とは長い付き合いもあるんでね、トライデントの本部長の立場にいる人間にはおいそれと見せられないよ」
「ぶ〜〜〜〜っ」
「まぁ、魔法戦と言っても私の魔法と東堂さんの使う魔法は体系が違うので、闘いにはなりませんでしたよ」
化物男が爽やかに見下してくる、そりゃ試合にもなりませんでしたよ、これでも陰陽師としては日本でもトップクラスなんですけどね。
拗ねてばかりもいられない、わざわざ桜さんに頼み込んで試合を申し込んだのだ、東堂家としてはこれから積極的に武田に協力せねば義理が立たない。
「て言うか、あんたのその魔力ってどこから出て来るのよ、個人であんな莫大な魔力を出せるわけじゃないんでしょ」
「へ、魔法師は基本、自分の体内で魔力を練るんですよ。私の場合は他の者よりは魔力を多く出せますが」
「あの魔力を個人で、……人間じゃない。いや人間じゃないのか」
「異世界人ですから」
ヘラヘラと頭を掻く怪物男、こんなのに手も足も出なかったなんて屈辱的過ぎる。
「へぇ、やっぱり仁さんの魔法って東堂から見ても凄いんだぁ」
実がお気軽に口を挟んでくる。
「ぐっ、完敗ですよ、完敗。試合にもならなかったわ」
「あ、さっきのって試合だったんですか?」
「ほらね」
実に同意を求める言葉で苦笑いされた。こっちは殺すつもりで技を出してたのに試合とすら思われてなかった、そりゃ反撃もしてこないわけだ。
「なんにせよ、この前はあんな事言って悪かったわよ、あんた位の実力があれば今後は文句言わないわ」
「東堂さん」
怪物男が私を見ながら目を輝かせる。
「今後は生徒達に被害が出ないように一緒に頑張りましょう」
化物男に手を握られる、うわっキモ!鳥肌たった!
ちょっ、桜さんそこで良かった良かったって感じで頷かないでくださいよ、武器商人も何ニヤニヤしてるんです!
「いいかげん、手ぇ離せやワレ!!」
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