過去へ


ーーーーーーーーーーーーー


「さて、過去に行くにしてもまずその当時の状況を把握しておかないといけない。」


「確かに..」


「情報は必須ですからね。」


「その状況については私よりも....彼の方が詳しい」


「久遠さんが?」


「ああ、丁度俺がまだ探索者をやってた頃だからな」


「ってことは意外と近い...?」


「それは...7年前、色付き紅が死亡し探索者界隈自体に暗い雰囲気が漂ってた時代だ。第二次魔獣氾濫より2年前になる。」


「そんな時代に...」


「...綾華ちゃんに命の危機が迫ってる原因は?」


「...」


綾華の出生に関してはあまり話したくない..が


「さっさと話しなよ。協力してもらうからには教えないといけない。」


彼奴を救う為だ。 致し方ない


「...ああ、綾華は...クローンの1種なんだ」


「へ?」


「えぇ!?」


「理事会がかつて作り出した対魔獣戦闘クローン No.007 それが綾華だ。」


「ってことは他にも...」


「ああ、居たさ...だが綾華を残して皆...第二次魔獣氾濫で死んだ...」


「そんな...」


「ッ...理事会はそれを今も隠しているんですか!?」


「ああ...そして秘密裏に色付き橙が先導した大粛清が行われた。それによりこの件に関わってた奴も全員消され、全て終わるはず...だった。」


「...終わらなかったんですね」


「...ああ」


原作にてそもそも 綾華 という存在は語られなかった。原作では対魔獣戦闘クローンというものが第二次魔獣氾濫にて使われた とだけ語られていた。


俺はそれ故に...いや..俺がもっとちゃんとしていれば...彼奴らを救えた...


俺は疑うべきだった。理事会の豚共が孤児を保護し孤児院を作るとかいう善行をする訳ないと...


直前で、所長から手紙が送られてきて行った先には...綾華が1人だけ生き残っていた...


「...綾華の遺伝子には自壊システムが組み込まれている」


「自壊システム?」


「用済みになったら消す為に自らの生命機能を停止、そして塵となって消えていくようにされている。人がそんなやっていい所業じゃないよ。」


「だから綾華ちゃんは...」


「...今回、過去に行くのは綾華の遺伝子に自壊システムが組み込まれないようにする為だ。」


「そ、それなら他の子にも何かしら施してあげて救えば...」


「ダメだよ」


嬢ちゃんが言った言葉を上から被せるように否定する所長


「綾華ちゃんを救うだけでもかなりリスクが高いんだ。それは歴史改変...本来死ぬべきだった生物が生きるだけでも十分今の世界に影響を与え、それを訂正するために何かしらの現象が生じる。」


「つまり?」


「...綾華を死なせる為に出現するクソ野郎が居るわけだ」


「それの対処は私と彼で当たる 何せ私もデータは取っておきたいからね」


「そんな訳で...俺らが過去に行ったら目指す場所は理事会本部...そしてその地下に隠されたクローンを製造する為の研究所。」


「当時の見取り図は私が大粛清された時に理事会からこっそり頂いてコピーしたからね。渡しておくよ。」


「これが...」


「この見取り図の最奥 ここでクローンが製造されており...途中で遺伝子に自壊システムが組み込まれる。組み込まれる機構はここだ。一応覚えておいてくれ。」


「...覚えた」


「そうか...で実際の行動だが、まず注意するのがこの時代の探索者達は今の探索者達より強い 何より第二次魔獣氾濫で死亡するが数々の街や国を守りきったある種のだ。この時代の金級は基本は今の金剛級レベルだと思え。」


「そんなに...」


「それでも尚大量の死者が出た第二次魔獣氾濫...一体どんな惨劇が...」


...今でも思い出す。灰色の空に荒れ果てた荒野


辺りに広がるのは魔獣とあの子達の死体


そしてそれから出てきた血溜まりと強烈な生臭い匂い


その中に1人、放心した状態で立ち尽くしている綾華


...二度と思い出したくない...だが...


「...だから潜入は夜に行う 夜なら多少は人が少ない だがそれでも見回りや研究所の入り口を守護してる奴はいるはずだ。だから俺が先導し陽動を起こす。」


...少しでも彼奴らの希望綾華を生かすんだ


「え?でもどうやって...」


「...方法はあるんだ 悪いがこれは俺の切り札、そう簡単に話せるやつじゃない」


今の俺の切り札 相棒無しじゃ己の命を削る危険な方法。


...勿論 仮に死にかけた時の策もある。


だがそれは俺という存在の焼却に至る可能性が高い


「そう..ですか...」


「久遠さんの実力が分かりませんので1度見てみたいのですが...」


「...所長」


「そう言うと思って用意しといたさ。この動画を見な」


所長がどこかからか取り出したリモコンのボタンを押すと、すぐ横の壁が機械音を鳴らして変形し大きなテレビとなり、映像が映し出される


「これは...」


そこに映るのは黒騎士装備をした俺と2本の刀を携えた道真だった


「探索者闘技祭!?」


「マスター参加してたの!?」


「しかも出てるのは零夜が負けてしまった侍じゃん!!」


「...まさか久遠さん...」


「...ああ、俺は昔..黒騎士と呼ばれていた」


「どこからともなく現れ、助けを求める探索者を救い、何も貰わず去っていく正体不明の黒騎士...貴方だったんですね」


「凄い..金剛級の探索者と互角...」


「...実力は把握してもらったと思う。だから俺が陽動を行おう。だから綾華については....頼む」


それに対し 真面目な顔で凛が答えた


「...任せて」


「...ありがとう」


「さて、大まかな作戦会議も終えたみたいだし...早速始めるよ。こっちに来てくれ」


所長の指示に従い俺らは別の部屋へと移動した。








「さて...まずはクロノスを目覚めさせてくれ」


「...分かった」


混沌の刻み時計を手元に出す


「...」


此奴との出会いは...確か あの迷宮でか...



