復活の神殺し


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さっきまで身につけていた2種類のアクセサリー...ブレスレットとペンダントを外し


俺は未だに静かに佇む異形の生物に右腕を向けて魔法陣を展開する


何重にも重ねられ高密度の演算式が刻み込まれた魔法陣


そこから放たれるのは紅い炎


常人なら傍に居るだけで溶けそうなほどの熱を持つ炎


進むべき道にある障害物を塵すら残さず燃やし尽くす炎


己が滅したいと願う敵を焼却する炎


それが俺の右手に展開される


普通の人間ならこの時点で血反吐を吐き 強烈な頭痛と目眩 吐き気に襲われ 全身を苦痛が襲う自体になるだろう


アシュレイやシンシア 博士のような天才なら違うだろう


だが俺は平凡だ


ここまで執念と知識 そしてまぐれで手に入れたこの身体でのし上がっただけの凡人


故に俺はこの無限に再生する身体を酷使し


例えどれだけ苦痛が襲おうと 血反吐を吐こうと無理矢理 再生して魔法を使う


昔と変わらないやり方


自身を生贄当然の状態にして発動させる強力な魔法


だがそれでいい 俺のこの身体を犠牲に敵を葬れるなら 少しでも世界を壊せるのなら


俺は躊躇無く差し出す


「さぁ...10年ぶりの再戦と行こうか。邪神モイラル!!!」


右手に展開した魔法陣を発動する


「再戦祝いだ!!目覚まし代わりにこれでも喰らいやがれ!!焼夷神滅バーンカムイ!!!」


世界を 世の理を 神を 全てを燃やさんと放たれた紅蓮の炎は 異形の生物に放たれ その身を焦がす


「...こんな簡単に終わらねぇからな」


「ん」


その瞬間 消えぬことは無いだろうと思う程 轟々と燃えてた炎は一瞬で掻き消され 異形の生物が目覚める


悪魔のような黒い肌に黒い二つの角 それに物理的に歪んでいる顔


2対の黒い翼に加え 槍のように尖った尻尾


その身に刺さっていた槍を抜き


気味の悪い笑みを浮かべ まるでかつての俺と相棒の姿を連想させるかのように槍を構える


「...畜生が」


「生憎、君とその相棒のお陰でとても暇だったんでねェ...これくらいのやり返しはさせてもらうさァ」


10年程度 神にとっては何も出来ないまま1日部屋に閉じ込められた程度 相変わらず上位存在は時間感覚がズレてるな


「堕ちた神でありながらまだ力を残してるとはな」


此奴は堕落した神の一体 元は運命を司る高位神だったがその性格故 この世界に在る生きとし生けるものを弄びすぎた為 ゼウスにより下界へと堕とされた。


「これでも前は高位神だったからねェ..全く ゼウスも馬鹿だねェ 私を排除しようとしていたのにィ...こんな甘い対応をしてしまうなんてねェ」


だがゼウスは此奴の言う通り甘い対応をした 神としての力を少し残して封印をした


「全くだ。その点は同意しよう。お前という存在がこの世界に現れたからな」


此奴は封印の内側から世界と生きとし生けるものの運命に干渉しつつ封印をゆっくりと破っていった


「どうやらあの時消えた殺意も...戦意も..そしてこの世界への憎しみも復活したようで何よりィ...せっかくの目覚めだァ。君とそのお仲間を朝食として頂くとしようゥ。」


