第3話 歓迎会

神様にも神格と言うものがある。A〜Fで分けるとして、天照様はあんな幼女な見た目しているが立派なAクラスの神様だ、特Aと言っても良い、一応日本の最高神だからね。Fクラスだとあんまり人間と変わらない、神と言うより妖怪とか幽霊に近いかな。そして今、目の前に座って羊羹食って、お茶飲んでる3人はと言うと文句なくAクラスの神様だった。


アヌビスちゃん、エジプト神話の冥界の神。紀元前何千年も前から存在する由緒正しい犬の頭を持つ半獣の神様。

本物は青い髪のおかっぱ犬耳(ケモミミ)娘だった。


イシュタムさん、マヤ神話において、自殺を司る神。死んだ者を楽園へと導く女性神。

だが実物は首吊りが趣味の乳のでかいエロいおねーさんだった。神社で首吊りだけはすんなよ縁起悪い。


ヘルちゃん、北欧神話で死者の国を支配する神。父親は悪戯好きで知られるロキ、兄弟にフェンリルやヨルムンガンドがいる。うん、ちっちゃい貞子だこれ。


なんやねん、この顔ぶれは!見事に冥界系の神様ばっかりじゃないか、ここにイザナミ様が居れば最凶のブラック系のフォーカードが揃っちゃうよ。いや、ギリシャ神話のハーデスあたりの方がそれっぽいか。

あー、こらこらアヌビスちゃん、お茶をこぼすな行儀が悪い。えっ、熱かった?犬のくせに猫舌か!



「ガク、お昼ご飯は信州そばが食べたいのですけど、どこの店に案内してくれますの」


そして真打ちとしてこのオリジンちゃん。上位種である神様の血を吸う30万年を生きる始まりの吸血鬼、Aクラスの神様って吸血鬼の眷属に出来るのか?

背筋を伸ばし姿勢よくお茶を飲んでいるのだが、腰まで届くツヤサラの金髪と、見る者を魅了する金色の瞳、いいとこのお嬢様の雰囲気がオンボロ神社に不釣り合いすぎる。それに、ちょこんと正座しているので短いスカートからパンツが見えそうで目のやり場に非常に困る。


「あ、お蕎麦なら俺が打ちますよ。これでも信州人ですから、結構うまいんですよ蕎麦打」


「まぁ!ガクが作ってくださるの、それは面白そうですわ」


「ほー、蕎麦とくれば日本酒はあるのか!」


「天ぷら蕎麦・・・」


「そばってなんだ?」


「はいはい、イシュタムさん。お酒はいっぱい有りますよここは神社ですから。ヘルちゃん、天ぷらは今の時季なら舞茸にするね。エジプトに蕎麦はさすがに無いか?犬は蕎麦って大丈夫だっけ」


「だれが犬だ!!」


ガウーとおかっぱ頭の犬耳娘がシッポを逆立てる、可愛い。




蔵から挽き立ての新そばの粉と道具を持ってくる。4人?4神とも興味深そうに俺の周りに集まってきた。


「さて」


大きなこね鉢でそば粉に水まわしをする、少し粘りが出てきた所で菊練りで空気を抜いて丸めていく、次に麺打ち台でのし棒をつかって伸ばす、のし棒に生地を巻き付けながらタンタンとリズム良くさらに薄く伸ばす、ここまでくれば後は生地を畳んで切っていけばいい。トントンと細めに包丁でそば生地を切っていけば、周りからオォーと感嘆の声が上がる。


大きな寸胴に打ち立ての蕎麦をそっと入れて1分。冷たい井戸水でぬめりを洗い流してざるに盛れば完成だ。後はカツオ出汁をたっぷり効かせた汁に揚げたての舞茸の天ぷら、それに親父秘蔵の純米吟醸を用意した。


「さあ、茹で立てが一番美味しいんだ、食べてくれ!」


「見事なものですわ、お蕎麦屋さんでもやっていけそうですわ」


うむ、美少女に褒められるのは中々気分がいいもんだ、職人冥利につきる、相手は神様だけど。


ズルルル


「美味しいですわ。この喉越し、この香り」


「ふむ、蕎麦にはやっぱり日本酒だな」


「天ぷらサクサク・・・美味しい・・・」


「ガフガフ」


オリジンちゃんや神様達にも大好評で安心した、やっぱり蕎麦は挽き立て、打ち立て、茹で立てが一番美味い。

こら、犬。落ち着いて食え。イシュタムさんは蕎麦に酒をかける食べ方を誰かに教わった?南米でもそう言う食べ方あるのか?けどかけすぎですよ。


イシュタムさんが酒盛りを始めてしまったのでそのまま歓迎会らしきものに突入してしまった。それにしても皆良く飲むな、日本酒がまるで水のようだ。神様は二日酔いとかしなそうだけどこのペースだと俺がやばい。

ふとオリジンちゃんに目を移すと、その姿にドキッと心臓が跳ねる。

真っ白な肌がほんのり色づいてなんとも色っぽい、崩した長い足はまさに芸術品のようで目が離せない。う〜ん、女子高生を酔わせてるみたいで罪悪感が半端ない。


「ふふ、ガクさんのおかげでしばらくは楽しくすごせそうですわ」


はい、俺も今そう思いました。黒レースのパンツなんか絶対に見てません。見てませんとも。

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