第8話 ヘトヘトのまま帰宅して

 なまじ生来の頑丈さ故に試合後に治療受けなかったからであろう。

 櫛灘寮に帰宅する頃には静子はフラフラになっていた。


「随分と派手にやられたもんだ。とりあえず横になれ」


 大広間にて出迎えたアオは静子の様子から手痛い敗北だったのだろうと推測し、彼女をソファーに寝かせる。

 そのまま痛みを取り自己治癒を促進させる法術バフ・ア・リインを施したことで静子の顔色はみるみるうちに良くなった。


「この様子じゃ苦手意識が足を引っ張っちまったか。でも昨日はしっかり結果を出せたんだ。この調子で成績を上げれば、もう退学の心配なんて無いだろうぜ」

「ハッズレー。今日もしっかり静子は勝ったよ」

「だったらなんでこんなことに」


 アオは慰めのつもりの言葉をかけたわけだが、それを否定したのは一緒に帰ってきたメイである。

 アオとしては静子のくたびれた様子を見せられたうえで勝ったと言われても小首を傾げるより他にない。


「あたしもびっくりだよ。試合中にけっこうダメージをうけていたけど学校を出る前は魔法の使いすぎで疲れた程度で体調は悪くなかったのよ。それが帰り道で急に具合を悪くしてあたしが担いできたってワケ」

「試合直後はアドレナリンが出ていたから気づかなかったってことか。それにしたってコレは法術で治療しなかったら治らないレベルのダメージじゃないか。何を食らったらこうなる。昨日の話だとアプヴェーアで防ぎきれない攻撃が使えるようなヤツが相手だとは思えなかったぞ」

「的確に盾を出せれば防ぎきれたんだけどね。そこはフォレストが上手く立ち回った結果だから残念だけど仕方がない」


 説明ついでに試合の経緯を聞いたアオは静子のポテンシャルに驚かされる。

 春休みの特訓中にある程度は彼女の身体の頑丈さに気づいていたとはいえ生身で上級攻撃魔法の直撃を受けて法術による治癒もなしの状態でこの程度のダメージなのかと。

 静子が受けた攻撃は不完全な破離剣によるもののためアオの予測のほうが威力が大きいとは言え、それでも本来ならばKO負けの末に即座に治療を受けているべきなのは変わらない。

 鍛え抜かれたマッチョにも引けを取らないのではと、彼女の寝顔を見ながらアオは独白していた。

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