第31話 攻略対象サージェス

 条件?


 私はジークを凝視した。


「新年度に僕が生徒会長になったら、副会長は君だ」


「はあっ!」


 ちょっと待って!

 王宮での業務がてんこ盛りで生徒会の仕事をあまりできなくなる私がどうして?


「私でなくても他にも副会長を任せられる人はいるわ」


「だが、一番仕事ができるのは君だし、僕の代わりに王宮での雑事を引き受けてくれることによって君が不利益を被るなら、僕は君の提案を受け入れない」


「生徒会にあまり顔出さない私が副会長じゃ、他の方々の不満を招くと思うわ」


「じゃあ、聞いてみよう」


 ジークは翌日、他の生徒会メンバーたちに私たちの状況とそれでも私が副会長をする是非を問うた。


「いいんじゃないですか、そもそも会長や副会長って、他の役員たちに指令を出してくれればいい立場だし、長い時間生徒会にいられなくても無問題でしょ」


「ええ、その辺のフォローは会長と同じく生徒会室にいることの多い書記や会計もできますから」


「もともと副会長と言うのは、生徒会長の仕事を見るのが仕事みたいなところがあるし、その役職だけがやらなきゃならない仕事っていうのはないしな」


 皆が口々に言う。

 その優しさには涙が出そうになる。

 それと同時に、やはり王族に聞かれたので忖度でそう答えているのではとも考える私は心配性で疑り深い?


 そうして、新年度が来て二年生になった私は生徒会の副会長になった。


 新入生を迎える立場となったわけだが、その中に例の乙女ゲームパート1の攻略対象が一人混ざっていた。


 サージェス・ロイス、灰色の賢そうな瞳と深緑色の髪を持った、ペーパーテスト第一位の英才である。


 パート1のヒロインや悪役令嬢のフェリシア、そして攻略対象のエミール王子らが入学してくるのは来年だ。ゲームでは、サージェスだけが上級生の攻略対象として存在していた。


 実はゲームでは、来年に彼が副会長をすっ飛ばして生徒会長になる。


 つまり私は生徒会には存在しないのだ、ゲーム上では。


 彼を攻略対象にした時の悪役令嬢はエミール第二王子と同じくフェリシアだ。


 彼はフェリシアに心酔していたが、やがて彼女の悪行を見て嘆き悲しみ、いさめる意図をもって、卒業パーティで王子らが断罪するのを許可する。どうして王子やヒロイン、そして悪役令嬢のフェリシアが一年、つまり彼らが卒業するわけではない年度の卒業パーティで断罪が行われるのかと言うとそういう経緯がある。


 要するに、サージェスが生徒会長の立場を勘違いして、パーティを私物化したのが原因なわけだ。







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