第2話 追放された先はニホンですって⁈
「おねーさん、もしかして……ローズマリー様ですかっ!」
いきなり異世界で出会った人にわたくしの名前をあてられるなんて、わたくし、有名人でしたのね。
女はスーツ姿で、髪を後ろで結んだ薄化粧の真面目そうな身なりをしていますわ。
スーツなんて、この世界にもあるのですわね。
この女、執事か何かなのでしょうか。
「そう……ですわ」
「やっぱり!凄い再現度ですね!おねーさん、その服どこで買ったんですか!もしかして自作!本当にローズマリーさんの実写にしか見えないです。完璧なコスプレですよ」
……何を言ってるのしょうかこの子は。
「あの、わたくし〝こすぷれ〟というのは存じませんわ」
「お嬢様言葉も完璧ですね!」
「だから、何を勘違いなさっているのか分かりませんわ!」
わたくしとした事が、ついイラッとしてしまいました。
大声をだすなんてわたくしとした事がみっともないですわ。
とは言え、おかげで目の前の女は、ハッという表情をして、少し大人しくなってくれたので、良かったのかも知れません。
「ご、ごめんなさい。初対面の方についはしゃいでしまいました。……それはそうと、こんなのゴミ捨て場でなにをしてたんですか?」
「それはわたくしもわかりませんわ……魔法使いの魔法で元の世界から追放されて、気がついたらここに倒れていたんですの」
「魔法使い……追放……ぷぷ」
「は?今笑いました?」
「あ、いえ。ごめんなさい。そうですか。いえ、さすがローズマリー様です」
「だからそうだと言ってますけど……所でわたくし、元の世界に帰る事が出来ないので今、大変困っているのです。どこか泊まれる所はありませんか」
「へっ……ローズマリー様、帰る所が無いって……どういう事ですか?」
「そのままの意味ですわ。この世界の事は右も左も分かりませんわ」
「それは困りましたね……もしかして海外の方ですか?お顔立ちが海外の方っぽいので。ホテルの場所が分からなくなって困っているとか?」
この女、まだわたくしの事を〝こすぷれ〟だと思ってますわね……まあでもこれ以上説明しても分かってもらえない気もしますわ。
とりあえず、癪ですが一旦話を合わせておく事にしましょう。
「まあ、そんな感じですわ。言っておきますが、お金も持って無いですから。ここに転送される時に何も持たせてもらえませんでしたの。まあ、元々持ち歩きませんが」
「え……無一文?大丈夫なんですかっ」
「大丈夫じゃないから相談してるのですわ」
「そうですか……」
女は下を向いて少し考えた後で、ばっと顔を上げましたわ。
「じゃあ、うちに来てください!すぐそこなんで!」
「あら、良いのです?」
「全然大丈夫です!」
案外、何とかなったみたいですわね。
「そうだローズマリーさん、まだわたし、名乗ってなかったですね」
「ローズで良いですわ」
「あ、そうでしたねローズさん」
女はそう言って、胸ポケットから小さな紙切れを取り出して渡してきましたわ。
「これは?」
「あ、わたしの名刺です。わたしの名は
……名前以外は何を言っているのか、さっぱり分かりませんが、執事ではなかった様ですわね。
「では、わたくしの方もちゃんと自己紹介しないと行けませんわね」
「あ、それはもう大丈夫です」
「何故ですの?」
「だって、ローズマリー様なんですよね」
「もちろんそうですわ。ルクネア王国のエルヴァロイザ公爵家令嬢、ローズマリー・エルヴァロイザですわ」
「はいはい、そういう事にしておきますね」
「何ですのその扱い……仮にもわたくし、公爵令嬢ですのよ。追放されてしまいましたが」
「はいはい。じゃ、うち行きますよローズ様!」
……ミズキと名乗ったその女に着いて行く事にしましたわ。
見た事がない景色ばかりなのに不思議とあまり不安はありませんでしたわ。
私が元いた世界とは違うと言っても所詮は同じ人間ですもの。
考える事なんて大体同じですわ。
それにこは、あのソフィーリアが元々いた世界……なのでしょう。
「……着きましたよローズ様」
「……ここがミズキの家なんですの?」
「はい。賃貸マンションですけどね」
……ミズキの家は思ったよりも大きい建物ですのね。
「これが全部あなたの家なんて、もしかしてあなた、なかなか名のある貴族の令嬢だったのかしら」
「あ、いえいえ、私の家はこのアパートの一室だけなんです。それも借りてるだけで」
「ああ、ただの住み込みの
「それも違うんだけど……まあいいや。入って」
ミズキの家は、入ってみると以外と広くて過ごしやすそうでしたわ。
ミズキによると2LDKとか……意味は分かりませんけど。
「ここがわたしの部屋……じゃ、わたし仕事に行かなきゃだから、ローズ様はとりあえず好きにしてて下さい」
「お言葉に甘えさせて頂くとしますわ」
「あ、一応スマホ渡しておくね」
「スマホ……とは?」
「これこれ」
ミズキに渡されたのは小さな四角い石でしたわ。
わたくしが触れるとなぜか、石の表面に文字が浮かび上がりましたの。
「これは……魔法石ですの?」
「魔法だなんて……ほんと面白い事言うねローズ様」
不思議と、この魔法石に浮かび上がる文字が私には読む事が出来たのです。
わたくし、ニホンと言う国には今まで行った事がありませんのに、なぜかこれがニホン語だと言う事は分かりましたわ。
「これ、社給スマホだから何かあったらわたしに掛けてね。電話の掛け方は分かる?」
「分かると思いました?わたくしに?」
「ですよねー。じゃ今から教えますね」
ミズキにスマホの使い方を一通り教わりましたの。
この魔力の込められた魔法石でできたスマホを使えば、魔力のない庶民でも離れた相手と通話が出来るんですのね。
意外とこのニホン国の魔導文明は進んでおりますのね。
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