思い出1

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「...」


「ここが目的地?」


「...ああ、迷宮の中でも秘境 というものに分類される場所...閉ざされし神殿だ...綾華が過去に向き合ったんだ...俺もちゃんと向き合わなければいけねぇ..」


あの日の事を俺は覚えている


仲間がこちらに武器を向けたあの日を


相棒と共に神を相手に戦い...相棒を失った日を


俺が記憶を封印した日を


「....」


いくら洗脳されてたとはいえ仲間に一度殺されたのは辛かった


そしてその後に追い討ちのように相棒を失った


「...」


俺は見える範囲で全てを救ってきた


誰かを救う度に原作のように失ってしまうのではないかと考え込んでしまう日々


「...」


それに耐えられなくなって...仲間に殺され、相棒を失ったタイミングで俺は...記憶を封印した


「...戻ってきたぞ」


だけど俺は再び戻ってきた


相棒を助ける為


記憶を取り戻す為


そして俺が過去と向き合い、決意を決める為に


「カバネ」


「...どうした?」


「...私も着いてるから大丈夫」


「...そうだな ありがとよ」


昔も今も俺には守るべきものがある それは変わらない


それが居る限り俺は何度でも立ち直れる 不死鳥のように何度も蘇る


「...行くぞ」


「ん」


あの邪神を倒すために







「...ボロボロ」


「もう何年も人が訪れてない場所だからな...」


あのままの俺なら来ることもなかった 場所


きっと行くとしたら...相棒が戻ってきた時だっただろうな


だけどそんな事も言ってられない


あの英霊を倒すには全盛期の力で吹っ飛ばさないといけない。それ故に俺の記憶を取り戻す必要もある。


全盛期の戦い方を、抱えていた想いを、何故本来なら絶望に包まれていたこの世界で戦い始めたかを。


「...」


静寂に包まれた神殿を俺と綾華は無言で進む


山奥なら動物辺りの声が聞こえてもいいはずだがここには異常と言ってもいいほどその気配すら無い


「....ぐっ!?」


「カバネ!?」


歩んで居た時に急に頭痛が訪れる


頭が割れるように痛たい


「...大丈夫だ。行くぞ」


「....うん」


綾華が心配そうに俺を見るも納得してくれたのかそのまま進む


進む度に俺の頭痛は激しくなっていく...


その痛みは俺の記憶の封印の一部を解いたのか色んな記憶が脳裏にフラッシュバックしていく



******


あれから俺は7歳になった


父からまずは体力を付けるための筋トレを毎日させられている


実際、筋力や体力が徐々に増えていくから達成感は半端ない


スタミナならこの村の子供で1番だろう


子供の友達も何人か出来た 流石に筋トレは無いが一緒に鬼ごっこをしたり チャンバラをたり...感覚が子供に戻ったのかそういう遊びが楽しく感じる


そして今日も俺はそんな友達と一緒に遊んでいた...


そんな時 村の見張り台にある鐘が強く鳴らされる


「な、なにっ!?」


「こわいよ....」


子供達がいきなり鳴り始めた鐘の音に怯える中


「...嫌な予感がする。」


「...そうだな...」


「とりあえず一旦家に戻るぞ!!」


冷静になって周りの子供にそう呼びかけ


俺達は一度親の元に戻った


「父さん!!母さん!!」


「○○ 大丈夫か?」


「○○...良かった...無事で..」


「あの鐘が鳴ったけど一体何が....」


「魔獣だ」


「魔獣....?」


魔獣って確か迷宮から出られないんじゃ...


「お前は聡明だから分かると思うが魔、獣は迷宮から出られない...一体とかなら特異個体と呼ばれるもので説明が付く...しかし今回は...」


「..群れ」


俺が読んだ本の中では今までになかった現象...それに特異個体...何か聞き覚えが...


「...そうだ。パパとママだけで止められるか怪しい大群、他の者に手伝ってもらってようやく足止めが出来るかどうかだ。」


「俺も...」


頭では分かっていてもそう言おうとした俺に対し父は


「ダメだ。分かっているだろう?」


「...だけど」


「大丈夫だ。パパとママは強い それに他の人の協力だってあるんだ。だから...○○ お前は皆と一緒に隣の町まで避難して欲しい」


「...」


「...それにアシュレイちゃんが危ない目にあったら誰が守るの?○○...」


俺の幼馴染のような存在のアシュレイ


青髪青眼のまさに美少女といった感じだ


初めて会う時はびっくりした まだ幼いのに無言で冷たい態度 そのせいで彼女の周りには友達がいなかった


アシュレイは1年前にここに引っ越してきた子だ


何かあったのではと思った俺はアシュレイと関わるのを多くして何とか彼女の心の闇を取り除こうとした。


その結果 彼女は....良くはなったのだが...ある意味悪化したとも言える状態になってしまった


ってそんなことは置いといて


「...わかった。父さん、母さん、絶対生きて帰ってきてね。」


「あったりまえだ!そしたら今度どこかへお出かけしような!」


「ええ、アシュレイちゃんとその御家族の方も一緒にね。」


それが父と母との最後の会話だった





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