第3章 過去へ

30年前

ーーーーーーーー



「お、俺の指を掴んだぞ!!」


「貴方 そう騒がないの この子が起きちゃうでしょ」


力強い男性の声と優しい女性の声が聞こえる


「この子の目はまだ開いてないが...どんな目をしてるんだろうな 俺に似て力強い目か...君に似て心優しい目...楽しみだな」


「まぁ、貴方ったらせっかちね 」


「そりゃそうだろ!俺と君の大切な宝物だぜ?」


「ふふふ、そうね 私と貴方の大切な結晶...これから よろしくね ○○○」





「はっ....」


目が覚める 横には静かに眠る綾華


汗で背中がびしょびしょだ


「...あれは...30年前の夢か」


この世界に転生した直後の時だ


俺の父と母だった人の数少ない記憶


「...俺が名を変えた理由」


俺の元の名は久遠 カバネ なんかでは無い...俺の本当の名前は...


「うっ...過去の俺のせいで思い出せねぇな...」


かつての名を思い出そうとする度に頭が酷い痛みに襲われる


「...あの時は知らなかったからな この世界が...あのゲームの世界とは...な...」



********


「○○が俺を見てるぞ!そんなにパパが好きか〜?うりうり〜」


今目の前で俺の頬をいじっているこの男性はどうやら俺の父らしい


「あらあら そんなに触れてると○○に嫌われるわよ〜?」


「それは嫌だな...だが赤ちゃんの○○とももっと触れ合いたい!!」


どうやら俺は とても暖かい家族の元に産まれたらしい



2年後


「あ、こら ○○ 勝手に外に出ようとしちゃダメよ」


「あうあう...」


どうやらこの世界は...前世の世界と違って魔法や魔道具が存在するらしい


いわゆるファンタジーってやつだ


前世でやってたゲームみたいな事がこの世界で体験できると思うとワクワクしてくる


だから自然と何度も外へ歩んで行こうとするのは仕方ないんだ


なにせ魔力の知覚方法が分からない


だから魔法をやれる訳でも無いし かと言って幼児の体力は少ない故 あまり行動はできない


この前 もし回復魔法があるなら怪我すれば治してくれるしそこから魔力を感じれるのではと思ったが普通に消毒からの絆創膏コンボで終わりだった


どうやら回復魔法は普及してないらしい


悲しみに包まれるも仕方ないと思い 今は何とか文字の習得を頑張っている


この世界の文字は前世の世界と似ているが全く違う


似ているけど正反対の意味だったり見当違いの意味だったりするのだ


絵本を読んで違和感ないようにしてはいるが幼児の体力のせいで進みはあまり良くない


だが頑張って習得せねば...






あれから4年後 今の俺は6歳 ギリ外に出ても良い年齢になった 親の同伴が必要ではあるが


それと魔法も少し発動出来るようになった


魔力を知覚するのが難しかったし方法がなかったのだがそれは我らが息子に激甘の父に手伝ってもらった


尚 その後 母にバレて2人揃って大目玉を食らった




この世界はファンタジーと前世の世界が合わさったような感じだ


車は存在するし電気は普通に扱う


だけど魔法を生活の中に組み込んでいて魔道具と呼ばれる生活に必要な道具が存在する


そして何より迷宮と魔獣が存在するらしい


これは今も探索者をやってる父と今は引退してる母から聞いた話だ


父は探索者のランクを表す級の中で金剛級 つまり最上位のランク 母は金級 上から2番目のランクらしい


つまりめっちゃつよつよな訳だ


それに成長したら父に鍛えてもらう約束をしている


その日が待ち遠しい




*******


「...これ以上は...ダメだ 頭痛がひでぇ...」


昔の回想をしていくほど 頭が痛くなる


名を思い出そうとする時レベルではないが...


