拠点確保

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「ここが7年前...」


「雲ひとつ無いのに空が灰色...」


「心做しか陰鬱とした雰囲気がしますね...」


「本当にタイムスリップするなんてな...こりゃ帰ったら母ちゃんに、話す話のネタが増えたぜ。」


「...この時代は暗黒期、言い換えるなら氷河期みたいなものだ。世界最強の英雄 紅が死亡した影響はとても...大きかった」


「...マスター 1つ 気になることがあるんだけど」


「...なんだ?」


「7年前、それは過去の僕達やマスターも存在するはず...もし仮に出会ってしまったらどうなるんだい?」


「それは所長は話していなかったが..向こうが俺らを自身と同一人物と認識しない限りは問題無い 仮にそうなったら...下手したら存在自体が消えかねないだろうな」


「私たちは年齢が離れてるからまだしも...」


「久遠さんは気をつけないといけませんね」


「勿論だ それじゃあ着いてきてくれ...まずは宿を取るぞ」


「拠点確保ですね!!」


「ああ...良い宿を知ってるからな」


俺らの方の時間軸で後に世界トップレベルの宿泊施設と呼ばれる宿


この時間軸では引退した元金級


俺らの方では復帰した金剛級の探索者


と呼ばれた心優しき無愛想な巨人


レオニダス・グラッズが経営する "獅子の花園"だ








「これが...」


俺らの目の前にあるのは西洋風の建築が成された二階建ての屋敷だ


管理しているものは、余程の技術を持っているのが素人目でも分かる庭園の美しさ。


街の端に建てられており、中心部の騒々しさとは一転した静かな落ち着いた雰囲気。


パッと見まるでどこかの高級ホテルのようだ。


「く、久遠さん...こ、ここ 高級なとこじゃないですか...?」


「安心しろ 宿泊代はそれなりのはずだ。」


「勿論です。私は皆様に安らいで頂きたいだけですから」


音もなく現れた執事服に身を包んだ、大柄で金髪の無愛想な獅子の獣人男性


レオニダス・グラッズ 金獅子と呼ばれた男だ


「宿を取りたい 期間は長くなるがいつ終わるかは分からないのだが...」


「大丈夫ですよ 大体の目安はついていますか?」


「ああ とりあえず最低2週間は居る」


「承知しました 6名様で2週間ですね。滞在延長も可能ですのでもし長引く際は一言、お申し付けください。」


「ああ、助かる」


「いえいえ、それではお部屋にご案内しましょう。今は空いて居ますので、個室か団体部屋 お好きな方をお選び頂けます。」


「俺はどちらでも構わないが」


「個室!」


「団体部屋!」


「私はどちらでも構いません」


「僕もかな」


「どっちでもいい」


「「最初はグー!!じゃんけん!!」


「グー!!」


「チョキ!!」


「やったぁ!勝った!」


「ちくしょう負けた!!団体部屋に憧れあったのによぉ..」


「また次の機会だな」


「それでは決まったようですしお部屋へご案内します。ですがその前に注意点をいくつか まず宿 獅子の花園をご利用頂きありがとうございます。ここでは朝食と夕食が出ますが決まった時間に出しますので、時間になったら食堂にお集まりください。消灯時間は22:00です。それより先の外出は事前にお伝えください。」


「分かった 他に何かあるか?」


「...当宿はお客様の情報を決して外部に出したりはしません。ですのでありのままで寛ぎ 御自身を労ってあげてください。以上です。」


...ここは変わらないな 俺らの方でもずっとそうだった


「それではご案内しますね」


レオニダスに連れられ 俺らは落ち着いた雰囲気の漂う屋敷へと入って行った




ふかふかのベッドにソファー、テレビや個室風呂、それかつベランダまでも着いているあまりにも豪華な個室にて俺は一息ついていた


「ふぅ...とりあえず活動する為の拠点は確保出来たな」


ここはレオニダス自体が実力者なのもあって警備は完璧、それに本人が言った通りの想いもあり情報が外に出ることは決してない。


歴史改変という所業をやる関係上、ここはあまりにも都合が良すぎる。


「それじゃあ...とりあえず嬢ちゃん達と合流するか」


改めてこれからどう動くか確認しないとな






「さて...どうだ?ここは」


「最高です!!ベッドふかふか!!」


「庭園に行ってみたいですね...とても綺麗でした」


「あのオーナー?主人?の人めっちゃかっこよかったぜ...」


「ベランダがついてるのはびっくりだったね...」


「ご飯 美味しいのかな」


「それは保証するぜ」


「楽しみ」


「さて...その感想は機会があったら彼に伝えてやるといい、表面には出さないが喜ぶはずだ。」


「勿論です!!」


「それじゃあ...本題に入ろうか 今回俺らがやるのは理事会の研究所への潜入、そして綾華に自壊システムが組み込まれないように阻止することだ。」


「それはこの時代に来る前にも確認しましたね。」


「んで...問題なのはどのタイミングで遺伝子が組み込まれるかだ」


「確かに...資料とか残ってなかったんですか?」


「大粛清の際に粛清された側が燃やしたみたいでな...聖遺物での修復も無理だった」


「そんな...」


「だから...まずは情報を集める必要がある。」


「...情報屋ですか?」


「ああ、この時代には世界最高峰の情報網を持つ 金さえ払えば顧客の情報は守り、望んだ情報を持ってくる...【鷹の目】と呼ばれた情報屋が居る」


「まるで現代には居ないみたいな...」


「そいつの場所は一応知っている。だから..嬢ちゃん達はここでゆっくりするのもよし 迷宮に行くのもよし 一旦好きにしてくれ」


「協会に行くのは...」


「やめておけ この時代に存在しない探索者が訪れたとなると騒動になる。迷宮ならわざわざ確認する奴も居ないからそっちにしてくれ。」


「了解!」


「飲食店周り...良い?」


「...小遣い出してやるからその範囲にしろ」


「良いの?」


「協力してくれる礼だ 言ってくれれば小遣いは出す、宿泊代も俺が持っておくから安心しろ」


「よっ、マスター太っ腹!」


「今は昼過ぎだし夕食まで時間がある。ゆっくりしていてくれ」


「はーい」


「マスターもゆっくり休んで」


「ああ」



そうして俺達はまた各自部屋に戻った



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