第10話 保健の先生?
「今日から保健室の養護教諭をやらせていただきます、李
校長先生の横でペコリと白衣を揺らしながら頭を下げる、髪の長い女性。
隣の児島主任が舌打ちとともにボソリと呟く。
「中国人?」
中国?ああ、お隣の国の人なのか、見ただけで国がわかるのか、やるなぁ、児島主任。(多分名前からです)
私にはこっちの人種ってよくわからないんだよな、東洋人と白人黒人ぐらいしか見分けがつかない。
「貴方が武田 仁さんですね、同じ新任同士仲良くしましょう」
朝の職員会議が終わると李さんが私の所に来た、そういえば少し前に保健室に行った時に養護教諭がいなかったのはこの人の引き継ぎの為だったのかな。
「改めまして、武田仁です。お互い頑張りましょう」
差し出された李さんの右手、握手の習慣ですね、確か握り返せばいいんですよね。ん?
李さんの手を握ると意外と硬い手をしている、一瞬鍛え上げたプラーナ騎士団の連中を思い出した。
それにしても長くて綺麗な黒髪だ、こう言うのは日本では美人の条件の一つとして考えられているのだったな。
「とてもお美しいですね」
「…」
「へう!」
私の言葉に隣の児島主任が変な声を出す、どうしました?
「ありがとうございます、貴方もとてもハンサムですよ」
ん、あぁ、顔の事か、私は李さんの髪を誉めたつもりだったのだが、顔の事と捉えられたかな、ちょっと失礼だったか。
「先生方も具合が悪い時は、気軽に保健室に来てくださいね、元気になれるお薬用意しておきます」
李さんはそう言うと職員室を出て行った、うん、歩き方だけでも鍛えてるのがわかるな体幹が全然ぶれてない。
「児島主任、日本では養護教諭と言うのは身体を鍛えないといけないものなのでしょうか?」
「ブツブツ、仁先生はああ言うお姉さん系がタイプ……えっ、あぁ、身体は健康な方がいいですよね、私も健康には自信があります!」
ふんす!と健康アピールしてくる児島主任、なるほど、教師も身体が基本だからな、これは私も鍛錬は欠かせないな、今日はバスケットボールの練習と剣術の鍛錬を増やすか。
ギシィ
「あれが武田仁ね」
保健室の椅子に腰を下ろすと、深くため息を吐く。
異世界人の魔法使い、アニメにでも出てきそうなキャラクターね、特務7課の内海に貸しがあるのにつけこまれ、要請されてこの学校に赴任してみれば、確かにここには
「…………」
ガタンッ!
「なに、あのイケメン!もう仕事(監視)どころじゃないわよアレ!し、しかも、私の事、イケボでう、美しいって、えっこれってもしかして異世界ではプロポーズだったりする〜!お顔もフェイトのアーチャー様にそっくりだし、ロー・アイアスみたいな魔法とか使えたりするのかしら!」
李 蓮花。中国武術の達人だが、日本のアニメの大ファンで今では日本への帰化も頭に入れている、特務7課の内海とは秋葉原のラーメン屋で財布を無くした時に奢ってもらい、それから親交がある。
「ぐふふふふ、あの方との間に子供が出来れば、人類最初の異世界人ハーフ!うふふふ、やってやろうじゃない!」
それに仁様、凄くいい身体してた、魔法使いって身体も鍛えるものなのかしら?じゅるり
「なんか、保健室の先生変わったね〜」
「あぁ、朝礼の時紹介されてたね、中華の人?」
「髪長かったな、腰まであったじゃん」
「意外と美人だったよね、ちょっと目つきが鋭かったけど」
「そうか?私の方が若くて美人だし〜」
「にしても仁先生といい、2学期からなんて珍しいよね、うちの学校ランク上がった?」
「あ、そうそう、仁先生と言えば、昨日バスケ部でさぁ」
「聞いた聞いた!凄かったんでしょ!詳しく聞かせてよ」
「いいよ。最初は…」
ここは女子校、女子高生にとっては同性の保健の先生より、イケメンの担任教師の方が重要度は高い。
これが共学校なら、少し話は変わってくるのだが。
「は〜い!一番、李蓮花、やきとりの串でダーツやりま〜す」
スココココーーーン
「「「おぉーーっ!今年の新任は武田先生も含めて芸達者だな!」」」
ヤンヤヤンヤ
「チッ」
「じゃあ次は私ですね、水球のお手玉します」
「「「「おぉ!凄い綺麗なジャグリング!パチパチパチ」」」
「「仁さま、素敵ぃ!」」
児島と李蓮花が揃って目を潤ませる。
新人歓迎会の会場である、焼き鳥さっちゃんは今日も盛り上がっていた。
商売繁盛笹持ってこーい!
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