アインとシオンが向かい合っている。二人は真っ白な空間に立っている。アインは剣といつの間にか修復されていた盾を。シオンは二本の剣をそれぞれ構えている。

二人は同時に走り始める。シオンが二本の剣を振り上げる。アインは一本を盾で、もう一本を剣で受け止める。火花を散らしながら剣と盾が交差する。


「神s「雷魔法雷空間エレキ・フィールド」なに!?」


アインが神速を使おうとした瞬間、シオンが雷魔法を使いアインを感電させる。少しだけしか感電しなかったが、神速の発動を遅らせ、そのすきに神速の範囲から逃れることができた。神速が空を切るが空を切る。初めて、神速がかわされた瞬間だった。アインは。一瞬何が起こったのか理解できなかった。必中のはずの神速がなぜかわされたのか。かわすことができたのか。まずまず、私たちには、感電など異常状態に対する耐性があるのではなかったのか。と。


「なぜ。ありえない。私の神速が避けられた?私が感電した?なぜ?」

「思考が駄々洩れですよ。それがあなたの本心ですか?」

「っ!だまれ!」


近づいてきたシオンに対して横なぎに剣を振るう。怒りに任せて振るった剣がシオンにあたるはずもなく。バックステップで簡単によけられてしまった。


「くっ!まぁいいでしょう。まぐれです。殲滅を続けます」


アインは思考を落ち着かせると、再び走り出す。ある程度まで近づいたら再び剣を振るう。その剣筋に先ほどのような粗末さがなかった。シオンは攻撃を剣で受け止め、受け流す。


「切り替えだけはさすが。といったところですかね」


今度はシオンが切りかかる。


「風魔法乱気流タービュランス!」


シオンが魔法を使い、その名の通り、乱気流を発生させる。不規則で強力な風がアインを襲う。様々な方向から襲い掛かる風に対応しようとするアインだが、そのせいでシオンの攻撃の対処が遅れてしまった。避けようとしたが、乱気流のせいでうまく避けることができずに浅くない傷を負った。アインは一瞬だけ傷口を見るが、気にする様子もなくすぎに切りかかる。どうやら単純な剣術だとアインのほうが軍配が上がるようでシオンは押され気味になっていた。シオンは後方にジャンプして後ろにさがって距離をとる。


「さすがに分が悪いですねぇ。切り札切らないと負けそうです。神化、獣化重複発動!神獣化!」


シオンから純白の魔力がにじみ出す。まるで自らが神のような存在になったかのように。同時に少しだけ猫背になったり、瞳孔が縦長になったりと、獣らしさもある。シオンが走り出す。アインは盾を構えたが、シオンはアインが盾を構えた方向とは別の方向に姿を現す。


「太陽魔法太陽ソウル・サン!」


シオンの剣の片方が輝き、熱を持つ。アインは流石にまずいと感じたのかよけようとする。だが、シオンの剣のほうが早かった。アインな光輝く剣に切られ、焼かれた。陰しい痛みが襲っているはずだが、アインは痛がるそぶりを見せない。


「治癒の盾」


ぽつりとつぶやくと、傷が治ってゆく。まるで逆再生化のように。すぐにアインは無傷の状態に戻った。

アインが走り出す。先ほどとは比べ物にならないほどのスピードだ。シオンは今までとのギャップで一瞬だけ反応が遅れた。シオンがアインの剣の間合いに入る。刹那。


「神速」


回避不能の一撃がシオンを襲う。

流石獣人といったところだろうか。シオンは寸前のところでわずかに後ろに下がっていた。そのおかげで攻撃を受けはしたものの、一撃で死んでしまうことは避けられた。だがそれにしてもただでは済まない傷を負った。一般人なら痛みで気絶するレベルの傷の深さだ。


「くっ!さすがに痛いですね。もう一回借りますよ。完全回復パーフェクト・ハイル


シオンは再び玉を手に取る。玉が光輝き、回復の魔法が発動する。

傷口がふさがったシオンだが、多少の焦りを感じていた。このままだと、アインを倒すことができないと思ったからだ。


「どんなに攻撃しても、一瞬で回復される。使用制限こそあるものの、日を跨げば問題なし。ですか。ほんとにめんどくさいですね」


そして硬直状態が生まれる。シオンがアインに勝てないと感じているのと同じように、アインもこのままだとシオンを倒しきれないと感じていたからだ。


[シオン!今どんな状態だ!]

[ふぇ!?司様!?どうされたんですか?]


唐突に司から念話が届く。シオンはびくっとした後司の念話に応じる。

アインは急にびくっとしたシオンを不思議そうに見つめている。

え?この人は戦闘中に何やってるの?

と心の中で思っているのだろう。

のちのアインは「何をすればよいのかわからなかった」と話していたとかいないとか。

そうこうしているうちにシオンと司の念話は終わった。


「ちょっと時間がないみたいなので、本気で行きます!」

「…なんか、すごく適当な理由で本気を出そうとしている気がする」


アインは雰囲気よ読むのが上手なようだ。そう。二人の念話の内容はご存じの通り、大会まで時間ないや☆である。本当に自業自得な理由で特に理由もなくすぐに倒されようとしてる。アイン、哀れ!


帝王の道エンペラー・ロード、獣化、剣帝!獣剣の帝王エンペラー・オブ・ビーストセイバー!」


シオンの周りに緑と白色の靄がかかる。それと同時にシオンの爪が鋭くなり、猫背に、犬歯も鋭くなった。

なぜかよくわからないが使える帝王の道、獣人特有の獣化、剣を極めたことによる剣帝。三つの強化系スキルを多重使用することで爆発的な強化を得る。それが獣剣の帝王だ。


「行きますよぉ!」


シオンが踏み込む。刹那、シオンがその場から消え、アインの目の前に現れる。アインは盾を構えることができず、かろうじて後ろに下がる、いや、後ろに飛んだというほうが正しいだろう。忘れているかもしれないが、アインは天使のような羽をもっている。その羽を活用し、後ろに飛び退いた。アインの傷は深かったがそれでも一撃必殺とはいかなかった。


「治癒の盾」

「いつまで偽るつもりですか?その盾の名前は、再生の盾。ですよね?」


回復。いや、再生が終了したアインが目を見開く、こいつらはどこまで理解しているのか、と。


「その盾の効果は、使用者を再生させる。単純な回復よりも元の状態に戻すという点では上位互換ですね」

「貴様っ!なぜそのことを!」


シオンはふふっと微笑むと再び踏み出す。アインは前方で盾を構える。

直後衝撃が伝わり後ろに吹き飛ばされる。そのままゴロゴロと転がり、その勢いで立ち上がる。ふと左手を見ると、ひしゃげた盾があった。そのまま灰のようにサラサラと盾が崩れていく。


「なぜ!?」


アインの口から声が漏れる。まるでこの盾は絶対に壊れないはずなのに、といった様子で。はいそこ!一回壊れてない?とか言わない!その時も内心ビビッてたのぉ!

シオンがぽつりとつぶやく。


「どんな武装も焼き尽くす。それが太陽魔法の真価です」

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