話し合い

ーーーーーーーーーーー


今 この場には4人の人物が居る


1人はやけにラフな格好をした三十路のおっさん


1人は藍色のローブに身を包み静かに佇む女性


1人は銀の鎧に身を包み礼儀正しく場が動くのを待つ男性


そしてもう1人...


ボリ...ボリ...


「...」


「...」


「さて...お二人さんにこうして会ってもらったのは他でもない 例の件についてだ」


ボリボリ...


「あの件が起こった原因である1人の少年 彼の行動は理解し難い事だったが...その理由も判明した 勿論 伝でな?」


ボリボリ...ボリボリ...


「...(話が入ってこないわ...)」


「...(何故この場で平然とお菓子を...?)」


最後の一人は先程から三十路のおっさんことカバネの膝の上に乗りじゃが○こを食べている銀髪の少女 綾華である


「ん?あ、こいつの事なら気にしないでくれ ただ着いてきただけだ」


「いや気にするわよ」


「気にするでしょう...」


「...ん」


「もう食べたのか?しゃーねぇな...今度はこれでも食べてろ 流石にそれでおしまいだ」


「む...」


「我慢しろ じゃないと夜食抜きだぞ」


「....ん」


「...(ポテトチップス...)」


「...(コンソメとは中々センスが良い...)」


「さて話を戻すが...例の少年が暴走した原因はあるスキルにある 今2人のスマホにデータとして送ったから見てみてくれ」


「わかったわ」


「はい」








「美徳スキル...そんな恐ろしいものがあるのね」


「ああ、強制付与される思考誘導と行動誘導 熟練の探索者でも付与されたら意志を無理矢理ねじ曲げられそれを本来の意志だと認識するようになる」


「それでこれらを付与してくるというのが...」


「美徳天使...伝の方はクソ鳥とか言っていたな 殆どが人格破綻者みたいなものらしい その中でも【正義】はヤバイ」


「あの時の例の少年のような状態が常 という事ですか?」


「ああ、それに天使達の戦闘力も凄まじい 一体 一体がお前らとタイマンを張れるレベルだとさ」


「...倒せないの?」


「倒せはする...だが一定期間経つと復活するらしい」


「厄介ですね...」


「てかそんな強さを持つ天使を倒した貴方の伝って何者?是非とも勧誘したいのだけど」


「残念ながら俺の口からは何も言えないな 自分で探してみるといい」


「はぁ...貴方がそう言う時は大概何かありますからね...探したいところですが私はやめておきます」


「そうか んじゃ話を戻すが今の彼についてだ 暴走してたその少年は伝が美徳スキルを天使を殺して引き剥がし正常になってる 本人と話したがこれから自分のやってしまったことの贖罪をするってさ」


「...そうですか 彼の事は未だに気になっていたのでそう聞けて良かったです」


「さて...説明もし終えたし改めて本題だ 和解をしてくれないか?」


「...」


「私はmagic galleryさんが良ければ問題ありませんが...」


「分かったわ 和解しましょ」


「お、良いね 丸く収まった んじゃ俺を立証人としてお互いが和解した事を証明する書類を書いてもらう これだ」


「はい」


「どうぞ」


クランリーダーの印鑑と名前が記入された和解書を受け取り 確認


「問題ないな よし、俺は今から役所に出してくるから2人は先に店の方に行っててくれ」


「....1つ問いたい」


「ん?なんだ?」


「7大クランの...それもリーダー同士が立ち会う和解の立証人は同じ7大クランのリーダーもしくは代理、それか色付きの探索者でなければ出来ない...前々から思っていたのですが貴方は何者なんですか?」


まぁそこは色々あるしなぁ...


「んー...ただのカフェをやってるおっさんだよ」


「...分かりました 詮索はしません」


「助かるよ んじゃ行ってくる」


「ん」


「はいはい、抱っこね」


「...(お父さん...?)


