人類史上最大の狂人
ーーーーーーーーーーーー
深夜、殆どの人が寝静まった時間帯
俺と嬢ちゃん達は理事会本部の眼の前へと来ていた。
暗く明かりのないここはとても不気味だ。
「話した通りここから俺の持つ聖遺物渡すからそれで抜け穴を作って侵入してくれ。場所はここからだ。」
「わかりました。では久遠さん...ご武運を」
「任せとけ」
「良い自信じゃないか、流石は歴史改変を目論む者たちだ」
やけに聞き慣れた声がその場に響く
「何者ッ...!」
「お前ら‥逃げろ」
「周りが暗いねぇ...よし、これで明るくなったね」
その人物はやけにのんびりとした声で何か機械を起動し、その瞬間に俺等とそいつ周辺がスポットライトに当てられたように明るくなる。
「よりにもよって最悪なのを引いちまったな...!!」
「どうやらそちらの彼は私をご存知らしい。嬉しいねぇ、私のことなど人類はとっくに忘れたものだと思っていたよ」
「貴方は...!?」
「改めて自己紹介を...私の名は...そうだねぇ、昔は皆から博士と呼ばれていたよ。もう出会うことはこの先無いだろうけど、よろしく」
英霊の中では一番最悪なやつを引いちまった...!!!
現人類の守護者であり
白衣を纏っており長い黒髪にトレードマークのメガネ...は無いがそれ以外は所長そのものだ。
「所長...?」
「ほう、未来で生きている私はそう呼ばれているのか。」
所長、彼女はクローンに自身を転生させ無限の命を得た、という事になったということになっているが実際は違う。
彼女の意識をクローンにコピーし本体である自分は誰も知らぬうちに消えた。
文字通りだ。それも自身を英霊として未来に顕現するために。
誰もやった試しが無い。失敗すれば目的達成すら困難になるはずなのに確信を持って自ら死に賭けに勝利した狂人
それが此奴。人類史上最大の狂人であり天才、たった一つの目的のため凄まじい執念で数百年も生きている怪物。博士だ
「な、なぜあの人が...!?」
「いいか?お前らは逃げろ。あれは英霊の中でも最悪中の最悪。所長の解析能力と対応力に加え純粋な戦闘技術や技能が加わった怪物。俺でさえ完全に抑えられるか怪しい」
「...久遠さん」
「...駄目だ。若者を死地に行かせるわけにはいけねぇ」
「...マスター分かっているだろう?」
「大丈夫だ。まだマスターの料理満足に食えてないしな」
「...だが...」
「大丈夫...安心して」
「...分かった。嬢ちゃん達を信じる..頼むぞ」
「任せてください!!」
「此奴は俺がどうにかする...中の敵は...すまねぇ」
「久遠さんはあの人との戦闘に集中してください!ぱぱっとすませてきますよ!」
そう言い嬢ちゃん達は博士の横を通り抜けていく
「話は終わったかい?」
「嬢ちゃん達を止めないなんて随分と余裕があるな。博士」
「ははは、勿論彼女たちへの対策はしているさ。それに何より君に興味を持ったからね。私がちゃんと全貌を解析できないなんて初めてだよ」
「そういうやつが身近に居たもんでね」
「なるほど...それじゃあ殺ろうか」
「ああ、お望みどおりな」
俺は夜叉を取り出し、博士はいつの間にか装備していた金属製の2つのアームに4つの小型ドローンのような物を起動させていた。
「悪いけどこれも役目だ。君たちには死んでもらうよ。」
「そんなのごめんだな。俺には負けられない理由があるからな。」
そう言った瞬間、奴の操るドローンから放たれたレーザーを後方に飛ぶことで避ける。
「どうやらそいつは...かなり面倒みてえだな」
「私自ら手作りしたものさ。とくと味わってくれたまえ」
奴のドローンから放たれる様々なタイプのレーザーを避けながら鬼神纏を発動させ奴に攻撃を仕掛ける。
「悪いが近接戦も対策済みさ」
勢いよく首を狙った薙刀の一撃は薄っすらと白く光る結界のようなもので防がれていた。
「ならばそれごと砕くのみ!!!」
「良い向上心だ。是非とも助手に欲しいね。」
奴の目にも止まらぬ速さで動くアームを弾きレーザーを避けながら一点を狙い続ける。
その間、博士自体は一切動く様子はない
「何度も挑むことには感心するが諦めも肝心だよ」
博士がそう言った後、嫌な予感がしたのでその場から退避すると
「おや、初見でこれを避けたか...勘が良いのかそれとも何かしらの方法で感知したのか...」
博士が隠していたもう一本の尻尾型のアームがさっき俺が居た場所を突き破っていた。
あのまま攻撃を続けていたら間違いなく串刺しだったな
