2回戦と人形

筆が進んだので2話投稿

ーーーーーーーーーーー


「そろそろ時間だな」


「ん、頑張って」


「おうよ...待て 後ろに隠してる物はなんだ?」


「...何も隠してない」


「...おやつ抜き」


「ごめんなさい ポテチ隠してました」


「...はぁ 確かに待ってる間は暇だろうし...しゃーねぇな そのポテチを食うことは許す」


「わーい!」


「だがベタベタになった手でゲーム機は触るな いいな?」


「もち」


「ならよし んじゃ行ってくるぜ」


「行ってらっしゃい 」






2回戦の相手は...知り合いでは無い探索者だった


和服を着ていて腰に刀を2本差し 綺麗な黒髪を後ろに結んだ男性


「貴殿は...かの有名な黒騎士様と見受けられる」


「見た目はそうだな 様付けされる程偉くないから止めてくれ」


「そうか...何せ私の友人がそなたに救ってもらったものでな いつかお礼を言いたかったのだ」


「そうか..ま、人として当たり前の事をしただけだ 気にすんな」


「それでも命の危険の可能性があるのに助けに行けるのは見事としか言えぬ」


「そうか?ま、その感謝受け取っとくぜ...んじゃ 始めようか」


「そうだな では改めて...私の名は久我道真!!剣水流免許皆伝者またの名を金剛級探索者【流剣】である!!」


そういう名乗り...良いな 俺もやろっと


「俺の名は黒騎士!!金級探索者だ!!」


金剛じゃねぇから通り名無いのが悲しすぎる


「「いざ尋常に!!!」」


『探索者武闘祭!!2回戦開幕です!!!』


「シッ!!」


敵は早速刀を2本抜き 斬撃を飛ばしてくる


俺はそれらを避けつつ近づき 連続で剣撃を与える


「流石黒騎士 やりおる!!!」


敵はそれを避けながらこちらに攻撃をしてくる


上 右 左斜め下 突き 蹴り


と色んな攻撃をお互い織り交ぜながら恐ろしい程 早い接近戦を繰り広げる


「身体能力では上かもしれぬが...手札はこちらの方が多い!!覚悟を!!【剣水流 壱の型 潮煙】!!!」


敵の斬撃がまるで水飛沫のように一瞬で飛んでくる


それを紙一重で避けるが


「まだまだ!!【剣水流 弐の型 渦潮】!!!」


敵から放たれた渦潮のようにこちらを逃がさず荒れ狂う流水のような連撃が俺に襲いかかる


「く...」


「剣水流とは即ち自然の力である水の力を借り受けたもの!!黒騎士!!お主に自然は破れるか!!!【剣水流 参の型 静水】」


荒れ狂う連撃の中 針の穴を通すかのように鋭く静かな一閃が飛んでくる


それをステップを踏んで避けながら激しい連撃に対応していく


「あまり早くに使いたくはなかったが使うか...」


後ろに飛んで間合いを空け長剣に魔力を込める


すると長剣はガチャガチャと機械的な音を立ててその姿を変える


黒騎士シリーズ:機械剣 内部にからくりのようなシステムが組み込まれており魔力を込めることで複数の形態に移行する また形態変化は魔力量に比例してその変化具合が変わる


「む...その剣...ただの剣では無さそうだな...?」


「人前に見せるのは久しぶりだな...行くぞ」


「なぬ!?」


長剣から変化した双剣を使い目にも止まらぬ速さの連撃を加える


「なんという速さ...!!!金級でありながら金剛級並の強さを誇るその実力!!!流石黒騎士!!!!」


刀と剣がぶつかり合い 時にはお互いの蹴りが交差し 斬撃がぶつかり合う


その度にどんどんお互いの体力は摩耗していく


「はぁ...はぁ...ここまでやって...お互い無傷とはな...」


「...ここまでやるのは...久しぶりだな」


「このままじゃ埒が明かぬ...お互いの全力をぶつけるのはどうだ?」


「面白い 乗った」


俺としてもずっと拮抗した状態が続くのは面倒だからな


俺はまた双剣に魔力を込め今度は大剣へと形態変化させる


「では行くぞ!!!我が最強の一撃をくらうがいい!!【剣水流 拾参の型 生々流転】!!!」


荒れ狂う流水のような剣術が龍の姿へと昇格し 俺に襲いかかる


「【付与エンチャント 黒炎】...はぁぁぁぁぁ!!!!!」


水龍と黒き炎を纏った大剣がぶつかり合う


「ぬぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」






そうして立っていたのは...


