第4話
しばらくすると、王太子殿下と侍従長、近衛騎士団長とお話しすることになった。
「この度は王宮での問題を未然に防いでもらったことに感謝する」
「我らの不手際である。ご令嬢が不幸な目に遭うことがなく済んだことに感謝申し上げる」
王宮のお偉い方々に謝罪されてびっくり。
「謝罪は受け取ります」
「私も受け取ります」
目の前に王太子殿下がお座りになって、どうしてこんなことにと混乱しちゃう。
「正直、デビューしたての令嬢を狙う者は毎年いる。今回は化粧室の窓から令嬢を攫ったそうだ」
年々色々な目を掻い潜って拐かすのらしい。
そんな頭を使うならモテる方法とか考えた方がよほど良い結果になりそう。
「今回君たちが助けてくれた令嬢は、公爵家の嫡男の婚約者だ」
え、仮に手を出して既成事実が出来たとて、お先真っ暗なのでは?
「純潔を失ったことが問題で、自分は誘われたと言い張れば、自分たちに責は問われないと思っていたらしい」
私の表情を読んでのことか殿下は説明をしてくれた。
「計画が杜撰過ぎて頭が痛いですね」
「全くだ」
頰を叩いてドレスを裂いてるのに誘われたと言う気だったとか、理解ができない。
「ご令嬢は大丈夫ですか?」
「母君が迎えにきて宥めている。王宮に泊めようと思ったんだが、王宮にいる方が不安だろうから落ちついたら帰るだろう」
彼女がこれからどうなるかは心配だけれど、現場を見た私たちが近づかない方が良いと言われた。
「クラエス嬢、今回はお手柄だったけど、マァム卿がいない時には、行く前に誰かを呼ぶんだよ。ああいったことをやる手勢は、暴力はもちろん、君の身も危ないからね」
騎士団長にも釘を刺された。
「あの、迷子になった時とかたまたま見つけちゃった時はどうしたら・・・」
騎士団長も殿下も不思議そうな顔をした。
「今回が初めてじゃないのかな」
「抱きしめたり、口付けとかは幾度も」
「「幾度も!!?」」
大人が、偉い人が顎を落とすのは初めて見た。
「お花を見に歩いてたり、虫を探してたりすると何故か人目を避けてるような人がいたり・・・」
殿下に騎士団長にジョシュアさまもしょっぱい顔になっちゃった。
「なんて言うか運?タイミングが悪いのかな?」
「恋人同士の逢瀬なら問題はないが」
「人目を忍んでる・・・ですからね」
うっかり道を逸れたり、人のいない場所に行かないように三人にしっかり目に言われてしまった。
「人の秘密を知ってしまうと、事によっては君に暴力を振るうか、どこかへ連れ去って殺してしまう場合もある。とにかく誰かと離れないでいるようにね」
めちゃくちゃ脅されてしまった。
人の逢瀬は見たいわけじゃないので、気をつけようと思う。
話していたら、被害に遭った令嬢のお家の方からお手紙を届けられた。
「君たち宛だ。読んでいい」
内容は、今は会うことは難しいので書面ですまないとの謝罪と、娘を救ったことの感謝と口外しないようにと、襲った伶息の身内から嫌がらせがあるかもしれないから、しばらく護衛を貸すと言うこと、なぜか謝礼の小切手が入っていた。
「これは・・・」
「受け取っておくが良い」
「口外しないことを含めたあちら側の安心料だと思えばいい」
それなりの金額で震えちゃう。
「すぐ換金ぜずとも持っていたらいい」
たまたま、気になった場所に行っただけなのにね。大金になっちゃった。怖い。
「ジョシュアさまと半分ですね」
「僕は君について行っただけだよ」
ジョシュアさまがいなかったらもっと大騒動だったから、半分こ。
「ふふ、若い二人を見ていると日頃の澱が消えそうだ」
騎士団長は、厳つい顔をかなり緩めてくれた。
「また話を聞かせてもらうこともあるだろうが、今日はもう帰っていいぞ」
「次は妹の茶会に参加してやってくれ」
王子殿下からお誘いを受けた。
「私などが参加しても?」
「ああ、きっと喜ぶよ」
いいのかしら?ジョシュアさまを見ると笑顔で頷く。
「ぜひ招待をお待ちしております」
殿下方にご挨拶してその場を辞した。
緊張しまくった時間をやっと終えることができた。
「マーガレット、しばらくは学園の行き帰りを僕の馬車にしよう」
馬車の中で明日から送り迎えをすると伝えられた。
「え?遠回りですわ」
「いいんだよ。君といる時間も増えるし一石二鳥だ」
何もないと良いけど護衛が付くって言われて不安だったから、ジョシュアさまが来てくれるのは嬉しい。
「私もジョシュアさまといられて嬉しいです」
「あー、可愛いなぁ」
ハグをされてしまう。恥ずかしい。
「ではまた明日」
私を門まで送り届けてくれて、馬車から下ろしてもらって、お帰りになるジョシュアさまを見送った。
なぜか如何わしい場面に遭遇しちゃって私が如何わしいと噂されるので開き直ることにしました。 紫楼 @sirouf
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