頭痛が収まるのを待っていると横から服をくいくいと引っ張られる


「起こしてしまったか...」


「カバネ...大丈夫...?」


「あぁ...ちょっと目覚めてしまっただけだ」


「嘘 カバネ 顔が青白いし背汗凄いよ」


「...悪夢を見ちまったんだよ 昔の俺が蓋をした嫌な過去をな...」


「...何かあったら話して 絶対 力になる」


「そりゃ頼もしいな...ありがとよ 俺は一旦シャワーでも浴びてくる」


「...うん、行ってらっしゃい」





「カバネ...大丈夫?あの日探索者闘技祭からずっと魘されてる...」





「...俺も過去と向き合わねぇとか...」


俺の過去は...思い出したくない というより思い出せない


昔の俺が封じた影響で


俺が覚えてるのはあのゲームの知識と相棒のこと そして生まれて数年の記憶のみ


「...今思えば...シンシアやアシュレイ アッシュと出会うところは覚えているがそれ以前は何をしていたか分からない...」


相棒との出会いも 他の天啓シリーズの奴らとの出会いも覚えてない


「他の 天啓シリーズは全員...休眠状態だしな...」


聖魔大戦以来 俺は相棒以外の天啓シリーズを出していない


そして俺の精神状態もあるのかずっと休眠状態だ


「...彼奴らや綾華が過去に向き合ったんだ...俺も...向き合わねぇとな」


そうとすれば...所長に会いに行ってみるか


彼奴なら何か...封じてしまった記憶を見る方法が分かるかもしれない




「悪いな、綾華」


「ううん この前のゲーム付き合ってくれたから」


「そうか...それにしてもいつ来てもここは...」


目の前にあるのは不気味な小屋 共和国最東端に存在するこの小屋に所長が住んでいる


見た目はただのボロっちい小屋だが地下に様々な研究施設や生活スペースが展開されている


小屋の扉をノックすると


「...久しぶりだねぇ カバネ君」


「ああ、久しぶりだな 所長 先日は助かった」


「いいよいいよ 君を手助けすることは人類の存続に繋がるからね」


「...相変わらずだな」


「ははは、私の目的は昔からずっとこれさ」


所長 表向きは金剛級の探索者だが裏の姿は...己が研究結果を利用し自身を創り出したクローンへと転生させ 事実上の無限の命を得た人類の隠れた守護者 そうまでして生きる理由は人類の存続の為


それ故に此奴は人類存続の為の合理的な手段を取る 大を生かすために平気で小を殺す人間だ


「君がこうして私を頼るのは前回含めてこれで2回目だ」


「ああ、今回 所長に頼みたいのは...俺が昔に封じた過去の記憶を見たい それの手助けをして欲しい」


「ふうん...君の過去ね...確かに気になるよ どうしたら君のような心と記憶が歪になってる人物が出来るのか...良いよ 協力してあげる だけどもちろん条件はあるさ」


「...なんだ」


「君と共にいる少女 かつて理事会の馬鹿共が創り出した生命を弄んだ禁忌 対魔獣戦闘クローンNo.007 こと綾華ちゃんの遺伝子解析が条件だ」


「...綾華 嫌なら嫌でいいぞ」


「...良いよ カバネの為だから」


「...本当に良いのか?」


「..うん」


「...ありがとう」


「どうやら無事 話は進みそうだね 良かった良かった」


「綾華に危害を加えてみろ お前を魂レベルで消し去るからな」


「それは安心してくれ 私の目的は人類存続 無闇な殺傷はしないし 綾華ちゃんの境遇は知っている そこまでの外道に堕ちるのは私のプライドが許さない 」


真面目な顔でそう言う所長


「...お前はろくでもない奴ではあるが...信じるぞ」


「...ああ、その点は信じて貰って構わない それじゃあ今すぐ行うよ 大丈夫 ちょっとした機械に入るだけ痛くないさ」


「...うん」





「...本題に入る前に先に話しておくことがある」


綾華の遺伝子解析が終わったはずなのに戻ってきたのは所長1人のみ


「...彼女はこのままだと死ぬ」


「...は?」




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前回ので重いの終わりだと思った?残念だったね まだ続くんだなぁこれが(血涙)

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