「...(親子....)」




********


カバネと綾華が去った後


2人はお互いに思ったことを言う


「...勝てないわね」


「ええ、2人がかかりでも負けるでしょう」


「...詮索はしないと言いましたが彼の正体は何となく分かりますよね...」


...」


それは探索者の中でも最強に該当する者が任命される


かつては紅 蒼 翠の3人から始まり 現在ではそこに紫 橙 空 黒 白 灰が加わって九色


このうち現在不在なのは活動休止中も含めて三色


紅 灰 空の3色


特に紅はもう10


まぁ 当たり前ではある


15年前の第1次魔獣氾濫スタンピードをほぼ単独で退けた功績の他


数々の今も名を残している強力な探索者を含む人命救助


当時立場の弱かった探索者協会の地位向上及び他の有力貴族や教会 国とのパイプを繋げ


更には後任の探索者達を育成 その中から色付きにまでなる者も居た


そんな功績を持つ前任者が居る以上 現在空席の紅を任命するのは相当なことだ


「....紅 空 灰の三色が居ない今 その中の1つの可能性はあります」


「だけど色付きの中でも珍しく空は自分の情報を開示してる 紅は10年前の聖魔大戦で死亡したはず...なら灰?」


「消去法であればそうなりますね ですが...一応可能性としてどこかの7大クランの代理リーダーの可能性があります」


「あんな強者が代理リーダーをやってる場所...?それこそ7大クランの纏め役兼探索者協会の理事会じゃない...」


「あそこには色付きの1人 橙が所属してますからね 他に居ても不思議ではありません」


「...問い合わたいとこだけど こうして和解の場やあの事件の原因と対処をしてくれたし しないでおくわ」


「そうですね 恩を仇で返す訳には行きませんから...」





******


「カバネ」


「ん?なんだ?」


「今日のお昼は?」


「お前の大好きな唐揚げとポテトだ」


「ん!!」


「野菜も食えよ」


「ん....」


そうしたやり取りをしながらカバネは考える


「(あの2人にも俺が色付きに該当する強者なのを見破られたか...今まで無かったから油断したな まぁ あの二人は仁義を通すタイプだし大丈夫だろう)」


綾華がカバネの髪をいじって遊んでいるがいつも通りなので気にせず考え続ける


「(それにしても...先日の主人公のピンチだったり予定より早い美徳スキルによるの真道の暴走...やっぱり原作が崩壊しつつあるな...俺がこの世界に転生してから動くと決めた以上 覚悟していたことだったが...)」


この世界はゲームでは無い 現実だ


俺はあの原作を愛している その原作を崩壊させるなんて畜生だと思われるかもしれないが


それとこれとは別だ


「俺の手の届く範囲で....か」


「?」


「ああ、気にしないでくれ」


綾華の頭をわしゃわしゃと撫でつつ考え続ける


「ん...撫で方雑」


「(あの原作の鬱要素の排除を徹底した 出来るだけ俺という身分を隠して物語の裏にいつでも帰れるように)」


「(だがそれも限界に近いみたいだ そろそろまた表舞台に出てこれから起こる事件に挑む主人公達のサポートもしねぇといけねぇ)」


「(この世界は現実だ ゲームみたいに残機があったりやり直せる訳じゃない この先 主人公達は死ぬ可能性の高い多くの事件に飛び込んでいく...知り合っといて死ぬ可能性があるのに見過ごせる訳がねぇ)」


「(...また動き始めるか)」


「カバネ 大丈夫?」


「ん?どうした?」


「凄い切り詰めた顔してたから」


「...決心しただけさ」


「何を?」


「探索者として この世界の結末の一端を知る者として 表舞台に戻り 俺は動き始める」


「カバネには前々から不思議な知識ばっかり持ってた 結末..を知ってたから?」


「ああ、そうだ そこについては深く聞かないで欲しい」


「ん、分かった」


「...このまま役所に行って店であの二人に飯を作ったら出かけてくる」


「...一緒に行っちゃだめ?」


「悪いが今回はだめだ」


「わかった」


「素直で助かるよ んじゃこれさっさと出しに行くか」



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