宵闇に紛れた妖魅の噂は、或る夜突然、目の前に顕現する。潮の匂い。溟い海から波音が響く中悍ましい咀嚼音が人の『理』の境を酷く曖昧にしてゆく。それは人であろうか、それとも妖魅か。魚を盗み喰らっているのか。『理』の箍を外すも人、込めるも又人であろうに。目の当たりにした絶望的な 困惑 は 果たして、如何許りであったろう。
最初から最後まで無駄がなく、身が引き締まるような名文で書かれた掌編です。そして、読後にジワ~っと来る恐ろしさ。お勧めします。