シオンが走り出す。一歩でアインの懐まで接近する。太陽のように光り輝く二本の剣を振りぬく。盾を持っていないアインは後ろに大きく飛び退いて回避した。盾はいつまでたっても修復される気配がない。


「再生の盾のスキルごと焼き尽くしましたか」


アインがつぶやく。直後、アインは吹き飛んだ。飛ばされている間アインは自身に何が起こったのか理解することができなかった。地面に激突し、ゴロゴロと転がり終わったころ、何が起きたか理解できた。シオンに蹴り飛ばされた。ただ単純に、回し蹴りの要領で蹴り飛ばされた。右わき腹に激痛が走る。回復を盾に依存していたアインはもう回復する手段を持っていない。少しは動けるとはいえ、詰みの盤面だった。


「ここまで、ですか」


口ではそう言いながらも、アインは何か手がないか考えていた。今までの経験にないほど考え、そして、一つの結論にたどり着いた。

ただ、それを実行するためには少しばかり時間がかかる。

どうにかして時間を稼がないといけない。次は時間を稼ぐ方法を探すのに頭を使った。

そして、一つの結論にたどり着いた。これ、ワンチャンあんじゃね?という案が頭をよぎった。




もしかして。


「……それにしても、ツカサ様は偉大な方でs「そうなんです‼」uよね」


もしかして、ツカサをヨイショシしまくったら、気分を良くして時間が稼げるのでは?




「司様は本当に偉大なお方です!まずあのお姿が」以下略


よし!このまま脳死でヨイショしまくろう!

その後、驚くほどスムーズに司をほめまくったアインは、設定の変更を終え、最後の勝負に出る。


「……この辺で良いですかね。お遊びはここまでです。神速!」


刹那、可視不能の斬撃が駆け巡る。その斬撃は以前のものと違い、様々な方向にまんべんなく降り注ぐ。斬撃が地面をえぐり、砂埃が舞う。砂埃が収まる前に、斬撃が走る。アインはとっさに剣で受ける。その表情は驚きで染まっていた。砂埃をかき分け、シオンが現れる。気配を感じなかった。とっさに反応できたものの、本当に危なかった。アインと、シオンは内心冷や汗をかいていた。お互い不意打ちの攻撃だったものの、大した被害はなかった。


「あなた、神速の軌道を変更しましたね。司様をほめているときに」

「そういうあなたこそ、まだそんな技を隠していたんですね」


つばぜり合いをしながらお互いニヤリと微笑む。


「神速」


再び斬撃の嵐が発生する。零距離で発生した嵐にシオンは対応することができず、斬撃をその身に受ける。ギリギリで急所にあたらないように避けたものの、傷は深かった。


「終わりです」


アインがつぶやく、その言葉は果たして誰に向けた言葉だったのか。直後、アインがふらつく。


「……神速は、防御不能の斬撃を発生させる代わりに、使用者に莫大な負担がかかる。使徒とはいえ、その斬撃を二回も打てば体はボロボロですね」


アインはハッとした表情で回りも見渡す。シオンがいない方向から、シオンの声が聞こえたからだ。背後を振り向くと、無傷のシオンがたっていた。


「囮を発生させる、雫魔法ダミー・ドロップ。気配を消す、月光魔法明鏡止水。この二つを組み合わせることで、まるで囮が本体であるかのように錯覚させ、戦闘させる。そのすきに、太陽魔法でとどめを刺す。それが私の技。気配無き太陽サン・オブ・ジャッジメントです」


シオンはゆるりと剣を突き刺す。ボロボロの体のアインは動くことができす、剣はスムーズに突き刺さる。アインの口の端から血が垂れる。同時に手から剣が落ちる。


「あなたはもう、神速を使えない。回数制限です」


アインはひとつずつ詰んでいく。体はボロボロ。再生の盾はない。神速は使えない。アインに、ここから逆転するすべはなかった。

シオンが左手の剣を振り上げる。その剣は、青白く光っていた。


「終わりです」


シオンは剣を振り下ろした――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る