それが...俺の親、友人、隣人が虐殺された日だった。


10年前のあの日 彼奴ら色付きの運命に干渉し実質的な洗脳を施して俺を一度 殺させた


堕ちた神の身でありながら聖フレイヤ教の主神さえも一時的に実質的洗脳をした


「はっ、悪ぃがそうはならねぇぜ?ま、俺はお前を朝飯にするなんて死んでもごめんだがな。」


此奴は俺がここまで世界を憎み、壊したいという執念を生み出した元凶


「それはそれはとても...残念だねェ」


俺から何度も大切な存在を奪い、大切な存在へ危害を加えた最低最悪の仇敵だ。


「綾華は白銀の氷狼フェンリルに乗って援護を頼む 白銀の氷狼は綾華の指示に従ってくれ」


「ん、任せて」


『ワン!!』


悪魔王サタン原罪の林檎アダムは奴の妨害だ。とにかく行動を制限しろ 堕神の運命干渉の影響を受ける程やわな生涯を送ってきてないはずだ。頼むぞ」


『ヒヒッ、任せとけ 彼奴は気に食わねぇしなぁ!!』


『御意』


混沌の刻み時計クロノス破滅への予言ヨハネ黙示録は後方から最高火力で奴をぶっ飛ばせ 綾華に当たらなければいい それ以外は気にするな」


『承知したぞ 我が主よ』


『了解しました 命令の通り実行します』


「そして終末導師ロキは俺と共に奴との近接戦だ。お前の得意な幻影 催眠 なんでも使え」


『おまかせくださーい!!!我が親愛なるマイマスター!!このロキ!!久しぶりの登場でありながらとても重要な役目を頂き誠に感謝でしかありません!!!』


「...」


そして俺の所持する最後の天啓シリーズ


紅い嵐テュポーン


俺の実質最初に得た天啓シリーズであり 最も長く共に戦っていた一番の相棒


その抜け殻は俺の手元にあり、本体はモイラルが構えている黒ずんだ槍だ


まず最初の狙いは奴から相棒を奪う事


そして奴を消滅させる事だ


「...殺るぞ」



そう呟いた後に...



その場にいた全員が溢れんばかりの殺意と戦意を持って動き始めた



「はあっ!!」


「ほうほう、相変わらず槍の腕は落ちてはないようでェ!!」


俺の持つ相棒の抜け殻と奴の持つ相棒がぶつかり合う


残像が見える程の速さで行われる槍の応酬


お互いの槍はお互いに一切掠らず 一切触れることがない


相手の取る手を読み、更に先を読み、もっとその先を読む


無限に続く読み合いと槍の応酬


片や無限に癒える身体を持つ者


片や元高位神の堕神


しかしこの場にいるのはその2人だけでは無い


ワン!!!氷雪結界!!』


白銀の氷狼はモイラルの動きを制限しようと彼の手足を凍らそうと冷気を周辺に生み出し始める


「これはこれはァ!!せっかくの再会なのに水を差すとは如何なものかとォ!!!」


それに対しモイラルは堕神特有の能力 邪気を用いてそれを魔法に転じ 闇魔法のような形状にして弾幕を展開


たとえ天啓シリーズであろうと触れただけでも無事では済まない ドス黒い弾幕が白銀の氷狼と綾華に向けて放たれる


「ん、死海塩柱そして罪人は塩となる


しかしそれらに対し綾華が手をかざすと ドス黒い弾幕は塩に変わっていき地へと落ちていく


「なっ!?あのような小娘が何故その力をォ!?」


モイラルが動揺している中 彼らの攻撃は止まらない!!


『ケケケッ!!これでも喰らいなぁ!!怠惰の大罪怠けるのが人の喜び!!』


悪魔王から放たれる水色の魔力がモイラルの動きを重く制限する


「これはァ...!!非常にめんどくさいですねェ!!!」


それでも尚立ち上がるモイラルに対し


『マスターの仇敵は私の仇敵...死に晒せ!!【生命の原罪】』


アダムがモイラルに背後からしがみつく


常に邪気を放っているモイラルにそんなに密着すれば無事では済まないように思えるが


アダムのその身体はかつての最高神が自ら手掛けた原初の人間をモチーフに生み出された身体


故にその身体は最高神と彼の従う主を除けば何人たりとも穢れで犯すことの出来ない純白の身体なのだ


そんな彼の【生命の原罪】の能力でモイラルは己の生命力を奪われ始める


幾ら神と言えど堕ちた神 下界に身を置いてしまう時点で 下界の全ての生きとし生けるものが持つ生命力を糧に活動するのは世の理


故にモイラルはすぐさま周囲に撒いていた邪気を己に集め それらを纏って原罪の林檎と悪魔王の拘束から瞬時に逃れる


しかしその瞬間を狙い 混沌の刻み時計クロノス破滅への予言ヨハネ黙示録

唯一綾華に当たらないようだけを注意しながら全力で攻撃を行う


混沌の刻み時計はその能力故にあまり効果を発揮出来なそうに思える


しかしそれを破滅への予言がサポートする事により


本来 数十分 数時間後に引き起こされる厄災は


破滅への予言が それらが起こると予言することにより弱点を打ち消し


大嵐が 竜巻が 噴火が 落雷が 小隕石が 地震が


その場で起こりうる全ての厄災がモイラルに降り注ぐ


「実に辛いですねェ!!!」


それらをモイラルは己の持つ邪気と...


