第5話 仲間である
「こちらで す。あ、写真いいですか?」
「Sorry.断らせてもらうよ」
「そうですか。失礼しました。では」
俺が会話で英単語を使うのは物知りアピールじゃあなく、昔からの癖なのである。
案内された席には、もう2人が座っていた。
予想通り男と女で、おそらくバインドであろう
男は19歳ほどの少年で、コーラとステーキを
うまそうにパクついていた。
ちなみに俺は25だ。
お世辞にも上品とは言えない作法だが、
とてもうまそうに食べている。
こんな少年までもが魔物を討伐しているとは、
少しびっくりだった。
対してリキュールは、21ほどで、
上品な仕草でスプーンを口に運んでいた。
そしてコップに手を伸ばした。
リキュールの手がコップにふれ、口元へ。
その洗練された仕草があまりにも美しく、俺は少し見入ってしまったが、ファミレスで若い女をずっと見ている気色悪いやつになったかもしれない。
どうやら僧侶のようで、羽織が邪魔で顔が
よく見えないが、美しい顔立ちである。
「Excuse me.君たちが魔王討伐パーティに参加届を出した2人か?」
「!?...いらしたのですね。その通りでございます」
リキュールが言った。
俺がいたことに気づかなかったのが多少ショック
だったが、俺の隠密行動が完璧だったと思うよう
にしてダメージを受け流した。
「そうか。して、なんで魔王を討伐しようなんて
おもったのだ?」
これは俺がずっと考えていた疑問である。
「なんでって、魔王にならずに倒せる秘策があるって書いてあったからだけども」
バインドが言った。
「ああ。なら先に秘策について説明するか。
君たち、セミゴーレミは知っているか?」
「初級の土魔法で、使うと自我のない自分の分身が無制限に作れるんでしたよね」
「セミゴーレムは召喚魔法だ。ゴーレムが土魔法。えーと、魔王というのは倒したものが継承すると言われているが、実際は死んだとき一番近くにあったものが魔王になるのだ。その証拠に過去には岩や魔王城が魔王になっている」
これは本当だ。
ザ・ロックやマッドキャッスルである。
「そうだとしてどうするんだ?」
「つまり、セミゴーレムを魔王の近くに置いて
おき、遠距離から倒せば...」
「...セミゴーレムが魔王になる、という事ですね」
「Exactly.そしたら俺がセミを解除すれば俺が
魔王だ。あとはセミゴーレムが俺を殺せば俺も
セミゴーレムも死に、世界から魔王はいなくなる」
これは嘘だった。
俺が魔王になる、までは正しい。
が、実際は俺が魔王になった瞬間にパーティを全員消し、世界に大いなる恐怖を与えるのだ。
そう考えたとき、純粋に俺についてきて、世界平和のため魔王を倒そうとしているこいつらを殺害しなければならない自分の計画に、チクリと心を針で刺されたような感じがした。
この計画のことや、俺の肩書き、俺の本性、
魔法を5つしか使わない事など、俺は秘密ばかり
増えていく。
「確かにそれが可能なら魔王は消えるかも
しれないが、セミは人形のようなもので、セミで自分を殺すことは不可能だ」
なんかみんな当たり前のようにセミに略しててクソワロタだが、今はさっきの想像で精神的に参っていて、会話をするので頭が限界なので考えないようにした。
「マヒュートって知っているかね?」
「魔法を改造する特殊魔法。簡単な割に魔力が高い
ので、別名コスパ最悪プラモデルです」
「Yes. ...そうなの!?」
俺の愛用魔法の悲しい一面を知ってしまった。
「で、そのコスパ最悪プラモデルを使って、
セミからウォータリアでも出させればいい」
「何でウォータなんて簡単な魔法なんだ?
プラチナならもっと攻撃力高い魔法知ってるだろ」
「単純なのじゃないとマヒュートでやるのめんどいのよ。あと痛いの嫌だからな」
まあ実際はこれくらいしか使わないからだが。
「さて、その話は持ち越すとして、そろそろ君たちの個人情報を聞いていこうか」
「言い方よw」
俺はそう言って、セミに埋め込んでいたノートと
万年筆を取り出す。
少し前にも言ったがセミは召喚魔法なので、
『一度セミを1体召喚し、そいつの体にノートとかを埋め込み、一旦しまう。その後、ノートを埋め込んだセミを想像しながら魔法を使うとノートを埋め込まれた奴が出てくる。』
そんな芸当をすることができる。
コスパ最悪でセミの形を改造すれば、いつでも
取り出せる収納の完成である。
名を冠するなら「ジュークボックス」!!!
おそらくこれもジュースとかに略されるんだろう。
「俺の名前はバインド。過去に特殊な状況に陥った影響で外見が若いが一応26だ」
「バインド...特殊な状況...26...26!?」
「おま26はないだろ流石に!?」
「さすがにサバ読みすぎですよ...
確か42でしたよね」
「そのうちの16年間は封印されてたから実質26」
どうやら口ぶりを見るに19歳頃封印され42歳になっていたようだ。
タメ口なのも年上だからか。
ここから先は次回のお楽しみで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます