第3話 アバターとパソコンですって⁈

「じゃあローズ様、わたしは仕事に行ってきます。何かあったら教えた通りに電話して下さいね」


「分かりましたわ。ではわたくしは、ミズキの部屋でくつろがせて頂きますわね」


「お腹へったら適当にあるもの食べてて良いですから」


 ミズキは職場に出かけて行きました。


 さて、どうしましょう。


 とりあえず、ミズキの部屋を一通り見回してみることにしましたわ。


 部屋の中には、見た事のない家具や魔道具がたくさんあって、まさに異国という感じですわ。


 それはそうとミズキ、ベッドや床に服を脱ぎ捨ててそのままになってますわ。


 あの子割と雑な性格していそうですわね。


 仕方ないですわ。


 時間もある事ですし、脱ぎ散らかしてある服を片付けてあげることにしますわ。


 こう言うのは本来ならメイド達の仕事ですので、元の世界でわたくしがやるとメイド達の仕事がなくなってしまうと言われていましたが、わたくしこう言うのは得意ですの。


 ミズキ、服だけで無く書類なんかも部屋のあちこちの床に置きっぱにする性格ですのね。


 服のついでに書類もきちんと整理してあげる事にしますわ。


 わたくし、なかなか働き者ですわね。


 片付けながら、この散らばった書類を読んでみましたが、これらは『トリセツ』という書類の様ですわ。


 トリセツが何かは、すぐに分かりましたわ。


 トリセツにはどれも絵が描いてあるのです。


 この絵と同じ形の物が、ミズキさんの家の中にあるのを確認しましたわ。


 どれも、使い方のよく分からない魔道具達ですの。


 どうやら、このトリセツというのは、魔道具の使用方法が書かれている様ですわ。


 ドラムシキセンタクカンソウキ……という魔道具のトリセツを見ると、どうやらこれは衣類を洗って乾燥してくれる魔道具の様ですわね。


 早速、散らかしてたミズキさんの服をこの魔道具で洗ってみますわ。


 服を魔道具の中に入れて、センザイというポ

ーションを入れてボタンを押すだけですのね。


 なんて簡単ですの!


 凄い魔導技術ですわ!


 しかもこのドラムシキ、わたくしの魔力が全く減りませんの。


 凄い事ですわ。


 どうやらこのニホンと言う国、相当に魔導技術が発達している様ですわ。


 この国から来たソフィーリアにわたくしが負けたのも頷けますわね。


 他にも面白そうなトリセツがいくつかありますわね。


 もっとこの国の魔道具を試してみたくなりましたわ。


 面白そうなトリセツを見つけましたわ。


 これは、パソコンと言う魔道具のトリセツですわね。


 パソコンは、四角い箱のような形をしてますのね。


 ミズキの部屋にある机の上にありましたわ。


 確かに、四角い箱ですわね。


 とりあえずトリセツの通りに起動してみますわ。


 デンゲンスイッチと言うのを押しますわよ。


『オハヨウゴサイマス、ミズキサマ』


 ……こ、これは……凄いですわ。


 パソコンとやら、喋りましたわ。凄い魔導技術ですわ。


『ミズキサマ、オルタ・コネクタヲ、セットシテクダサイ』


 オルタ・コネクタと言うのか何か分かりませんわ〜


『コノ本体ノヨコニアルヘルメットガ、オルタ・コネクタ……俗ニ言ウ、〝VRデバイス〟VRデス』


 ……こ、これですわね。

 VRデバイス、半円のサラダボウルみたいな形ですわね。


『ソレ、アタマニカブッテクダサイ』


 ……よく分かりませんが、とりあえず、このパソコンの言う通りにしてみますわ。


 す、凄いですわ!


 VRデバイスを被ったら、まるで自分が別世界にいるような感覚ですわ!


 さっきまで物だらけのミズキさんの部屋にいたはずですのに、今は何もない真っ白な部屋の中に立っていますわ。


 部屋の中にはフェレットのような魔法動物が一匹いますわね。


『ヨウコソ、ココハ、フルダイヴ・ヴァーチャル空間〝オルタヴィル〟デス』


 フルダイヴ?


 ヴァーチャル空間?


 オルタヴィル?


 分からない単語だらけですわ。


 しかもここでのわたくしの姿、何だかふわふわしてますわ。


『ピピ……生体認証ヲ開始シマス……』


 それにしても、話し方からすると、このフェレットがさっきのパソコンと同一の存在なのかしら。


 わたくし、理解しましたわ。


 フェレットはパソコンの、ヴァーチャル世界での姿なのですわね。


『認証完了……貴方ハ、ミズキサマデハアリマセンネ』


「そうですわ。わたくしローズマリーですわ。わたくしはただ、ミズキさんの部屋にお邪魔しただけですわ」


『ピピ……カシコマリマシタ……デハ、ゲストトシテ登録サセテ頂キマス』


「構いませんわ。でもわたくしのこと、ゲストだなんて呼ばないで欲しいですわ。わたくし、ローズマリーと言う名前がありますの」


『承知シマシタ。ローズマリーサマ、登録シマス。アバターハ、オ持チデショウカ』


「アバター?そんな物知りませんわ」


「デハ、現実世界ノ姿ヲ参考ニシテ、アバターヲ作成シマス」


「何だかよく分からないけど、構いませんわ。やって頂戴」


『カシコマリ……ピピ……完了シマシタ。自身ノバーチャルアバター姿ヲゴ覧クダサイ』


 何が変わったのかよくわからないまま、アバターの作成とやらが終わったみたいですわ。


 目の前に当然大きなスタンドミラーが現れましたわ。


 私の凛々しい姿が写っていますわね。


 ……やっぱり何が変わったのか分かりませんわ。


『ローズマリー様ノ現実ノ姿ヲ参考ニアバターヲ作成シマシタ。コチラノ姿デ良イデスカ?』


 まあ、アバターとやらになっても、わたくしはわたくしのままという事ですわね。


 わかった様なわからないような話ですが、とりあえず良いですわ。


『カシコマリマシタ。コレデ、ローズマリー様はバーチャル空間、オルタヴィルノ中デ、好キナ場所ニ行ク事ガデキマス』


「好きな所……と言っても、どこに行けば良いのか、分からないですわ。わたくしがこの世界で知っているのはミズキだけですし……」


『デハ、ミズキサマの元ニ転送シマショウカ?』


「あら、そんな事ができるのかしら?」


『ハイ。ミズキサマハ現在、職場デアル、フルダイヴ・プロダクションノバーチャル空間ニイマス。コノパソコンハミズキサマノ所有物、デスノデ、ローズマリーサマヲ、ミズキサマノ元ヘ転送スル事ハ可能デス』


「そうなのですわね……では、さっさとやって頂戴。わたくしをミズキの元へ案内しなさい」


『ピピ……デハ転送開始シマス……』


……あっという間に、わたくし、真っ白い部屋から移動したみたいですわ。


 このパソコン、転移魔法が使えるなんて……実は優秀な魔導士でしたのね。

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