*****

15年前 SS級迷宮 オリュンポス 5層


神々しい光が差す崩れた神殿の中、そこには紅い槍を片手に持ち紅いパワードスーツに身を包んだ1人の人間と巨大な振り子時計が対峙していた。


『...汝が 我を己が物にしようと挑戦する勇士か』


『...ああ』


『ならば我が試練を乗り越え我を所有するかにふさわしいか認めさせてみよ!!』


『...かかってこい』


『秒針を刻む事に襲い掛かる災厄 汝に乗り越えられるか?』


『遅い』


挑戦者へと降りかかる様々な厄災


それらを避けながらその者は宣言する


『行くぞ相棒!!紅い嵐テュポーン!!』




*******


「...」


『久しぶりだな 我が主よ』


「...ああ おはよう クロノス」


『その様子だと...他の奴らは起きていないようだな』


「...そうだ。今、俺がお前の力を借りたいと願い、お前を目覚めさせた」


『そうか...我らの力全然頼りにしなかった主からそう言われるのは感慨深いな』


「...」


『それにこの感覚...我の片割れが居るようだな?』


「...ああ お前の片割れに認められた奴が居る」


『そうか...つまり...時を超えたいのか 我が主よ』


「..ああ、大切な者を守る為に」


『...良い目だ 出会った時とは全く違う目だ。守る者が出来たようだな 我が主よ。ならば良かろう。』


「...ありがとう」


『気にするな。それじゃあ早く始めるぞ』


「...クロノスは目覚めた」


「okだ それじゃあ今度はカイロスを」


「うん、はい」


振り子時計と天秤


お互いに何かしらの現象を図る物が揃った


『我が主よ お主はいつの時代に飛びたい?』


「...7年前だ」


『そう焦るな 曖昧では困る...我が主の記憶を読み取った限りだとここら辺か』


「...助かる」


『次はもう少し丁寧に頼むぞ...カイロス 行くぞ』


時計クロノスが秒針を動かし始め 時空の歪みを作り出す。そしてその量を天秤カイロスが測り、調整する。


それによって部屋の中心に、まるで写真から切り抜いたかのように出現した時空の歪み


その先には薄らと別の光景が見える


「健闘を祈るよ。その先に行ったら私との連絡は取れない。それにその時代の私との接触はおそらく不可能だ。」


『我が主とその仲間達よ これを身につけていてくれ』


クロノスが念力を使って渡してきたのは天秤が刻まれた腕時計だった


『その腕時計の横にあるボタン押せば我とカイロスがまた時空の歪を作る。それで帰れるはずだ。だが気をつけろ 時飛びはそう何回も行えるものでは無い。何回もしてしまえばこの時間軸に何が起こるかが分からないからな。』


「了解だ..肝に銘じておく」


『ゲートを開いた地点の安全は保証しておく』


「久遠さん この腕時計は...」


「その腕時計の横にあるボタン。それを押せばクロノス達がまたゲートを開いてくれる。」


「なるほど...なら危なくなったら帰れば...」


「それは所長が話したように歴史改変と似たようなリスクが発生する。そう何回も無理だ。」


「良いアイディアだと思ったのに...」


「それじゃあ行くぞ...綾華、ゆっくり待っていてくれ」


「綾華ちゃんを救う為に!」


「いざ過去へ!」


「レッツゴー!!」


「皆さん 安全第一で行きましょう」


「...綾華ちゃん。これが終わったらまたご飯...一緒に食べようね」


嬢ちゃん達が先にゲートへと入っていく


「...綾華 ゆっくり寝て、待っててくれよ。帰ってきたらまた何か作ってやるからよ。」


そうして俺も嬢ちゃん達に続き、ゲートへと入った。





「...行ったようだね。さてと...彼らが帰ってくるまで私は...この先、人類の敵となる存在の対策を進めとこうかな。大方正体は予想着いてるしね」


所長は誰も居なくなった部屋でそう呟く


「そいつらを倒せば...あの子は...あの人は...救う事ができる。あの人さえ居れば私はもうどうだっていい、この世界、人類、未来、全てどうでもいい...だから成功してくれよ...久遠君」




ーーーーーーーーーーーー

やぁ みんな!私だ!週間ファンタジーランキングが18位になったぞ!! なんで?(震え声)


いや本当に、私がただ自分で供給したいだけの小説を、こんな読んでくださって本当にありがとうございます。 勢いとノリで書いてることが多いので、誤字やらミスやらが多いですがこの作品をこれからもよろしくお願いします。

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