第5話 コンビニエンスストア
「大村先生!」
職員室に行く廊下で前を歩いていた大村先生に声をかける、授業の後だから白衣姿だ。
「おや、武田先生。お疲れ様です」
「お疲れ様です」
大村先生は32歳の妻子持ちで、ふくよかでどこか安心感がある優しい先生だ、そしていつも何か食べているイメージがある。
「そうだ、大村先生は今日もお昼はコンビニって所に行きますか?」
大村先生はお弁当は持参しているのだが、それだけでは足りないらしく良くお昼休みにコンビニに出かけて何か買ってきて食べている。
「えぇ、行こうと思ってますが」
「私もご一緒してもよろしいでしょうか!」
サクラ様に少し行動範囲を広げてこいと言われて、クオカードなるものを渡されたのだ、聞けばコンビニとかで使える通貨らしくサクラ様も知り合いの方に頂いたそうだ。
けど、サクラ様はコンビニは使わないらしく、私に譲ってくれた。何枚か渡されて数字を見れば結構な額だと思うのだがいいのだろうか?
お昼休み、大村先生と一緒に通り沿いの角にあるセブンイレブンと言うコンビニに歩いて向かう、他にもローソンやファミマなど数種の店が存在するらしいが学校から一番近いのがこの店なのだ。
「へぇ、武田先生は普段コンビニとか行かないんですか?」
「ええ、家がある地区は傍になくて、この際だから行ってみようかと」
サクラ様の家では野菜は自給自足だし、肉は近所の人が持って来てくれる。図書館に出かける時もサクラ様の軽トラックで送り迎えして頂いたのでコンビニエンスストアに寄ることはなかったのだ。そういえば私は車の免許とかは取ることが出来るのか?戸籍も用意して頂いたしもう色々な所に出かけても大丈夫なんだよな。
「それは珍しいですね、コンビニなんか生まれた時からどこにでもあるでしょうに」
「そんなに歴史がある店なんですね」
「はっはっは、武田先生は面白いなぁ、あぁ、着きましたね」
ピンピロリ〜ン
自動ドアが開くと来客を知らせるチャイムが鳴る、店内を見渡せば様々な商品が所狭しと並んでいる、ちょっとワクワクしてきた。
大村先生はまっすぐお弁当が並ぶ所に向かった、私は手前の書籍が並ぶ所に向かう。そこにうちの制服を着た生徒が雑誌を読んでいた。
「あれ、三国さん」
「仁先生!あ、こ、これはちょっとノートを買いにですね」
声をかけると三国さんはびっくりしたのかちょっと慌てていた。
「ノート?この店はそんなものまで売っているんですか」
「えっ、売ってますよ、ここ学校から一番近いから皆んなよく買いにきますよ」
「へえ、便利なんですね」
「? 仁先生はお昼ご飯ですか?」
「えぇ、大村先生に連れて来てもらいました、三国さんはこのお店でなにかオススメはありますか?」
三国さんはキョロキョロと周りを見渡す、大村先生ならお弁当を買いに行ってますよ。
「大村先生はよく来てますもんね、でもオススメ?」
「はい、恥ずかしながら、初めて来たものですから」
「ああ、普段はローソンかなにかなんですね、そうだなセブンだったら〜、あ、今ならナナチキがキャンペーンで安いからパンに挟んで食べると美味しいですよ」
「ななちき?」
「あぁ、それも良いですね」
「わっ、大村先生」
三国さんの後から大村先生が現れる、手にはお弁当を持っている、もう買ったのか早いですね。先生は三国さんが持っているノートをチラッと見た。
「三国さん、就業時間内はコンビニの利用はなるべく控えてくださいね」
「は〜い」
あぁ、そう言えばそういう規則があった、三国さんが私に声をかけられて慌ててたのはそのせいか。
「じゃあ武田先生、僕はもう買っちゃたんで先に戻りますね」
「はい、連れて来てもらってありがとうございました」
「あ、私も戻らなきゃ。次の授業移動だ」
三国さんも慣れた感じでレジで買い物を済ますと大村先生を追いかけるように去って行ってしまった。ちょっと取り残された気分だが、せっかくだし一通り店内を見て回ろう。
初めてのコンビニは本当に何でも売っていて感動した、飲み物や食べ物だけじゃなく下着まで売っているとは、一体どんな仕入れルートなんだ。きっと大手の商会が経営しているのだろう。
「さて、ナナチキとやらはどこに売ってるんだ?そもそもナナチキって何だ?」
店員のお姉さんに尋ねれば「こちらですよ」とレジのすぐ横のガラスケースを教えてくれた。
「あぁ、ななチキとは唐揚げの事か、ではそれとパンとサラダをください」
「え、…ああ、ご案内しますね、小林く〜んちょっとレジお願い」
店員のお姉さんは売場に案内してくれて丁寧に説明までしてくれた、パンやサラダと言っても何種類も売っているらしい。
あとセルフレジと言って機械を自分で操作して商品を買うらしい、お姉さんに教わりながら会計を済ました、あの機械にはどんな魔法が使われているのだろうとても興味深い。
私は店員さんお薦めの商品を購入すると学校に戻った。
……昼休みはとっくに終わっていて、児島主任に優しく注意されてしまった、反省。
ちなみに、ななチキを挟んだパンはちょっとスパイシーで凄く美味しかった、教えてくれた三国さんにはしっかりとお礼を言わなくては。
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