鷹の目と獅子

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俺達が現在滞在している街 理事会本部か存在するシスタニア共和国首都 リセア


和気あいあいとした騒々しい雰囲気とは一転 静かで暗い雰囲気で包まれる路地裏


そこにて俺はペストマスクを着けた男性と対峙していた


「...鷹の目、だな」


「おやおや、どうやらお客さんのようで...その名で呼ぶという事は情報をお望みですかね?


「ああ...お前さんがどういう人物かは知ってるからな。依頼人の情報は漏らさないし、見合った金さえ払えば情報を提供してくれる」


「そんなに褒めても何も出ませんよ。さて本題に入りましょうか...何の情報がお望みで?」


「理事会本部の地下にある研究所、そこで行われるクローン製造の開始日だ」


「ふむ...それについては一部、情報を掴んでありますので折角ですしサービスで教えて差し上げましょう」


「いや、遠慮しておく。そういうのにはちゃんと金を払いたい」


此奴相手に貸しを作るのはリスクがデカすぎる。金さえあればどんな情報だろうと集めてくる奴だ。何されるか分からん


「そうですか...私の善意はどうやら無下にされたご様子...」


「善意と言っておきながら貸しにして、後からえげつない要求をする。お前の手口は知ってるぞ」


そう言うと鷹の目は演技ぶった感じで


「えげつないとは、とんでもない!!私は善意のお返しにをしているだけですよ?」


「化けの皮被るのはやめとけ、こっちは知ってるからな」


「被って等居ないのに...それはそれとして、対価は此方です」


案外ふっかけてくるかと思ったが、手持ちで十分足りるな。俺は提示された金額を払う


「...何が望みだ?」


「いえいえ、貴方は面白そうですし...また深く交流したいと思いましてね...」


「他の客に対してぼったくってるのは自覚あんのかよ。」


「情報の大切さは貴方も理解しているでしょう?またの名を さん?」


「...ちっ、やっぱり気づいてやがったか」


正直此奴相手に自分の情報を明かさず取引なんて、無理に等しい。此奴の持つ天啓シリーズの1つ 全能の眼ラプラスの悪魔のせいでな...時飛びの影響も考慮してバレない可能性も考慮はしてたが...


「そりゃ勿論!私が貴方のような世界的人物を相手に気づかないとでも?」


「はぁ...めんどくせぇな んなら大方こっちの事情は把握してんだろ?」


「勿論ですよ。その上で言いましょう...貴方 この先死にますよ?自分がなにをやるかご存知で?」


「構わねぇ」


例え俺が死のうと...綾華を救えりゃいい


「即答...そうですか...貴方とは長い付き合いを想定していたのですが...残念です。それはそれとして...対価も頂きましたし、まずこちらが掴んでる情報から」


「ああ」


「理事会本部地下研究所のクローン製造日は未だ確定していません」


「...なに?」


「確定していません。今年中には行われるでしょうが...私の推測が入るなら早くて2週間 遅くて1ヶ月でしょう」


ガセを掴まされたようなもんだが...此奴は情報に関しては嘘を言わねぇ..


「...助かる」


めんどくせぇ事になったな...


「いえいえ、私の方でも探りは入れておきましょう。何かあれば連絡しますので」


「そうか...助かる...


「何時でしょうか...恐らく2年後でしょうかね」


「そうか...」


あの時間軸に居ないとは思ったが...此奴が居ないのは、この先厳しいな。


「ああ、そういえば言い忘れてました」


「なんだ?」


「...あそこは私の眼を持ってしても分からない存在がありました。潜入する際はお気をつけて」


...マジか、恐らく時飛びの影響の1つだとは思うが...此奴が分からないと言うのは相当だぞ?


「それではまた会いましょう」


「ああ、またな」


鷹の目がそう言った後 瞬きをした瞬間


彼奴はもう居なくなっていた


「...どうせ俺が会いに来ることも掴んでたんだろうな..」


所長と言い 宗瑞のジジイと言い なんで人類にはそれぞれの分野に特化した怪物が居るのやら...


俺は誰も居なくなった路地裏を後にした



*******

午後19:00 獅子の花園 食堂


「わぁ...!!」


獅子の花園 ここは料理を頼んたりコースで出てきたり...というタイプでは無く


「たこ焼き..唐揚げ..ポテト...焼きそば...!!」


「ショートケーキ..モンブラン...パンケーキに...クレープもある!!」


所謂 バイキング指揮である


「ラーメンもあるぞ!?」


それに関してはちゃんと作るみたいだ


流石 俺らの時間軸での金剛級 その身体能力と精密さをフルで活かして目にも止まらぬ速さでラーメンを作っている


「凄い...」


「こちら ヤサイマシマシアブラマシマシニンニクカラメです」


「うぉぉおおおおお!!!1度食べてみたかったんだ!!」


「えぇ...」


「なんかマスターのカフェを彷彿とさせられるバリエーションだね...」


「二郎系もやれるのか...ふむ...」


「何対抗しようとしてるんですか!!今でも十分ですよ!!」



そうして楽しい食事も過ぎ去り...