「はっ、お得意の武装を最初から全部見せてくりゃ良いのによ」
ただでさえ原作でも出てないと思われる武装があるんだ。勘弁して欲しいな。
「トランプにおいて自分の手札を見せる必要性があるかい?」
「ただの悪態だよ。クソメガネ」
「眼鏡はかけていないがやけに親近感を覚える呼び名だね」
博士が余裕そうにそうつぶやいた瞬間、パリンと甲高い音を鳴らして結界が破れる
博士は瞬時に身体を反らして攻撃を避けるが避けきれず頬に小さな傷を受けてしまった。
「結界が完璧と思うなよ?」
俺は今、奴の体全体を守る結界を奴の油断した隙に一点突破で破壊した。
ここは原作通り変わってないみたいで良かった。
博士は自分の頬に出来た傷に手を当て、付着した血を見て驚いた表情をし
「これは驚いた。まさか破られるなんてね...君の実力を甘く見ていたよ。」
「あんまり低く見積もっていると痛い目見るぜ?」
「またそうならないように学習し対策を練るのが人類さ。次への教訓にさせてもらうよ。それじゃあこちらも少し本気を出さないとね」
博士がそう言った後、奴の新たな武装が出現した
「はぁあ!!」
博士が勢いよく地面を踏みしめそれと同時に三本のアームも勢いよく振り下ろされる。
地面が割れ、瓦礫が飛び、土煙が上がる中
「私の作った物でかなりの発明だと思うのだが...どうだい?
俺と博士、そして周囲の瓦礫は宙へと浮かび上がる。
幸い俺はハクビシンの草鞋があるためこれはあまり関係ない...強いて言うなら奴がこれから投擲物として自在に操ってくる瓦礫の対処が面倒だ。
「ふむ...どうやらその草鞋のおかげであまり効いてない様子だね。残念だ。しかし私の手札はまだある。」
「その全部を打ち破ってやるよ。かかってこい」
「今回の手札はあまり好きじゃないんだ...故に」
博士の姿が目の前から消える
「手短に終わらせるとするよ」
その瞬間、俺はいつの間にか吹き飛ばされていた
***********
「久遠さん大丈夫かな...」
「大丈夫だって!マスターはあんなに強かったんだよ?」
「今は久遠さんを信じましょう。私達はやるべきことをしないと」
「特に警備している探索者には出会わなかったな」
「...バレても顔隠してるし黙らせばセーフ」
「全員格上だと思って行動してくださいね...」
主人公たちは研究所へ向けて静かに歩み続ける。
「ここが...」
「どうやらこの先に例の場所があるみたいです。行きますよ」
「ん」
「着いたは良いものの...」
「あれは一体...」
「...先程の博士と名乗った人物が久遠さんの言う敵対存在であれば...あんな簡単に私達を通してくれた理由が分かりますね。」
「それにしても研究者くらい居ると思ったんだけどな...」
「それどころか警備すら居ないはっきり言って異常だね。前方に居る人型の何かといい警戒したほうが良い」
研究所の奥地に辿り着いた主人公たち、道中で他の人物に一切出会わなかった事に警戒する中、クローンの製造が行われる部屋の入口に人型の何かが居るのを発見する。
「侵入者...発見、即刻、排除します」
「全員戦闘態勢!!!」
「敵データ解析...プランBが有効と判断。波動砲発射」
「ッ!?ノータイムでッ!?」
「みんな!!避け―――」
ズガァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!
「...あれ?攻撃されてない?」
「なんでこんなに土煙が...こほっこほっ」
「ッ...皆警戒して」
本来主人公たちの命を奪うはずだった試作人型自立式ロボ405は沈黙していた
「あれ?着地場所間違えたか?」
長刀を405に突き刺して恐らく外から地下に侵入してきた謎の男によって...
「手紙の主は...あ、やっべ!入口って書いてあんじゃん!?急がねぇと戦闘が終わっちまう!!」
そう言い残し謎の男は自分の空けた穴から飛び去っていった
「...脳の処理が追いつかない」
「あの一瞬で仕留めたのですか...!?それもただ場所を間違えただけで...?」
「おい、これ...俺等の武器じゃ刃が立たないくらい硬えぞ!?」
「...なにはともあれ幸運だったね...おそらく僕たちが戦闘していたら...とりあえず先を急ごう」
アクシデントがありつつも主人公たちはついにクローン製造が行われる部屋へと突入した
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます