思い出2

ーーーーーーーーーー


「これで全員かい!?」


「ええ!!急ぎましょ!!」


俺や他の子供達 戦えない女性や老人は全員村に置いてあった馬車に乗った


「急いで隣町へ!!」


魔獣の群れと思われる足音がまるで地響きのようにこちらにまで聞こえてくる。


その音から逃げるように俺達は出発した





「...パパ 大丈夫かな」


「大丈夫さ 父さん達は強いから」


アシュレイの今の父は俺の父さん程では無いが母さんより強い


あの二人が居るんだ 負けるなんて有り得ない...


「...また安全になったら、どこか一緒に行こう。」


「...うん。」


不安に包まれた馬車の中で俺達は身を寄せ合った







「そういえばおばさん 隣町の名前ってなに?」


ふと疑問に思ったので聞いてみる


俺は隣町の名前やこの国?の名前すら知らないからな


地理の勉強を怠りすぎてたのが原因か...


「名前かい?アルガリアだよ」


アルガリア...?


その名前を聞いた瞬間 俺の中で何か既視感を感じるようになった


「...俺たちが住んでるこの国の名前ってなんだっけ?」


「急にどうしたんだい?私たちが住んでる国はヒステリア帝国だよ?」


それを聞いた瞬間 一気に脳内に流れ込んでくるあのゲームの知識


「ど、どうしたんだい?どこか体調が悪いのかい?」


「いや...なんでもない 大丈夫だよ」


...さっき父から聞いた特異個体と言い...間違いない...この世界は...あのゲームの世界だ...


アストラル・ダンジョン 希望と絶望の迷宮


名作RPGであり大人気になったゲームだが同時に鬱展開や曇らせがかなりあるゲームでもあった


その世界で起こる鬱展開の舞台の一つが俺らの村 メイナー村だ。


作中では 突然 連絡の途絶えた村の様子を確認してほしい という内容のクエストなのだがそれを行っているとムービーが入る


今の状況みたいに村に男性や戦える女性を残し老人や非力な女性 子供は隣町に逃げ 助けを求める為に避難と同時に行っている様子だ



「...」


これはそんな簡単に隣町に行って助けを求めてから魔獣倒してハッピーエンドとかじゃない


これが鬱展開の1つと言われる理由は


「な、なんだっ!?馬が急に...」


急に馬達がまるで何かに怯えてるように立ち止まり、御者の老人が困惑した声をあげる


「ッ!!アシュレイ!!逃げるぞっ!!」


もう来てるのかっ!!


「え..?」


俺はいきなりそう言われて困惑しているアシュレイの手を無理矢理引いて馬車から抜け出し逃げる


それと同時に馬車の方から魔獣の叫び声とみんなの悲鳴が聞こえ始める


「ひっ」


「とにかく走るぞ!!!」


懺悔はとにかく後...今は生き残ることだけに尽力しないと...!!


皆には本当に申し訳ない でも今は...アシュレイだけは...!!


後ろからは肉を引き裂くような音や何かを咀嚼するようなバキバキといった恐ろしい音が聞こえてくる


「なんで俺はっ...こういう時に思い出せなかったんだよっ...!!!!」


こうなる前に思い出せなかった自分を憎みながらもアシュレイを連れて必死に走る


「みんなっ...なんで...」


アシュレイの唖然とした声が聞こえる それに対し俺は


「...憎むなら幾らでも俺を憎んでくれッ....でも今は逃げる事だけに集中しろ!!!」





「はぁ....はぁ...まだ追ってきてやがる...!!」


アシュレイを連れて走るも魔獣達の足音は消えない


今はまだ距離が離れているがこのままだとそのうち捕まって即死コースだ...


何か打開策は無いのか...!!


必死に脳みそを回しながら逃げている時


「ッ..!?」


周りの魔力に異変が起こる 流れが乱れ、ある一点に濁流のように流れ込む


「今度はなにっ...!?」


周りの地形が変わっていく地面は硬い石の床に、木々や植物は消え壁が作られる。


俺達を追ってきた魔獣の姿も見えたがそれらの眼の前には巨大な鉄の扉が俺達と魔獣を隔てるように生み出される。


「これは...」


この現象を俺は知っている


この世界ゲームにある現象


迷宮の誕生だ



************

補足

迷宮は生まれた瞬間にある程度ランクは決まっている。またそこから成長することも可能だがそれは例外がない限り途方もない時間を要する。


************


「助かった...?」


アシュレイが泣きそうな声でそう言うが...


ガン!!


と魔獣たちが鉄扉を殴る音が聞こえる


「ひっ...」


その音にアシュレイは怯えながら後ずさる


「アシュレイ!!下がれ!!」


俺は周りを見て逃げれる場所が無いかと探すも...


「出入り口がない...!?」


広い部屋ではあるが出入り口は魔獣たちがいる鉄扉の先


何かないか...!?


俺の知識の中に何か解決方法は...!!?


必死に考えるも解決策は出てこない‥


「クソッ!!このままじゃ...」


脳裏に浮かぶのは全滅の二文字


打つ手なしと悟った俺はもはや神に祈るしか無かった



「俺は犠牲になっても良い...だから‥だから‥神でもなんでもいいからアシュレイだけは救ってくれ...!!!」


そう叫んだと同時に鉄扉が破壊される


その先から現れたのは豚の顔に巨体 そしてアシュレイに向ける気持ち悪い視線


ファンタジー作品ではよくあるオークと呼ばれる者達だった


オーク達の視線に気づき震えるアシュレイを俺の後ろに隠しながら考える


俺が死ねばアシュレイに待ってる結末は最悪だ


このイベントか鬱要素になる原因は魔獣による殺戮 だがもしオークやゴブリンが居ると言うなら....


「...」


あの馬車に居た女性達の末路は....


「...」


...なんでこの世界はこんなに残酷なんだッ.....


オークのうちの一体はこちらへまるで弄ぶかのように近づいてくる


そして止まったかと思えば



「ガァッ!?」


一瞬にして目の前に現れ 俺に強烈な右フックを食らわせてくる


「○○!!!」


アシュレイ悲鳴にも近い呼び声が聞こえるもいきなり殴り飛ばされた俺はそれどころじゃなかった


「ぐっ...痛ぇ...」


おそらく骨が何本か折れた 今まで感じたことの無い激痛に襲われながら俺は何とか立ち上がる


オーク達はニヤニヤしながら俺の様子を見ている


あの様子から俺が即死じゃなかったのは手加減されてたかららしい


「...ざけんなよ...」


俺達が何をしたんだよ


ただ日常を過ごしてただけなのに


「...ふざけんなよ...!!」


痛みと悲しみと怒りと憎しみでぐちゃぐちゃになる


正常な判断が出来なくなった俺は無様にもオークに突っ込み


「フゴッ」


思いっきり殴り飛ばされ壁に叩きつけられた


意識が朦朧とする中 アシュレイの悲鳴とオークが彼女に近寄る足音だけが聞こえた













ーーーーーーーーーーーー

やぁみんな!私だ!え?何故更新が遅れたかだって?夏休みが終わったからさ!(絶望)




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