「...はぁ」


俺は此処に作られたテラスで久々に煙管を吸っていた


「...明日からはすぐ動かないとな」


満天に輝く月と星を見ながら、そう呟く


「お悩み事でも?」


すると後ろから扉が開いた音がしたと同時に渋い男性の声が聞こえた


「...あんたか」


「はい、悩み事があるようでしたので、良ければ 聞きますよ」


レオニダス、心優しき獅子の巨人


そいつが隣で俺と同じように、葉巻を吸い始めた


「...俺達がここに来たのは俺の養子である娘を救う為なんだよ」


「...それは..大変辛かったでしょうに..」


「..先が短くなる前に原因を取り除く為 俺はここに来た。あの子達は...娘の友人とその友人、協力する為に来てくれたんだ」


「...とても、良い子達なんですね」


「ああ...あの子とは知り合ってすぐだってのに...本当に良い子達だよ」


「...そんな子達に慕われてる貴方も...とても素晴らしい人なんでしょうね」


こうして時飛びに着いてきてくれた嬢ちゃん達を思い浮かべる...彼女らのピンチを俺らは知っている。俺の知識を使えばもっと良い方向に向けられる 犠牲の無い旅路を作れる...だけどそれは...本当に良いものなのだろうか...きっとそうすれば、嬢ちゃん達の成長を蝕んでしまう...そう恐れて知っているのに、やらない最低な男が慕わている...複雑だな。


「素晴らしい...か...どうだろうな...なんにせよ聞いてくれて助かったよ...あんたも...なんか悩みがあんじゃねぇか?元金級探索者さんよ」


煙を吹きながらレオニダスにそう言う


「...バレていましたか」


「ああ、事前リサーチはしといたからな」


「...私の悩み...悩みというより今 こうやって宿を経営してる理由になります..かね」


レオニダスは悲しそうな目で月を見ながら話し始めた


「この宿は私と...もう1人の大切だった幼馴染の夢だったんですよ」


「...そうなのか」


「いつか、誰もが身分関係無く安心して寛げる宿を作りたい。それが私達の夢でした。」


「...」


「ですが私と幼馴染は離れ離れになり...どれだけ彼を探しても見つかりませんでした。」


夜空に静かに輝く星を見つめるレオニダスの目は諦めているように見えた。


「あの輝く星同士のように...彼と私は離れてしまった...」


「...どうして...離れ離れになったんだ?」


「...他言無用でお願いします」


「ああ、約束する」


「...私と幼馴染はかつて...奴隷でした」


「なっ...奴隷って禁じられてるはずじゃ...」


動揺してしまうもレオニダスは気にせず話を続ける


「違法奴隷..生活に苦しくなった親が幼い私を売り...そこで幼馴染と出会いました...私のこの名前も..彼が付けてくれたんですよ」


「レオニダス...」


「古代ペルシアを相手に少数の軍を率いて戦い...戦死した勇猛なる王の名を私につけてくれました...あの時弱かった私に 勇気と力あるかっこいい獅子になれますように と」


「..良い人だったんだな」


「ええ...とても...とても...」


俺には分からないがレオニダスは彼の言う幼馴染との思い出を噛み締めるように話していた


「彼とまた会えたら..と叶わないであろう願いを抱える私が居るんです。絶対叶うわけないのに...」


「良いじゃねぇか、諦めなきゃ願いは叶う。そういうもんだ。手の届かないと思ってもいつかは星を手に取れるかもしれねぇ...諦めるのは早いぜ」


「...ふふ、そうですね。ありがとうございます」


ただの励ましだが...無いよりはマシだろう


「もし協力してくれる事がありゃ言ってくれ、伝は多いからよ」


「...ええ、その時はお願いします」


「悩みを聞いてくれた礼だ...7年後、ここで店をやる 是非来てくれ...その時は良いコーヒーでもご馳走するからよ」


俺の店の位置が記された紙を渡す


「それは楽しみですね...ブラックでお願いしますよ」


「ああ、勿論さ...」


そうしてその後、夜空に輝く星と月の中で、俺とレオニダスは何も話さず、静かに煙を吹かしていた。






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3章終わったら登場人物紹介とかしようかな...





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