人類最大の戦闘狂

ーーーーーーーーーーー


つい数刻前は文明らしい道であったその場所は


地面が割れ、至る所に瓦礫が飛び、文明らしさは損なわれていた。


「まさか...ここまで対応されるとはね。驚いたよ」


本当に手数が多すぎるぞ此奴は...


「はっ...よく言うぜ...隠し玉はまだあるくせによ...」


「いやいや、ここまで粘ったのは君が初めてさ...死ぬ前に誇るといいよ」


「わりぃが...俺はまだ死ねないからな」


「体力も魔力も使い果たし、聖遺物も扱えるような状態ではないのにかい?」


「ああ...なにせ...保険を用意してあるからな」


「むっ」


博士が何かを察知しその場から退避する


「やっぱり来たな...」


俺も巻き込まれないようぼろぼろになった身体に鞭を打って退避する


「ひゃほぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


そんな叫びとともに大きな衝撃と土煙を起こし着地する一人の男


「手紙の主によるとここでやってるみたいだが...どうやらいいタイミングで来たみたいだな?」


長刀を手に持ち不敵な笑みを浮かべる和服の男...


「どうやら新しいお客さんのようだね」


「お前が手紙の主の言っていた強敵か...失望させないでくれよ?」


獲物を見つけたと言わんばかりに眼をギラギラと輝かせる男に対し


「...私の苦手な類が来てしまったようだ...勘弁して欲しいね」


博士は関わりたくない雰囲気を出しながらそう言う


「あ、そこのお前大丈夫か?」


「ああ...回復はどうにかする..それよりあれはとても強い...戦うなら注意してくれ」


「そりゃいいな!!期待が高まるぜ!!」


この戦闘狂バカは放っといて...俺は一旦その場から聖遺物 蜻蛉返りを使い、予め記録していた地点に移動する。


「回復しねぇとな...」


聖遺物 不死鳥の羽を使いボロボロになった身体を癒す


「継続回復なのがあれなんだよな...まぁ...とりあえず瘉えたら嬢ちゃんたちと合流するか。どうせ奴なら勝つだろうしな」



************


「どっせいいい!!!!」


男が刀をただ振るっただけで博士を守っていた結界は壊される


「なんていう馬鹿力なんだい!?結界をものともしないなんて!?」


先ほど カバネと戦ってた際は余裕を見せていた博士


しかし一撃結界を破壊されたことで初めて焦りを見せると同時にこの男はさっきと違うと判断する


「んな薄っぺらいので俺を止められると思うんじゃねえぜ!!!【剣水流 伍の型 激流】!!」


激流のように激しい連撃が博士を襲う


「【コマンド34】!」


博士がそう言い放つとどこからか現れた二振りの刀


それをアームで掴み連撃に対応する


「ほう!なんだそりゃ面白えな!!!」


「【コマンド3】!!」


ドローンから放たれるレーザーが増え常人じゃ一瞬で消し炭になるくらいの威力へと変わる


まるで七色の虹のような色とりどりのレーザーが男へと放たれるが


「おせぇ!!」


男はそれらを避けながら博士へと攻撃を仕掛ける


レーザーを避け時には弾きながら連撃を加えていく


対する博士は二振りの刀と体術で対応するも劣勢を強いられている一方だ。


「それを避けながらなんでこんな連撃をッ!!」


「ガハハハ!!!俺に当てるなら同じ物を後百個用意するんだなぁ!!」


「ッ!!なんでまだ速くなるんだい!?人の身体じゃ耐えれないはず!?」


「んなもん気合でどうにかなるわ!!!ガハハハ!!!!」


「やはりこういうタイプは苦手だよ!!」


水そのもののように自由自在、変幻自在のように男の刀は博士に襲いかかる


「おらよぉ!!!」


そして男の鋭い一撃が博士のアームの一つを切り落とす


「なっ!本当にめちゃくちゃだね!!!魔族でも中々壊せないものだよ!?君は本当に人類かい!?」


「俺はちゃんと人だぜ!!!」


「そう言いながら人を超えている筋力と速さで攻撃してこないでくれないかい!?」


「がははは!!まだまだ行くぞ!!【剣水流 柒の型 凪】」


先程の激しい連撃とは一転


世界が一瞬 静寂に包まれ


まるで水滴が落ちたような音がした後


ズシャ...


肉を切り裂く音がしたと同時に世界は はっとしたように動き出す


「なっ...」


「...終わりか...お前との戦い..楽しかったぜ?」


いつの間にか博士の後ろ側に居た男がそう言う


「まさか...英霊となった私が一撃で沈められるなんてね...」


胸元に大きな傷を受けその場に倒れる博士


「根暗い格好してるからあまり戦えないと思っていたが...意外と俺の連撃に対応出来て、びっくりしたぜ」


「はは..お褒めに預かり光栄だよ...消える前に問いたい...君の名前は?」


「ん?俺か?俺の名は―――」



************


「全く大変な目にあったわい...」


「自業自得でしょうに」


「それはそれとしてさっきの話の続きなんじゃが...もう一つ摩訶不思議な点は宗瑞じゃ」


「彼が一体どうしたんですか?」


「彼奴によると事件の起こる前日くらいに手紙が来たそうじゃ」


「その手紙にはなんと?」


「宗瑞が満足できる敵が理事会本部に現れる...と」


「...つまり」


「理事会本部前があんなになっていたのは宗瑞が原因なわけじゃよ」


「ふむ...手紙の主といい所長と酷似した人物といい謎が増えましたね」


「そうじゃのう...宗瑞は自分の戦いについては一切話さないから当時の敵が誰かも分からんのじゃよ...」


「それは厄介ですね...何とかして聞いておきたいところ...」


*******************


「宗瑞だ。」


「宗瑞...ね。ありがとう。覚えておくよ。」


「あ、やっべ!そろそろ帰んないとバレる!!じゃあな!!」


そう言い飛んでいった男を何とも言えない表情で見送る博士


「殺すなら殺してほしいんだけどねぇ...いや多分どこかでその必要はないと感じてたのかな?ま、それはいいとして...歴史改変の阻止は恐らく失敗だね...まぁでも...クローン制作過程に少し仕込みをさせてもらったし...それに人類にあのような強者がいると知れたのは幸いだね...」


そう言った後、博士は満足そうに消えていった。


それと同時に異常なほど静かで人気の無かった街に人気が戻り、この惨状を見て大騒ぎになり始めていた。



***********


「大丈夫か?嬢ちゃん達」


俺はクローン製造が行われる部屋まで来て、嬢ちゃんたちと合流していた


「あ、久遠さん!?どうしたんですかそんなボロボロになって...」


「博士との戦闘でな...傷は癒やしたし、博士の方は、保険のお陰でもう大丈夫なはずだ」


心配そうにこっちを見てくる嬢ちゃんを撫でながらそう言う


「もしかしてその保険って...」


ん?


「長刀持ってる男性だったりします?」


...なんで知ってんだ?


「...そうだな」


もしや...


「先ほど博士が配置したと思われる人型のロボットと戦闘になるはず...でしたがその男性によって一撃で破壊されまして...」


「道中で空いてた天井の穴はそういうことか...」


どうやら戦闘狂バカが着地場所を間違えたらしい


いやそうはならないだろ。


「それと綾華ちゃんに自壊システムが埋め込まれるのは阻止しました。」


まぁ、そのお陰で嬢ちゃん達に命の危機は無かったし綾華も無事救えた...


「...ありがとう」


良かった...これで綾華は死なずに済む...


「...それじゃあ戻ろっか」


「...」


本当はここで生まれる全員を救ってやりたい


でもそれが出来ない事は十分理解している。


「...お前らから受け取った希望綾華は...絶対守るからな」


そう言って俺は嬢ちゃん達と宿へ戻って行く...はずだったが


「外が騒がしくなってきましたね?」


「大方、彼奴の戦闘跡地を見られたんだろうな...戦闘しているのに何も反応が無かった辺り、博士が何かしら細工をしてたんだろ。」


「ま、マスター!!すぐそこにこっちの様子を確認しに来た探索者たちが!!」


「...レオニダスには悪いが元の時間軸に戻るぞ!!!」


俺は腕時計のボタンを押して時空の歪みを作り出す


「入れ!」


「はーい!!」


「帰還だ帰還だー!!」


「呑気に言ってる場合ですか!!早く行きますよ!!」


そうして俺達は元の時間軸へと帰って行った





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