「...見事」


黒騎士 である 俺だった


「...お前さんの技 とても...素晴らしかった また戦える時が来たら 戦おうぜ」


「勿論だ..お主のような強者とは是非また戦いたい」


「俺もだよ それと...武闘祭を終えたら俺が経営してるカフェに来ないか?慰労会をやるつもりなんだ」


「ほう、それは是非とも参加させて頂きたいが...和食はあるのか?」


「勿論だ 寿司も出せるぞ」


「なんと!?それは嬉しい知らせだ!!では武闘祭が終わり次第 直ぐに向かおう!!」


「おう ここにあるから是非来てくれ」


「承知!!では次の試合 応援しているぞ!!」


「おうよ!また後でな!!」






「カバネ お疲れ様 接戦だったね」


「ああ、道真は強かったぜ」


「...そういえばカバネ 今日はなんでネックレスとブレスレット付けてるの?」


黒騎士シリーズを脱いでゆっくりしてる俺に綾華がそう尋ねる


「ん?こいつは...まぁ気分で付けたアクセサリーだ」


「ふーん...似合ってる」


「そうか?ありがとよ...褒めても何も出ねぇぞ」


「てへ、バレた」


無表情でそれやっても可愛いだけなんだよなぁ...


「そういえばここから一般の席見てたけど大騒ぎだったよ」


「なんかあったのか?」


「わかんない」


...あ、待てよ...


「道真は金剛級...俺は金級....そりゃ騒ぎになるよなぁ...」


彼奴に迷惑かかってねぇかなこれ...もしそうだったらなんか無料て作ってやろ...




*******

橙&総会長&名も無き協会長side


「総会長!!これはとんでもないことでは!?」


「ほっほっほっ...名持ちの金剛級に金級が勝ってしまったことかね?」


「当たり前ですよ!!!前代未聞では!?」


「そうじゃのう...金剛レベルの強さを持つ金級以下の探索者は今まで直ぐに金剛級にしてたからのう...というか金剛級に該当する強さを持つ探索者が少ないのもあるがの」


「黒騎士...かなりの強さを誇り金剛級も考えられていた強者なのは知ってましたがまさか金剛級の中でも上位の強さを持つ【流剣】を倒してしまうとは...」


「ほっほっほっ 黒騎士はもう金剛級確定じゃのう」


「笑ってる場合ですか!?この件で起きた騒ぎを収めるのは私たちなんですよ!?」


「頑張れとしか言えぬな 儂はここで素晴らしい卵を見つけられる可能性があるからの ここに居ないといけん」


「くっ...とりあえず報告は以上です!!私は持ち場に戻りますからね!!」


「ほっほっほっ...頼りにしているぞ」


「そう言って面倒な仕事を押し付けるのは無しですからね!!」


「バレてしまったわい ま、関係ないのう」


それに対し文句を言いながら名も無き協会長は部屋を去っていった


「...彼女も苦労してますね」


「ほっほっほっ 彼女は有用な人材じゃからの」


「あまり酷使しすぎて訴えられないでくださいね?」


「まさか、ちゃんとギリギリを見極めておるわい」


「そっちの方が悪質では」


「法に触れてないしセーフだからのう」


「彼女には同情しますね...」




***********

黒side


そこでの勝負は一瞬だった


気づいたら死んでいた


目の前にいるはずの敵を認識出来ず


簡単に殺された


「...」


無表情で無感情 そして無言でどこかを見つめるようにじっとしている 色付き 黒 に対し その相手は腰を抜かしていた


金剛級である自分を認識出来ない速さで仕留めたこの存在に恐怖していた


「....」


一方黒は...


「...貴方は...かつて機械だった私に色んなことを教えたな」


『お前さん子供なのにゲーム知らねぇのか!?んじゃ俺とやろうぜ!!勿論金は俺が持つ!』


楽しい娯楽を教えてくれて


『んなインスタントやコンビニ弁当ばかりじゃ身体に悪いぞ!!!俺が飯作ってやるよ!!』


美味しいご飯を教えてくれて


『辛い時は親しい人に慰めてもらえ 嬉しい時は全力で喜べ 成し遂げたいことがありゃ全力で励め 悲しい時はとにかく泣け イライラした時は魔獣でもぶっ飛ばせ!!!お前さんはそうするのが苦手みたいだからな!俺が言ったことを少し参考にしてみてくれ 見える世界が変わるぜ!』


私に感情を教えてくれた


だが...


「...貴方が居ないと全て無意味なんだ」


ゲームは貴方と遊びたいからゲームをしていたのに貴方が居なくなった...いや私がころしてしまったから...止めた


ご飯は 貴方の作ったものを食べたいからまたインスタントに戻った そして前より食べる量が減った


あなたが教えてくれた感情は...貴方がいないと意味が無いの だから感情は薄れていった


私という機械のような存在は...


「貴方が居なければ"人"にはなれない 永遠に人形のまま 」


あの日から私はずっと人形のまま


彼の遺言で 私は人になれず人形として生きている



人形の私の生に価値はあるのだろうか


機械的に生きる私と人として生きていた貴方


私では無く貴方が生きるべきだった


貴方が居ないと人形のままの私と 私を人にしてくれたあなた


私が死ぬべきだった



「....」


かつてある人によって人形から人になり生きることが出来ていたものはまた人形へと成り下がる


人としての自分の存在理由は全て彼にあったから


彼のいない世界に人の私は要らない


そう思い 今日も人形としては生きている




ーーーーーーーーーーーー

適当なモブ登場させようかと思ったら思ったより濃いキャラが出来ました なんで?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る