「それでは使いましょうか...いでよ!!紅い嵐!!!」


紅い 紅い 猛烈な嵐が 再臨した




モイラルを守るように展開される紅い嵐


それは雨風によるものでは無い紅い粒子で形成された嵐のようなものである


それら1つ1つが操作可能で武器にも防具にも成りうる上 かつて神話にて神々にとって最強最悪の天敵だった テュポーンを元に生み出された天啓シリーズ


その性能は天啓シリーズ 最強に分類されるといっても過言では無いだろう


「ちっ...」


虫唾が走る 相棒があのような奴に好き勝手扱われてるのが許せない


「彼奴の最初で最後の相棒は...俺だけだ!!」


「形成逆転と行きましょうかァ!!貴方のお仲間の攻撃は全て...貴方の相棒の力によって一切効かない!!」


「ん!」


綾華が紅い粒子を塩に変えようと試みるも


「でき...ない..!?」


紅い粒子はその干渉を拒む


白銀の氷狼が凍らそうと


悪魔王が粒子の動きを止めようと


原罪の林檎が粒子の活動を停止させようと


混沌の刻み時計が 厄災を起こそうと


破滅への予言がどれだけ厄災の強さを上げようと


紅い粒子はそれら全てを防ぎ、拒む


「貴方の大事な相棒を失い、敵に扱われ、何も出来ないその姿ァ!!実に滑稽だァ!!」


そう笑いながらモイラルは俺へとまた相棒を使って連撃を仕掛けてくる


それを俺は相棒の抜け殻で防ぎ攻撃に転ずるも相棒によって生み出された紅い粒子の影響で こちらの攻撃は通じないどころか攻撃したこっちがダメージを受けてしまう


「くっ...」


「先程の威勢は一体どちらへェ!!!」


笑いながら目にも止まらぬ連撃を行うモイラルの攻撃を俺は...


「がぁっ!?」


防ぎ切れず 左胸に相棒が突き刺さる


「ッ!!カバネッ!!!!」


綾華の悲鳴のような叫び声が耳に聞こえる


「おやおやァ!!どうやら本当にこの程度だったようでェ!!貴方の大事な大事な相棒が居ないとやはり貴方はその程度なのでしょォ!!」


紅い粒子が焼けるような痛みを与えながら 俺の身体を削っていく


だがこれくらいの痛みはなんてことは無い


削れた傍から治せばいい


それに...


「ようやく相棒に触れさせてくれたなぁ?」


その発言に動揺するモイラル


「ッ!!」


そして彼の背後にいつの間にか現れた道化師...


「たとえ神であろうと!勝ちを確信した瞬間が一番!油断するんですよ!!!HAHAHAHAHA!!!」


絶対的なチャンスが来る限界までモイラルの傍に潜んでいた終末導師は変幻自在の取引トリック・エクスチェンジを使い自身の手元にあった液状の回復薬と カバネの左胸に刺さった紅い嵐を交換


「なっ!?いつの間にィ!!?」


カバネは回復薬で左胸に空いた穴を癒し モイラルを包んでいた紅い粒子は消え去る


「マイマスター!!お受け取りください!!さぁ!遅れてやって来ましたよ!!我らが最古参!!マイマスター 最強で最高の相棒が!!さぁ!ご覧あれ!!」


終末導師がそう言いながら投げ渡してきた相棒をキャッチする


すると相棒は抜け殻と一体化し...



『....よぉ?相棒、元気にしてたか?』


久しぶりに聞いたあの声


出会った時からあの戦いの後までずっと聞いていたあの声


どんな苦難も楽しい事も一緒に乗り越えてきた最高の相棒の声


その声を聞いて涙が流れてしまう


『お?なんだなんだ?泣いてんのか?そりゃ嬉しいぜ!!何せ感動の再会だからな!!』


「...ああ」


『そんなしんみりされると困るんだがなぁ...まぁなんにせよ...戻ったぜ 相棒 』


「...おかえり 相棒...帰ってきたとこ悪いが..」


『ああ...せっかくの感動の再会だ。ドカンと1発、デカい花火でも撃ってやらねぇとな!!』


「行くぞ!!!紅い嵐テュポーン


『おうとも!!!!』



真なる 紅い 紅い 全てを拒絶し 全てを滅する紅い嵐が 再び 今ここに 再臨した






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Q.また失踪しますか?

A.不定期投稿なので...嘘ですごめんなさい1~2ヶ月の間には大体投稿するのでその構えた拳をお下げください!!!!(必死)

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